キースの多面性を追体験する
今となってはスタンダーズ・トリオばかりがクローズアップされるキースだが、キースのキャリアの中ではスタンダーズ・トリオは別のものとして評価されるべきで、キース独自の個性については、スタンダーズ・トリオ抜きに語られるべきだと思う。
そういう意味では、このアルバムは、キースを理解する上で、実にユニークなアルバムである。キースの多面性を追体験することができる。Keith Jarrett『Treasure Island』(写真左)。インパルス・レーベルでのキースの「アメリカン・カルテット」の第2弾。
1974年2月の録音になる。ちなみにパーソネルは、前作『Fort Yawuh』と同じ、Keith Jarrett (p, sax, per), Dewey Redman (ts), Charlie Haden (b, per), Paul Motian (ds, per), Danny Johnson (per)。
このアルバムは、キースの多面性の中の「特異な一面」を聴くことが出来る。フォーキーでアーシー、図太く、あっけらかんと明るい雰囲気が溢れ出るアルバムである。キースといえば、洗練された繊細な感覚あふれるピアニストという一般的評価があるが、このアルバムはそれとは全く違った側面を見せる。
それに加え、もう一つのキースの「特異な一面」であるフリーキーな側面を聴くことが出来る。3曲目の「Fullsuvollivus (Fools of All of Us)」と7曲目「Angles (Without Edges)」を聴いてほしい。
キースもフリージャズの洗礼を受けていたんやなあ、と感慨に耽る。というか、本人からして、自らの個性と自認している「ふし」がある。しかし、キースのフリーは「暗くない」。キースのフリーは不思議と「明るい」。でも、キースのフリーは何かとっちらかっていて、とりとめが無い。
3曲目と7曲目のフリージャズ的演奏の他は、とことんアーシーで力強くて明るく、ロマンティシズム溢れる演奏だ。特に、1曲目「The Rich (And the Poor)」。ドスンと力強く歩くようなリズムに乗って、キースのゴスペルっぽいピアノが唄い、レッドマンのサックスが唄う。
4曲目の「Treasure Island」もアーシーでロマンチック。2曲目「Blue Streak」、6曲目「Le Mistral」は米国フォークソングの雰囲気がプンプンして、とっても素敵な演奏になっている。ラストの「Sister Fortune」は、キース流のクロスオーバー・ジャズと言っても良い演奏。
そう、このアルバムは、現在、公に定着しているキースのイメージからすると、よっぽどキースらしくないアルバムである。しかし、僕はそこが好きだ。変にリリカルに耽美的にスタンダードを演奏しているキースより、フォーキーでアーシーで、米国ルーツ・ミュージック風のジャズ丸出しのキースの方がよっぽど人間臭くて僕は好きだ。
震災から4年6ヶ月。決して忘れない。まだ4年6ヶ月。常に関与し続ける。がんばろう東北、がんばろう関東。自分の出来ることから復興に協力し続ける。
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