大陸をイメージしたジャズ協奏曲
こういうアルバムを突然、サラリとリリースしてしまうのだから、チック・コリアという「音の表現者」は困る。「困る」というのは冗談だが、今年74歳のチックである。どこまで湧き出てくるのか、枯渇することの無いチックの才能である。
そのアルバムとは、ちょっと長いタイトルになるが、Chick Corea『The Continents: Concerto for Jazz Quintet & Chamber Orchestra』(写真左)。2012年2月のリリースになる。クラシックの老舗レーベルDeutsche Grammophonからのリリース。
クラシックの老舗レーベルからのリリースなので、さぞかしクラシックしているんだろう、と思いきや、そうでは無く、しっかりとジャズのテイストをしっかり押さえているところがチックの「音の表現者」として素晴らしいところ。
Disc1の大作、ジャズ・クィンテットと室内オーケストラのための協奏曲がなんといっても素晴らしい。しっかりとオーケストラの響きを織り込みながら、チックの個性的な流麗でジャジーなピアノが全編に渡ってリードし、チックらしいロマンティックでリズムカルな協奏曲に仕上がっている。
70分を少し越える大作なので、これはきっと飽きるな、と思って聴き始めるんだがこれが意外と飽きない。一応、6つの大陸のパートに分かれているが、明確にそれぞれの大陸の特色を音にしている訳では無い。しかし、全体を通して、音の起伏に富んだ流麗な響きを持った旋律はいかにも「チックらしい」ロマンティックでリズムカルな印象。
ジャズ・クインテットの演奏がしっかりしているので、共演する室内オーケストラに食われることはないどころか、室内オーケストラの響きを効果的に活かして、ジャズ・クインテットの優秀な演奏がクッキリと浮かび上がってくるようだ。
ジャズ・ミュージシャンの余芸だろうと軽く見てはいけない。この協奏曲の優れた内容に思わず目を見張る。明らかにチックの才能にしか出来ない成果であり、この成果にはしっかりと耳を傾けるべきだろう。
逆に、Disc2はご愛嬌。ジャズ・クィンテットのパフォーマンスが4曲とチックの短めのソロが11曲。このジャズ・クインテットのパフォーマンス4曲はその出来は白眉。非常に内容のある密度の濃い演奏。後半のチックのソロは、チックが曲想を練る場面を捉えた「音のスケッチ風」。他愛も無いソロ・パフォーマンスが長閑に続く。明らかに冗長に感じる。
チック・コリアが世界の大陸をイメージし「モーツァルトのスピリットの下に創った」という協奏曲。僕達はこの素晴らしい成果を素直に受け止めるべきだろう。
先にも書いたが、まったく、こういうアルバムを突然、サラリとリリースしてくるからチックは困る。僕達、チック者はその度にドッキリし、その度に驚喜する。これがまた楽しい。
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