夏はボサノバ・ジャズ・その22 『Look to The Rainbow』
1960年代前半、米国を中心にボサノバ・ジャズの大ブームが起こった訳ですが、とにかく、アルバムを制作することが出来るジャズメンは何らかの形で、ボサノバ・ジャズのアルバムに手を染めている。まあ、猫も杓子もボサノバ・ジャズ、ってな雰囲気になった訳ですね。
まあ、商業的に「ボサノバ・ジャズのアルバムを出せば売れる」というノリだったのでしょうが、ボサノバ・ジャズのアルバムをいろいろと調べて聴いていると、意外とアーティスティックにチャレンジしていることが判ります。
そのチャレンジのひとつが「アレンジ」。ボサノバの楽曲をどうやってジャズにアレンジするか。これがなかなか追いかけてみると面白い。これは素晴らしいなあ、というアレンジもあれば、これはなんだ、と眉をしかめるアレンジもある(笑)。
例えばこのアルバム、Astrud Gilberto『Look to The Rainbow』(写真左)。1966年のリリースになる。このアルバムの聴きどころはアレンジ。アレンジにギル・エバンスとアル・コーンが担当している。特に帝王マイルスの盟友、ジャズメンの誰もが認めるギル・エバンスのアレンジには興味津々。
曲はボサノバでもアレンジをギル・エバンスが担当すると、しっかりとジャズ化されるから面白い。しかも、アルバム全体をギル・エバンス色で埋め尽くされる。それほど、ギル・エバンスのアレンジは個性的で魅力的。アル・コーンのアレンジも良い味出しているのですが、やはりこのアルバムではギル・エバンスのアレンジでしょう。
ギル・エバンスのアレンジは明快に正統な純ジャズ基調なんだが、意外とボサノバの持つ独特のアンニュイで退廃的な雰囲気を損なわない。アストラッドの物憂いボーカルにも意外とマッチしていて、このボサノバ・ジャズ盤、なかなかの内容になっています。
アストラッドのボーカルは決して上手くない。でも、雰囲気があるんですよね。アストラッドには、その雰囲気を活かすアレンジが必要なのですが、このギル・エバンスの採用は大成功でしょう。特に「I Will Wait For You(シェルブールの雨傘)」は良いですね。このアルバムの一番の聴きものでしょう。
アストラッドの魅力、気張ってないところ、キュートな雰囲気、気怠い柔らかい声が損なわれること無く、しっかりとボサノバをジャズ化するギル・エバンスのアレンジの才には脱帽です。アーティスティックに聴くことが出来るボサノバ・ジャズ盤です。
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