モラーツの『Story of i』
パトリック・モラーツ(Patrick Moraz)は1944年6月生まれのスイス出身のキーボディストである。プログレッシブ・ロックの雄、イエスの三代目キーボード奏者として、『リレイヤー』というアルバムで、僕は彼の名前を知った。1974年の暮れのことである。
そんな彼がリリースしたソロ盤がこれ。Patrick Moraz『The Story of i』(写真)である。1976年6月のリリース。僕は、イエスの『リレイヤー』のパトリック・モラーツのキーボードが大好きで、このソロ盤には過度の期待を持って購入に至った。リリースされて、ほぼ直後に手にした思い出がある。
が、聴いてみて、当時は「ガッカリ」。リック・ウェイクマンの『The Six Wives of Henry VIII』の様な、ロック系の大仕掛けなキーボード盤を期待していたので、このモラーツの『The Story of i』には当惑した。で、暫くはお蔵入り。というか、10年以上、まともに聴か無かったのではないかしら。
このモラーツの『The Story of i』の良さに気がついたのは、購入してから10年以上経ってからである。フュージョン・ジャズやクロスオーバー・ジャズについて、一応の見識を持って聴くことが出来る様になり、客観的にそれぞれのアルバムに対して評価をすることが出来る様になってからである。
このモラーツの『The Story of i』は、ロックのキーボード盤として聴くと絶対に違和感を感じる。この『The Story of i』は、プログレッシブ・ロックのマナーをベースに、ワールド・ミュージックやサイケデリック・ロックとの融合がメインのフュージョン・ジャズ、若しくは、クロスオーバー・ジャズの好盤として聴いた方がしっくり来る。
アフリカン・ネイティブな響きもあれば、ブラジリアン・テイスト溢れるリズム&ビートもある。サイケデリック・ロックなアブストラクトな一面もあれば、プログレッシブ・ロックの様なコンセプチュアルなナンバーもある。
やはり、この盤はまさしく、フュージョン・ジャズ、若しくは、クロスオーバー・ジャズの好盤として聴いた方がしっくり来るなあ。
ちなみにパーソネルは、Patrick Moraz (key), John McBurnie, Vivienne McAuliffe (vo), Ray Gomez, Jean de Antoni (g), Jeff Berlin (b), Alphonse Mouzon, Andy Newmark (ds), The Percussionists of Rio de Janeiro。
う〜ん、なるほど。パーソネルを見渡せば、このモラーツの『The Story of i』は、やっぱり、ロックのキーボード盤では無いな。このパーソネルから見て、ワールド・ミュージックやサイケデリック・ロックとの融合がメインのフュージョン・ジャズ、若しくは、クロスオーバー・ジャズの好盤である。
プログレッシブ・ロック+フュージョン・サンバな冒頭の「Inpact」や、プログレッシブ・ロック+トロピカルな「Cachaca」。プログレッシブ・ロック+AOR的ソフト&メロウな「Dancing Now」。プログレッシブ・ロックのマナーをベースにした、良質なフュージョン・ジャズ、若しくは、クロスオーバー・ジャズが展開される好盤である。
震災から4年6ヶ月。決して忘れない。まだ4年6ヶ月。常に関与し続ける。がんばろう東北、がんばろう関東。自分の出来ることから復興に協力し続ける。
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