ジャズ喫茶で流したい・69
何も、テナー・サックスの使い手はコルトレーン派だけでは無い。日本のジャズ評論の世界では、どうも、ジョン・コルトレーン偏重の雰囲気が色濃くあって、テナーについては、まずはコルトレーンが絶対、コルトレーンのフォロワーについては、必ずコルトレーンと比較して揶揄する傾向が強い。それでも、スタイルはコルトレーンのスタイルが絶対なのだ。
コルトレーン以前の「オールド・スタイル」のテナーなどは歯牙にもかけない。かけても、まあジャズの歴史の勉強の為に一度は聴いておいたら、という軽い感じので紹介が多い。コールマン・ホーキンスやレスター・ヤングなどの「オールド・スタイル」なテナーは、日本の評論の世界では採り上げられることはあまり多く無い。
でも、1980年代以降、純ジャズ復古の大号令以来、コルトレーンのフォロワーも多く出たが、実はオールド・スタイルのテナーもちょくちょく出ている。日本ではあまり紹介されないだけで、今の若手から中堅にかけてのテナーマンの中で、オールド・スタイルを主に取り組むテナーマンも必ずいる。
そんなオールド・スタイルなテナーであるが、確かに、ビブラートを強くかけたり、唇の端から息が漏れて「ボボボボ、ズビビビ」と唾液の擦り切れる音はちょっと「ご勘弁」という感じがする。特に、ヘッドフォンで聴いていたら、耳元で「ボボボボ、ズビビビ」とやられたら、かなりしんどい。この辺が、オールド・スタイルを許容できるかどうかの境目だろう。
そんな中、僕はこのオールド・スタイルなテナーマンの中で、この人のテナーがお気に入り。Eddie "Lockjaw" Davis。1922年生まれ、1986年、64歳でこの世を去っている。彼は、ルイ・アームストロングやカウント・ベイシーの楽団で演奏、50年代から60年代初めまで大いに活躍したニューヨーク出身のテナーサックス奏者です。
さて、そんな「エディ “ロックジョウ” デイヴィス」、僕のお気に入りのアルバムはまずはこれかな。Eddie "Lockjaw" Davis『The Heavy Hitter』(写真左)。1979年1月の録音。ロックジョウ57歳の時の録音になります。ちなみにパーソネルは、Albert Dailey (p), Eddie "Lockjaw" Davis (ts), George Duvivier (b), Victor Lewis (ds)。
1986年に鬼籍に入っているので、ほぼ最後期の録音になる。が、57歳なので、ジャズメンからすると中堅。酸いも甘いも噛み分けて、人生の経験も色々身につけ、ミュージシャンとしては一番脂の乗った充実した年頃。演奏の内容として、悪かろうはずがありません。
ボボボボ、ブリブリとキッチリと締まった、ブラスの響きが豊かな低音域。唄うようにメロディアスで豊かな中音域。感情をグッと抑えてむせび泣くような高音域。抑制の効いたビブラート。オールド・スタイルなテナーとしては聴き易い部類。肉声に近いブロウは聴き応え満点です。
演奏のスタイルは「ハードバップ」。朗々と豪放磊落にテナーを吹き上げて行く“ロックジョウ” 。味のあるビブラートと低音域中心のブロウが「素敵なオールド・スタイル」。こういうテナーも良いなあ、と心から感心してしまいます。
あまり、日本のジャズシーンでは名前を聞かない「エディ “ロックジョウ” デイヴィス」ですが、実は「ロックジョウのリーダー作に駄作無し」と感じていて、特に彼の後期のリーダー作は充実したアルバムがズラリ。
「Heavy Hitter」とは、野球の強打者のこと。その強打者をイメージしたイラストのジャケットも雰囲気があって良し。ジャケットの雰囲気が良い、こういうアルバムって駄作無し、ですよね。
震災から4年8ヶ月。決して忘れない。まだ4年8ヶ月。常に関与し続ける。がんばろう東北、がんばろう関東。自分の出来ることから復興に協力し続ける。
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