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2015年8月26日 (水曜日)

YMOの「芸術 (アート)」の部分

我がバーチャル音楽喫茶『松和』、今週は、毎年8月後半のこの時期、恒例の「1970年代ロック祭り」。8月の後半になると、決まって学生時代の夏休みの後半〜終わりの雰囲気を思い出す。今年もこの季節は70年代ロックの大特集。今日は「坂本龍一」。

1978年11月のことである。イエロー・マジック・オーケストラ(Yellow Magic Orchestra・以降YMOと略す)の登場には狂喜乱舞状態だった。とにかく、シンセサイザーが大好きな性分ゆえ、このシンセサイザー・ミュージックの登場は思いっきりワクワクした。ついにここまできたのか、と感慨深かった。

YMOのファースト・アルバム『YELLOW MAGIC ORCHESTRA』を早々に入手し(1978年12月には日本盤を入手完了していた)、これは凄い、と感動に次ぐ感動。そして、そのYMOのメンバーの一人、坂本龍一のソロ盤がほぼ同時期にリリースされていたのに気が付いた。

坂本龍一に注目した動機は単純である。「キーボード奏者だから」。そう僕はキーボード奏者が大好きである。坂本龍一はどういうキャリアを持ったキーボード奏者なのか、全く知らないまま、このアルバムを手にした。

そのアルバムとは、坂本龍一『千のナイフ(Thousand Knives)』(写真)である。このアルバムは凄い。初めて聴いた時、僕は思った。これはポップアルバムでは無い、これはキーボードを使った現代音楽である。そして、このアルバムの内容は完璧に「芸術(アート)」である、と感動した。

僕はこの『千のナイフ』を通じて、坂本龍一を理解した。以降、僕は「教授」にゾッコンである。とにかく、キーボード演奏のセンスが素晴らしい。そして、ソング・ライディングが素晴らしい。日本人にこんなキーボード奏者が居たなんて、全く知らなかった。
 

Thousand_knives

 
冒頭のタイトル曲が素晴らしい。出だしのボコーダーでの会話(というか「毛沢東の詩」らしい)、そして、前奏のシンセサイザー・ポリリズム。大正琴の様なシュミレート音。そして、いきなり出てくるシンセサイザーの目眩く漂う様な、流れる様な旋律。1981年発表のYMOのアルバム『BGM』にてセルフカバーしている。

この1曲目の「千のナイフ」の途中に出てくるエレギが暴力的で素晴らしい。ロック・ギタリストには弾けないアグレッシブでジャジーな旋律。坂本からの注文は「火がついたように弾きまくってくれればいいから」だったそう。このギタリスト、誰あろう、フュージョン・ジャズ・ギタリストの雄、渡辺香津美である。そりゃ〜凄いはず。

3曲目の「Grasshoppers」のピアノ・デュオは完全に現代音楽の響き。欧州ジャズに通じる現代音楽風のインプロビゼーション。もはやこれは「芸術(アート)」である。ポップスな音楽では無い。思わす佇まいを改めて、音に対峙してしまう。

ラストの「The End Of Asia」も名曲、名演の類。後にYMOでも定番の演奏曲になるが、この坂本バージョンが僕は一番、アートを感じる。ポップスな要素を排除し、現代音楽をはじめ、西洋音楽の影響をモロに浴びながら、アジアンテイストなシンセ・ミュージックを構築するという離れ業。脱帽である。

このアルバムでの「教授」の音楽は、凄まじいばかりの構築美とその構築美を脅かすデカダンスが拮抗する、いわゆる「アーティスティックなファシズム」。時代の最先端を行くシンセサイザー・ミュージックの中に潜む「激しさ」と「毒」。YMOの「芸術(アート)」の部分の核心。聴き進むにつれ、意識の中にテンションが積み上がっていく。

 
 

震災から4年5ヶ月。決して忘れない。まだ4年5ヶ月。常に関与し続ける。がんばろう東北、がんばろう関東。自分の出来ることから復興に協力し続ける。 

Never_giveup_4

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