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2015年7月 7日 (火曜日)

オーネット・コールマン逝去...

去る2015年6月11日、オーネット・コールマン(Ornette Coleman)が逝去した。満85歳、大往生である。メインの楽器はアルト・サックス。トランペットやヴァイオリンも出来る。1960年代のフリー・ジャズをリードした、ジャズ界の「イノベーター」の一人であった。

とまあ、フリー・ジャズとは言うが、今の耳で聴くと、普通のメインストリーム・ジャズに聴こえる演奏がほどんど。気の向くまま、思いのままに吹きまくるフリー・インプロビゼーションでは無く、従来のモダン・ジャズのルーティンに囚われない、それまでに無いルーティンで自由度の高い演奏を吹き進めていく、そう意味での「フリーなジャズ」を提唱し牽引した。

必要最低限の決め事の中で、それまでに無いジャズの進め方を提示し、その進め方に則って、フロント楽器が旋律を吹き進めていく。オーネット・コールマンの「フリー・ジャズ」には、アドリブ・ラインに旋律があり、ハーモニーがある。よって、演奏全体の自由度の高いのにも拘わらず、今の耳で聴くと、意外とメインストリームなジャズに聴こえる。

そんなオーネット・コールマンの追悼として、今日は、Pat Metheny & Ornette Coleman『Song X』(写真)を聴く。1985年12月の録音、1986年のリリース。ちなみにパーソネルは、Pat Metheny (g), Ornette Coleman (as, vln), Charlie Haden (b), Jack DeJohnette (ds), Denardo Coleman (ds, per)。

パット・メセニーは、若い頃から、このジャズ界のイノベーター、オーネット・コールマンの音楽に傾倒していて、ことあるごとにオーネットの楽曲を取り上げている。パットは、PMG(パット・メセニー・グループ)では、ファンクネス皆無の牧歌的かつネーチャーな雰囲気でフォーキーな演奏が中心なんだが、ソロになると結構フリーなギタリストに豹変する。

そんなパットが念願叶って、そんなアイドルのオーネット・コールマンと共演したアルバムがこの『Song X』である。パットの契約していたレーベル、ゲフィンからのリリースなので、パット主導のアルバムかと思いきや、このアルバムは全編に渡ってオーネット主導の音作り、音の展開である。最初から最後まで、オーネット・コールマンの音世界満載。
 

Songx

 
そんなオーネットな音世界に、パットは喜々として追従しているようだ。さすがに敬愛するオーネットとの共演。オーネットとパットの息はピッタリ。オーネットの音楽を十分に理解して、オーネットの音楽をパットなりに忠実に再現している。初共演というが、このオーネットとパットのコラボには違和感は全くない。

意外だったのは、オーネットの音世界に、ドラムのデジョネットが叩きまくりながら、オーネットの音世界に素直に追従しているところ。さすがにポリリズムの申し子ドラマーである。オーネットのフリーなジャズに合わせて叩きまくるポリリズムは、まさにオーネットの為に表現されたリズム&ビートである。

そして、オーネットとの共演が多く、オーネットの音楽を一番理解しているベーシストの哲人、チャーリー・ヘイデンのベースがこれまた、オーネットの音の展開にピッタリなベースラインを提供する。オーネットのフリーなジャズに、迷いの無い淀みの無い、オーネットの旋律にピッタリなベースライン。聴いていて惚れ惚れする。

アルバム全体の雰囲気は、決して奇をてらったアブストラクトな雰囲気の「フリー・ジャズ」では無い。従来のモダン・ジャズのルーティンに囚われない、それまでに無いルーティンで自由度の高い演奏を吹き進めていく、そう意味での「フリーなジャズ」は、今の耳で聴くと、意外とメインストリームなジャズである。

ジャケットは写真のジャケットが、僕にとっては馴染みが深く、これでないと「駄目」だ。20thアニバーサリーCDのあのケバケバしい「大きなダブル・エックス」のジャケットはどうにもこうにも趣味が悪いとしか思えない。

が、従来のモダン・ジャズに無い演奏展開の中で、自由にアルト・サックスを吹き進めていく様は、まさに「限りなく自由度の高い、創造性豊かなジャズ」である。

今年、素晴らしい「ジャズ界のイノベーター」を「生きるレジェンド」をまた一人失った。ご冥福をお祈りしたい。

 
 

震災から4年3ヶ月。決して忘れない。まだ4年3ヶ月。常に関与し続ける。がんばろう東北、がんばろう関東。自分の出来ることから復興に協力し続ける。 

Never_giveup_4

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コメント

音楽の世界ではとうに「ガラガラ・ポン!→こんなんでましたあ!」の時代は終わった・・と思っていますが(^^ゞその歴史の中でもオーネットのようなイノベーターの存在は実におおきいものがありましたよね。

ジャズは個性のぶつかり合いを楽しむ音楽だ、と私は思っていますが、その意味ではたとえばエルビンジョーンズのスタイルのほうが、ジャックデジョネットよりは好きだったりもします。

昨晩のNHKの特集で「定額&低額ネット聞き放題サービス開始」についての危機感をとりあげていましたが、自分をふりかえってみましても膨大なCD収集と大船巨砲主義?^_^;的オーディオ志向がいつのまにかパソコンのHDに溜め込んだ音源からのニアフィールド&小音量志向に変わってきています。

また最近ハヤリ?の「ハイレゾ音源」を店頭で試聴しましても、悲しいかな、年齢からくる自分の耳のおとろえを実感するばかりで、そのよさを享受するにはいたりませんでした。笑

個人的にジャズの未来を考えると、今後ジャズミュージシャン志向の若者は激減しそうだなあ・・と危惧しています。

クラシックなら「習い事の先生」として成り立つ人もいるでしょうが、ジャズはその発表の場の激減などを考えても、なんだかなあ;;と少し悲観的な今日この頃ではあります。(~o~)

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