新主流派ショーターの最高作
ウエイン・ショーターのリーダー作の聴き直しをしている。彼は実に変わっている。このアルバムは、当時彼が傾倒していた黒魔術や西洋の民話などからインスパイアされたもの。これジャズのアルバムなんですが(笑)。
Wayne Shoter『Speak No Evil』(写真左)。1964年12月の録音。ブルーノートの4194番。ちなみにパーソネルは、Wayne Shorter (ts), Freddie Hubbard (tp), Herbie Hancock (p), Ron Carter (b), Elvin Jones (ds)。当時、新主流派ジャズの先鋭メンバーの選りすぐりである。
タイトルの「Speak No Evil」とは、「見猿、言わ猿、聞か猿」の諺の「言わ猿」のこと。他「魔女狩り」「死体の踊り」「野生の花」等々、実にユニークな、ジャズらしからぬ曲のタイトルが並ぶ。まあ、このタイトルはイメージなので、そのものズバリの音が出てくる訳では無い。
収録された演奏は、録音当時、新主流派ジャズとして、モーダルで限りなくフリーで柔軟なインプロビゼーションがギッシリ。1950年代に流行したハードバップの雰囲気の欠片も無い。幽玄で妖気を感じさせるようなモードな演奏。揺らぐような漂う様なアドリブ・フレーズ。これぞショーターの真骨頂。
この『Speak No Evil』には、ショーターのテナーの個性、ショーターの曲作りの個性が一番尖った形で表現されている。ショーターとは如何なるジャズメンか、と問われれば、僕は真っ先にこのアルバムを差し出す。
このアルバムに採用されたショーター自作の曲は、完璧にショーターのイメージ通りの曲想で固められており、他のジャズメンが適当にアレンジして演奏できるものでは無い。あのテクニック優秀が故、リーダーの意図などお構いなしにトランペットを吹きまくるハバードが、ショーターの自作曲の型にはめられている位だ。
そして、このショーターのイメージ通りの曲想を支えているのが、エルビン・ジョーンズのドラム。僕はエルビンのことを「ミスター・ポリリズム」と呼ばせていただいているが、この硬軟自在、縦横無尽、伸び縮み自在なエルビンのポリリズミックなドラミングが、ショーターの幽玄で妖気を感じさせるようなモードな演奏、揺らぐような漂う様なアドリブ・フレーズを支えている。
ハンコックのピアノ、ロンのベースは、もちろん、ショーターの幽玄で妖気を感じさせるようなモードな演奏、揺らぐような漂う様なアドリブ・フレーズに十分に追従する。そりゃあそうでしょう。マイルス・クインテットで思いっきり一緒にやってるからね。
このアルバムでは、ショーターがマイルス・クインテットでやらせて貰えない、ショーターならではのジャズを思いっきりやっている。そりゃあまあ、黒魔術や西洋の民話などからインスパイアされた、幽玄で妖気を感じさせるようなジャズは、絶対にマイルスはやらんよな(笑)。
このアルバムは、ショーターのキャリアの中で、初期の最高地点でのアルバムだと思います。新主流派ジャズとして、モーダルで限りなくフリーで柔軟なインプロビゼーションを吹きまくるショーターの最高なパフォーマンスを感じることができます。新主流派のショーターの最高作です。
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