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2015年9月16日 (水曜日)

『生と死の幻想』のキースの個性

Keith Jarrett『Death and the Flower』(写真左)。邦題『生と死の幻想』。1974年10月の録音。『Fort Yawuh』『Treasure Island』と併せて、僕はオンパルス3部作と呼んでいる。このインパルス3部作を通して聴いて、キース・ジャレットの多面性を確認することができる。貴重な3枚である。

ちなみにパーソネルは、Keith Jarrett (p, sax, per), Dewey Redman (ts), Charlie Haden (b, per), Paul Motian (ds, per), Guilherme Franco (per)。パーカッションだけが、Danny Johnsonから変わっているだけで、アメリカン・カルテットの4人は当然、変わらない。

収録曲はたったの3曲のみ。1曲目の「Death and the Flower」が22分49秒の長尺の演奏、そして、2曲目が「Prayer」で10分12秒、3曲目が「Great Bird」で8分45秒で、ジャズとしてはまずまずの長さ。いずれも、フリー、そしてスピリチュアルな音世界である。このアルバムには、3部作の前の2枚にあった、キースの個性の一つである「フォーキーでアーシー」な側面は全く存在しない。

この『生と死の幻想』に存在するキースの個性は、フリー・ジャズな個性とスピリチュアルな個性の唯2つのみが存在する。加えて、キースのフリー・ジャズな音世界は「とっちらかっている」。とりとめの無いフラグメントのような、様々なフリーな音が散りばめられている。アフリカン・ネイティブで現代音楽的な響き。

スピリチュアルな音世界は耽美的でリリカル。クラシックの印象派の様な、漠然と漂う様に耽美的でリリカル。ジャズらしかぬ豊かにかかったエコー、そこにペダルを踏んだ嘆美的な流れる様なピアノのフレーズ。おおよそ、ジャズとは形容し難い、スピリチュアルな演奏。ジャズの正反対を行くような音世界で包まれる。
 

Deth_and_the_flower

 
もともと、キースの個性の一つである「フリー・ジャズな音世界」は限りなく現代音楽の音に近い。伝統的なジャズの世界でのフリーなジャズ、いわゆるオーネットやコルトレーン、ローランド・カークの様に、ジャジーでそこはかと無くファンクネス漂う、激情的なフリーな音世界では無い。キースのフリーは、怜悧であり硬質であり人工的である。

キースのスピリチュアルな個性は、クラシック風であり宗教的である。印象派的であり場当たり的である。キースのスピリチュアルな音世界は、ジャズという即興演奏を旨とする音楽ジャンルでしか存在し得ない特殊なもの。クラシックでも無ければ、イージーリスニングでもアンビエントでも無い。ただ即興を旨とする演奏なので、やっとジャズという音楽ジャンルの中で成立している。

厳密に言えば、この『Death and the Flower』の音世界は、純ジャズやメインストリーム・ジャズという形容は難しい。即興演奏ということのみが共通点で、辛うじて「ジャズ」として成立している。現代音楽とするには余りにスピリチュアルで、イージーリスニングやアンビエントとするには、あまりに怜悧であり流動的である。

実は、僕はこの『生と死の幻想』については、今から35年ほど前、生まれて初めて聴いた時、何が何だか、さっぱり理解できなかった。このジャジーなリズム&ビートが希薄なフリー、そしてスピリチュアルな音世界については、全く理解出来なかった。今では何と無く理解出来る様にはなったが、一体キースは何を表現したかったのか、がイマイチ判らない。

それでも、ジャズ本やジャズ盤紹介本では、この『生と死の幻想』は、キースの初期の代表盤として紹介されているケースが多い。でも、僕はそうは思わない。このアルバムの音世界が、多面性あるキースの個性の一つであるフリー、そしてスピリチュアルを的確に表現しているとは言い難いと感じるのだ。

 
 

震災から4年6ヶ月。決して忘れない。まだ4年6ヶ月。常に関与し続ける。がんばろう東北、がんばろう関東。自分の出来ることから復興に協力し続ける。 

Never_giveup_4

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