音楽喫茶『松和』の昼下がり・26
エディ・ヘンダーソン(Eddie Henderson)。僕はすっかりこの人の名前を忘れていた。1960年代からハード・バップ〜クロス・オーバー、ファンクな演奏を展開したエディ・ヘンダーソン。そう言えば、僕がジャズを聴き始めた頃、結構、メジャーな存在だった。
エディ・ヘンダーソンのトランペットは「軽快」。そして、ライトで滑らかな旋律が個性。音色的にはマイルスに似ている、というか、マイルスの忠実なフォロワー。逆に、凄いテクニック、エモーショナルなハイトーンなどという派手さが無いというところが弱点と言えば弱点。強烈な印象が残らないところが玉に瑕と言えば玉に瑕。
ということで、僕はすっかり彼の名前を忘れていた。しかし、最近、ジャズ雑誌で彼の名前を目にして、元気してんのかな〜、と思い立ち、このアルバムを聴いてみた。Eddie Henderson『Collective Portrait』(写真左)。今年出たヘンダーソンの新譜である。
ちなみにパーソネルは、Eddie Henderson (tp), Gary Bartz (as), George Cables (p,Fender Rhodes), Doug Weiss (b), Carl Allen (ds)。70年代から交友のあるアルトのゲイリー・バーツとピアノのジョージ・ケイブルスが要所を固める。ベースのダグ・ワイス、ドラムのカール・アレンという堅実で渋いリズム・セクションを担う中堅ジャズメン。なかなかの布陣である。
このメンバーで奏でるジャズは、1960年代後半のエレ・マイルスの初期のサウンド。そして、1970年代のエレクトリックなモーダルなジャズ。特に、マイルスと交流のあったヘンダーソンのトランペットはマイルスに似ている。というか、マイルスのトランペットを判り易く滑らかにした様な音。スペースを活かした独特なフレーズは、明らかにマイルスゆずりである。
ミッドテンポで、アコースティックからエレクトリックへ移行する過程のマイルス・バンドの音。そのマイルス・バンドの音世界をケイブルスのフェンダー・ローズの音が増幅する。そして、現代の機材、楽器で振り返り再構築した様な音作り。
このアルバムのヘンダーソンは良い。優れたバックにも恵まれ、気持ち良く、悠然とトランペットを吹き鳴らす。悠然と余裕を持ったヘンダーソンは強い。ヘンダーソン独特のスペースと間合いを上手く活用した、マイルスの様でありながら、マイルスよりも軽快で滑らかなトランペットは「至芸」の世界である。
このアルバムは米国でリリースされたと同時に高い評価を得ている、と聞く。確かに良い。近年のヘンダーソンの好盤ではないか。緩やかに漂う様な、ほわっと広がる様なトランペットの響き。流麗なフレーズ。このヘンダーソンの音世界は、秋から冬の朝、そして、長閑な昼下がりにピッタリである。
震災から4年7ヶ月。決して忘れない。まだ4年7ヶ月。常に関与し続ける。がんばろう東北、がんばろう関東。自分の出来ることから復興に協力し続ける。
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