侘と寂、そして「間」を活かす
日本のジャズ・ミュージシャンは、静謐でクールでフリーな演奏が得意である。侘と寂、そして「間」を理解する民族だけに、楽器の響きと間を最大限に活かしたソロやデュオはお得意のジャンルである。特に、1970年代から1980年代前半にかけては、そんな楽器の響きと間を最大限に活かしたソロやデュオのアルバムの宝庫。
このデュオ盤は1980年1月、東京で録音された作品。実にマイナーなアルバムなんだが、これがまあ、非常に充実した内容で、実に聴き応えがある。今でも、時々、ひっぱり出しては聴き返すアルバムの一枚です。
そのアルバムとは、富樫雅彦&加古隆『Valencia』(写真左)。現代音楽志向のピアニスト、加古隆とジャズ・パーカションの第一人者の富樫雅彦とがガッチリ組んだ、とても魅力的な内容のデュオ盤です。
ジャズというよりは、現代音楽風のフリーで硬質なピアノの加古隆。侘と寂、そして「間」を活かした静謐な響きの加古のピアノは、明らかに日本人の感覚。ジャズ独特のリズム&ビートとファンクネスを極力排除した様な、静謐かつ冷徹な加古のピアノ。ひんやりしつつ真は「熱い」。
表情豊かで、表現豊かなパーカッション。明らかにジャズの即興演奏を旨とした一期一会のパフォーマンスが「凜」としていて清々しい。このパーカッションのパフォーマンスも、侘と寂、そして「間」を活かした優れもの。さすが、富樫雅彦である。静謐かつ冷徹な加古のピアノに瞬時に反応し、時に寄り添い、時に対峙する。
二人のパフォーマンスは、熱くもあり、冷徹でもあり、柔軟でもあり、硬直でもある。カッチリとしつつ限りなくフリーな演奏。こういうパフォーマンスが出来る日本のジャズについては、思わず胸を張りたくなる。限りなくアーティスティックなダイアローグ。
このアルバムの為に富樫が作曲し、彼の永遠の名曲として人気の高い、冒頭の「ヴァレンシア」の演奏が実に「粋」。シンバルの余韻を活用したドラミングと現代音楽っぽい展開のピアノ。響きの根底に「スパニッシュな感覚」。
決して、ジャズ盤紹介本に出てくることの無いデュオ盤ですが、これが素晴らしい内容なのだから、ジャズって面白い。そして、ジャズって何て裾野が広く、奥が深いのか。改めて感心することしきり、です。
震災から4年6ヶ月。決して忘れない。まだ4年6ヶ月。常に関与し続ける。がんばろう東北、がんばろう関東。自分の出来ることから復興に協力し続ける。
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