サンボーンを舐めてはならない
デビッド・サンボーンは、ジャズ者ベテランの方々から、結構、誤解を受け、曲解されたジャズメンである。先に断っておくが、サンボーンのアルトは硬派で正統派なアルトである。決して、軟弱で雰囲気だけのクリスタルなアルトでは無い。純ジャズをやれば第一線で活躍できるだけの力量は十分に持っている。
それなのに、フュージョン・ジャズをやってるからって、サンボーンのアルトは軟弱だとか、サンボーンのアルトは心地良いだけだとか、好き勝手な間違った評価をされる。特に、その傾向は、残念ながら日本に多く見られる。聴かず嫌いというか、フュージョン・ジャズやって売れているジャズメンって結構、皆、厳しい扱いを受ける。意外と日本は「狭い」。
そんなサンボーンのアルバムの中で、特にこのアルバムは誤解されることが多い。恐らく、このジャケットがアカンのやと思う。こういうバブリーな雰囲気漂う、お洒落なジャズ・カフェを想起させるジャケットが誤解を生むのだ。なんでこんなジャケット・デザインにしたのか不明だが、このジャケットがアカンのやと思う。
そのアルバムとは、David Sanborn『As We Speak』(写真左)。邦題が『ささやくシルエット』。しかし、なんちゅう邦題を付けるんや。この邦題もアカンのやと思う。絶対に誤解される邦題である。そういう意味で、サンボーンは日本では誤解されやすい様に、されやすい様に扱われているのだ。
このジャケットと邦題を見れば、硬派なジャズ者のみならず、普通の真面目な音楽好きも、このアルバムには、いきなりだと手が伸びないだろう。サンボーンのアルバムと知っている人は別なんだろうけどなあ。でも、このアルバムのサンボーン、良い感じなんですよね。
サンボーンのジャズなんて、って思われているジャズ者の方々も、まず、パーソネルを見れば絶対に気が変わる。レギュラーメンバーは、David Sanborn (as, ss), Omar Hakim (ds), Marcus Miller (b), Michael Sembello (el-g, vo), Don Freeman (key,syn), Paulinho da Costa (per)。なんと凄いメンバーやん。名うての硬派なジャズメン達ばかりである。
このアルバム、フュージョン・ジャズによくある「ソフト&メロウ」な耳当たりの良い演奏ではないか、と思われるジャズ者の方々は多くいると思うが、初めて聴くとビックリするんだが、マーカス・ミラーのチョッパー・ベース、オマ・ハキムの切れ味の良いドラミング、そして、パウリーニョ・ダ・コスタの変幻自在なパーカッションが奏でるリズム・セクションは重量感抜群。
そんな重量級リズム・セクションをバックに、硬派なサンボーンのアルトが飛翔する。冒頭の「Port of Call」からして、むっちゃ良い感じなのだ。3曲目の「Rush Hour」のソプラノも良い。そして、このアルバム、ボーカル入りの曲も意外と硬派で聴き応えがある。5曲目の「Back again」のマイケル・センベロの歌なんて力感十分です。
そして、7曲目の「Straight to the Heart」を聴けば、単純にサンボーンのアルトって良いな、って思います。朗々と歌い上げる様なサンボーンのアルトは聴き応え十分。アルトが、アルトの真鍮が素敵に鳴っています。クオリティの高いアルトの響き。サンボーンが一流のジャズメンの証です。
このアルバム、僕にとって、サンボーン屈指の好盤です。このアルバムのサンボーンを聴いても、やっぱりサンボーンのアルトは軟弱だとか、サンボーンのアルトは心地良いだけだとか、好き勝手な間違った評価をされるのかなあ。でも、サンボーンは親日派。逆に、サンボーン者と呼ばれるサンボーン・マニアも日本には沢山いるのだ。
震災から4年4ヶ月。決して忘れない。まだ4年4ヶ月。常に関与し続ける。がんばろう東北、がんばろう関東。自分の出来ることから復興に協力し続ける。
★Twitterで、松和のマスターが呟く。名称「松和のマスター」でつぶやいております。ユーザー名は「v_matsuwa」。「@v_matsuwa」で検索して下さい。
« マイルスの正式ブートレグ第4弾 | トップページ | 時々聴きたくなるビ・バップ »
コメント