ナベサダ・スムースジャズ事始め
このアルバムを聴けば、フュージョン・ジャズとスムース・ジャズの違いが「一聴瞭然」となる。スムース・ジャズとは、フュージョン・ジャズ、ポップ・ジャズの流れから進化したスタイルである。
フュージョン・ジャズよりも音作りを洗練し、聴き心地を優先した音の展開。楽器はしっかりとなり、テクニックは奥に偲ばせる感じで、それをひけらかすことは無い。クロスオーバー・ジャズの亜流であった、イージーリスニング・ジャズの発展形とも取れる。そんなスムース・ジャズの初期の成果というか、スムース・ジャズ初期の好盤がこの、渡辺貞夫『RENDEZVOUS(ランデブー)』(写真)。
1984年の録音。ちなみにパーソネルは、渡辺貞夫 (as)・Steve Gadd (ds)・Marcus Miller (el-b, key)・Richard Tee (el-p)・Ralph MacDonald (per)・Eric Gale (g)・Anthony MacDonald (per)・Barry Eastmond (key)・William Eaton (arr)・Roberta Flack (vo)。基本的には前作の『Fill Up The Night』の人選を踏襲している。
冒頭のタイトル曲からして、この音の雰囲気はフュージョン・ジャズでは無い。ソフト&メロウな音作りがメインではあるが、とにかく聴き心地が良い。リチャード・ティーのフェンダー・ローズの「心地良く漂う様な揺らぐような」音が効いている。そっと切り込んでくるナベサダさんのアルト。う〜ん、洗練の極みである。
この冒頭のタイトル曲の音作りが、このアルバム全体を支配している。ソフト&メロウな聴き心地優先の音作りながら、それぞれの楽器の演奏は、意外と硬派でタイトです。この「意外と硬派でタイト」というところが、他のスムース・ジャズ初期のアルバムの音作りと一線を画していて、ナベサダ・スムース・ジャズの個性です。
前作から引き継がれたリズム・セクションは、相変わらず重量感抜群で、耳当たりの良い雰囲気のフロントの旋律をガッチリと支えて固めます。逆に、重量感抜群のリズム・セクションをバックにしながら、そんなリズム・セクションの音に埋もれること無く、逆に浮かび上がる様な、切れ味の良いナベサダさんのアルトの音色は快感ですらあります。
このアルバムは全米で大ヒット、ビルボードのジャズチャート2位になったことも、今では懐かしい思い出です。ビルボードのジャズチャート2位ですよ。このニュースを聞いた時は喝采の声を上げましたね。で、このアルバムの音を初めて聴いた時、この「ビルボードのジャズチャート2位」は嘘じゃない、と確信しました。
発売当時は、まだ、スムース・ジャズという言葉は無く、それまでのフュージョン・ジャズとは音作りとコンセプトが異なる、ということは耳で感じてはいましたが、どこがどう違うのか、その理屈はまだまだ判らない、ジャズ者になって7年目の秋のことでした。
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「スムースジャズ」。マスターのご見解で納得です。^^
私はどうにもこの「スムースジャズ」という言い方・分け方には抵抗があります。^_^;
イージーリスニングジャズという言い方には無抵抗ですが^_^;スムースジャズというとナジーとかなんとか、なんだかなあ・・とバカにされたような「いい加減さ」?さえ感じていました。
いわゆる「ジャンルわけ」は購入者がお店でさがしやすいようにあれこれ細分化したのが基本だと思うのですが、ナベサダさんのこれらもスムースジャズと呼ぶなら大いに納得です。(^^ゞ
・・その昔ナベサダさんのライブでバックにダイアナ・クラールや名前を忘れましたが当時の若手新進気鋭の来日外人リズム隊をバックにパーカーの曲を中心のコンサートで、明らかにナベサダさんが不機嫌そうでした。
後から色々聴いたら「君達はバップのイデオムがわかっていない!」とオカンムリ?のようでしたが、実はバックの若手は「・・オッサン・・今の感覚でやらんかい;;」と不満タラタラだったとか。笑
投稿: おっちゃん | 2015年7月10日 (金曜日) 06時20分