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2015年10月21日 (水曜日)

硬派なアルト奏者なんですが

デイヴィッド・サンボーン(David Sanborn)ほど、誤解・曲解されているジャズメンはいないだろう。彼自身は、聴けば判るのだが、硬派なアルト奏者である。

そのブロウは輝く様なブリリアントな音色で、ストレートにラウドに吹きまくる。テクニックもかなり優秀、アドリブ・フレーズも独特の個性があって、どこを取っても「硬派なアルト奏者」。

しかし、このサンボーン、ここ日本では1980年代以降、誤解・曲解を受けている。基本的には「スムース・ジャズの軟派なアルト奏者」と思われている節がある。何をやっても軟派なアルト奏者。それはどうも、日本のレコード会社のプロモーションにあるのでは無いか、と思われる。

例えば、このアルバム、1983年にリリースされた、David Sanborn『Backstreet』(写真左)の日本盤を見てみると良く判る。アルバム・タイトルこそ『バックストリート』なんだが、収録された曲の題名が凄い。

1. 愛の約束
2. 君の微笑み
3. ビリーヴァー
4. バックストリート
5. 涙はクリスタル
6. 大聖堂
7. ブルー・ビーチ
8. さよならは悲しい言葉
 

Backstreet

 
ね〜凄いでしょ。「愛の約束」「君の微笑み」から始まって、「涙はクリスタル」そして「さよならは悲しい言葉」ですよ。この日本語の題名を見て、これは硬派なジャズ・アルト奏者のアルバムだな、なんて思わないですよね(笑)。ほんと、なんて趣味の悪い邦題なんだろう。

内容的には悪く無いんですよ。でも、サンボーンのアルバムって、スタジオ録音盤になると、特に、この1980年代はこぢんまりとまとまってしまう傾向にあって、サンボーンの真の個性である「ブロウは輝く様なブリリアントな音色で、ストレートにラウドに吹きまくる」硬派なアルト奏者ってところが目立たなくなってしまうのだ。

これがいけない。この目立たなくなってしまうところが、スムース・ジャズの軟派なアルト奏者と思われてしまう主たる原因である。この『Backstreet』が良い例である。サンボーンのブロウは申し分無いんですが、アルバム全体のアレンジの傾向、音の纏まりの傾向が、どうも「こぢんまり」まとまってしまっている。これって、プロデュースとマスタリングの問題だろう。

もしかしたら、当時、サンボーンが所属していたレコード会社であるワーナーは、サンボーンのアルトを「スムース・ジャズの軟派なアルト奏者」として売りたかったのかもしれない。事実、この「スムース・ジャズの軟派なアルト奏者」な感じのサンボーンのアルバムって、日米で結構売れたんですよね。

もちろん、サンボーンからするとそれって心外な訳で、この自らの真の個性と世の中の受け止め方とのギャップに悩むことになる。サンボーン自身にとっては、スタジオ録音盤の弱点を如何に克服するか、が当面の課題となった訳である。

 
 

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Never_giveup_4

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