弾いて一流、唄って一流
マイルスが自らのエレクトリック・バンドに、真っ先に招聘したギタリストである。先鋭的なところもあるが、ギターの基本はウエスモンゴメリーなスタイル。ウエスをソフト&メロウに洗練したイメージのギター。これだけでも「弾いて一流」の類で、ジャズ・ギタリストのレジェンドとして名を残している。
そんなギタリストが、ある日、唄ってみた。これがまた「上手い」。ボーカリスト専門でしたと言われても、ただ納得するだけの上手さと味のあるボーカル。そして、これがまた「大当たり」。「唄って一流」の仲間入り。神は二物を与えずというが、このギタリストに限っては、二物を与えている。
そのギタリストとは、ジョージ・ベンソン(George Benson)。彼は、1976年リリースの傑作『Breezin'』で、当時LPのA面の2曲目「This Masquerade」で、そのボーカル曲が大当たり。以降、ベンソンは、その歌の部分の割合を徐々に拡大していった。「弾いて一流、唄って一流」の二足の草鞋を履くギタリストの出現であった。
そんなベンソンの「弾いて一流、唄って一流」の二足の草鞋のバランスが程良く取れたアルバムが、1980年リリースの『Give Me the Night』(写真左)。ベンソンの「ソフト&メロウ」な個性に、R&Bのリズム&ビートをブレンドして、上質なファンクネスを供給、1980年当時のフュージョン・ジャズ盤の傑作をものにしている。
それもそのはず、プロデュースは、あの「クインシー・ジョーンズ(Quincy Jones)」が担当しているのだ。このR&Bのリズム&ビートをブレンドして、上質なファンクネスを供給の部分については、このクインシー・ジョーンズの存在が大きく貢献している。この『Give Me the Night』のヒットで、ブラック・コンテンポラリー(略してブラコン)という音楽ジャンルが認知されたほどである。
参加しているミュージシャンも素晴らしいパフォーマンスを披露している。ハービー・ハンコック、リチャード・ティー、ジョージ・デューク、そしてデビッド・フォスターが参加しています。いつもながら、クインシーのプロデュースは贅沢ですね。でも、それなり以上の音を紡ぎ出すのですから、そのプロデュースの手腕は凄いです。
曲作りにはクインシーファミリーのロッド・テンパートン、グレン・バラード等が参加。収録された曲はどれもが魅力的な曲ばかりで、アルバムを通して聴いていても全く飽きが来ません。本作からの大ヒット曲はタイトル曲「Give Me the Night」。当時、お洒落な喫茶店などでよく流れてましたね〜。
そして、このクインシーのプロデュースの特徴は「ホーン・アレンジ」。切れ味の良い、以前のモダン・ジャズ時代とは一線を画する、今風の音の重ね方が格好いい「ホーン・アレンジ」がとても特徴的です。ジェリー・ヘイ、キム・ハッチクロフト、ラリー・ウイリアムスのシーウインド・ホーンズが大健闘。今の耳にも新鮮に響きます。
このアルバムは「唄って一流」の部分と「弾いて一流」の部分がほぼ半々で、実にジョージ・ベンソンというミュージシャンの個性を愛でる上で、非常にバランスの取れた内容になっています。後半に進めば進むほど、ギターのインストの割合が多くなり、ベンソンのギターの聴き応え満点です。
ブラコン・フュージョン・ジャズの傑作です。当時、フュージョン・ジャズというと、商業的な音楽に走ったキワモノ的なイメージを持たれて、硬派なジャズ者の方々からは敬遠されることが多かったのですが、あれから30余年、今の耳で聴くと、本当に良く出来た、本当に良く練られたアルバムだと感じます。音楽という芸術のひとつの成果だと思います。
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