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2015年8月 7日 (金曜日)

ジョージ・ベンソンの純ジャズ

酷暑である。我が千葉県北西部地方の県庁所在地・千葉では最高気温38.5度、観測史上の最高気温を記録したとのこと。夕方、陽が落ちても熱風が吹き荒れている。

1970年代後半、ギターを弾いて唄えば、「フュージョン・ギタリストの余芸だろ」と揶揄され、1980年代に入って、唄いながらギターを弾けば、「ブラコンでしょ」と曲解され、ジョージ・ベンソンのボーカルは正当に評価されることが無かった様に思う。

とにかくジャズ評論家の方々が手厳しい。何をやっても「ギタリストの余芸」、何をやっても「ブラコンであってジャズじゃ無い」。ベンソンとしては、この訳の判らない人達を一度仕切ってしまわねば、と思っていたに違いない。

1989年、ベンソンは満を持して、このアルバムをリリースする。George Benson『Tenderly』(写真左)。ジョージ・ベンソンがジャズ・ギターを弾いて、ジャズ・ボーカルを披露する、ベンソンの戦略的なアルバムである。

アレンジは、西海岸ジャズの代表的アレンジャーのMarty Paichが担当する。ベースはRon Carter、ドラムスはLouis Hayes/Herlin Riley/Al Fosterの3人が分担、ピアノはMcCoy Tynerの、純ジャズ志向のリズム・セクション。もちろんギターはジョージ・ベンソン(George Benson)。

収録曲は以下の通り。1曲目から3曲目は、ジャズ者であれば直ぐに判る「超・スタンダード曲」。冒頭は「You Don't Know What Love Is」。この名曲バラードをボーカルとお得意のギター&スキャットでクールに唄い上げていく。2曲目の「Stella By Starlight」はスインギーなビートで爽やかなアレンジがユニーク。3曲目の「Stardust」は、もう黙って聴き耳を立てるしか無い熱唱。
 

George_benson_tenderly 

 
1.You Don't Know What Love Is
2.Stella By Starlight
3.Stardust
4.The Mambo Inn
5.Here There And Everywhere
6.This Is All I Ask
7.Tenderly
8.I Cpuld Write A Book

そして、5曲目のビートルズ・ナンバーが実に良い。もはやジャズ・スタンダード曲となった「Here There And Everywhere」。この曲ではベンソンのボーカルも良いが、やっぱり聴きものはギターでしょう。このギターを聴くと、やっぱりベンソンはギターがええなあ、と改めて感心してしまいます。

7曲目の「Tenderly」では、ベンソンのギターを堪能できます。何かと揶揄されるベンソンのギターですが、この曲でのプレイを聴いていると、これだけの表現力の幅の広さ、奥の深さのあるジャズ・ギターはそうそうあるものではありません。揶揄されるいわれのない素晴らしい才能です。

ラストの「I Cpuld Write A Book」は、もはやこれはコンテンポラリーな純ジャズ。ロンのベース、フォスターのドラム、マッコイのピアノ、そしてベンソンのギター。非常にオーソドックスな味わいに満ちた演奏。実にアーティスティック。

実に良い出来のコンテンポラリーな純ジャズ盤です。ベンソンのギター、ベンソンのボーカル、共に徹頭徹尾、ジャズしてます。プロデューサーのTommy Lipumaが良い仕事してます。リッチでゴージャスなサウンドを創出しながら、決して陳腐にならない、優れたプロデュースが、このベンソンのジャズ盤を惹き立てています。
 
 
 
★震災から4年4ヶ月。決して忘れない。まだ4年4ヶ月。常に関与し続ける。がんばろう東北、がんばろう関東。自分の出来ることから復興に協力し続ける。 

Never_giveup_4

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コメント

今日は若干「猛暑」もおさまり、32度でも風が吹くと涼しく感じる自分がなんだか怖いです。笑

ベンソンをブラコンと思ったことは一度もありません。笑^^

一部の評論家の「(ろくに)聞かず書き」が露呈していることは明白だなあ、と思っていましたが、好きでもないアーティストの新譜でもなんとか良いところを見つけて書かないと次からお声がかからないとでも思いつつ?の論評も結構あったと思っています。^_^;

しかし、毎月膨大に発売されるジャズCDのなかから限られた枚数しか買えないですし、そうなると私の場合、新録音が1割、で残りの9割を定番の旧譜という按配でした。

同じ「サキコロ」の再発レビューでも、ベテランの「十年一日のお決まり美辞麗句評」もきらいではありませんが、むしろ新しいフアンがはじめて聴いてどう感じたか」のほうに興味をひかれたりもします。

「AOR(アダルトオリエンティドロック)」なる標語?をはじめに見たときは「アダルトオッサンロックのシャレ?」と半ば本気で思いました。笑

それにつけても「サキコロ」の別テイクは本当に存在しないのだろうか?あるいは録音時の「あ~テイクワン!」などなどの音声さえ存在しないのだろうか?失敗テイクでもなんでも、あの日のセッション関連の別音源を是非聴いてみたいものであります。^^

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