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2015年7月 2日 (木曜日)

ストレートに淀みなく「鳴る」

日本のジャズ者の方々は、アート・ファーマーというトランペッターが大好きだ。日本でのアート・ファーマーの扱いは突出している。なぜか、日本で受けの良いトランペッターなのだ。しかし、実は僕にとって、このアート・ファーマーという人は、なんとも形容に困るトランペッターの一人なのだ。

アート・ファーマーのトランペットを聴けば判っていただけると思うんだが、歴代のテクニック中心のトランペッター、いわゆるリー・モーガンやフレディ・ハバードのようにバリバリ吹きまくるタイプでは無いし、そこまでのテクニックは持ち合わせてはいない。

と言って、テクニックについてはまずまずのレベルを保持しているのだが、マイルス・デイヴィスのようなクールさがある訳でも無いし、ケニー・ドーハムのような翳りや哀愁が漂う訳でも無い。なんというか、中肉中背では無いが、中庸中堅なトランペットと感じている。

が、アート・ファーマーのトランペットの音は、いかにもブラスの響き、トランペットの魅惑的な音色、ってな感じで、聴いていて惚れ惚れするプレイが多い。日本のジャズ者の方々は、このアート・ファーマーのトランペットの魅惑的な音色に感じ入って、アート・ファーマーというトランペッターを愛でるのでは無いか、と思っている。

例えば、このアルバムを聴くと、そのニュアンスを理解していただけるのでは無いかと思う。Art Farmer『Art』(写真左)。1960年9月の録音。ちなみにパーソネルは、Art Farmer (tp), Tommy Flanagan (p), Tommy Williams (b), Albert Heath (ds)。アート・ファーマーのトランペット、ワンホーンのカルテット構成である。

このアルバムは、ジャズ者初心者向けに推薦されることの多いアルバムではある。しかし、以前より、僕はその向きには疑問を感じている。このアルバムについては録音のバランスが極端に悪い。名盤請負人、名脇役と評されるトミー・フラナガンを中心とするリズム・セクションをバックに控えているのである。
 

Art_farmer_art

 
このバックのピアノ・トリオの演奏も内容が良い。だが、録音のバランスが極端に悪い。トランペットをメインに据えると、バックのリズム・セクションの音が小さく、しょぼくなる。バックのリズム・セクションをメインに据えると、トランペットの音が大きくなってうるさい。どうにもこうにも、もう一度、ミックスをし直して欲しい位の音のバランスの悪さなのだ。

ワン?ホーンのアート・ファーマーのソロの音とバックのリズム・セクションの音とのバランスが悪いので、アート・ファーマーのトランペットのソロに音のボリュームを合わせたら、バックのリズム・セクションの音がほとんど聴こえない。

ふと、トランペットのソロ・パフォーマンスを聴いている錯覚に囚われる。が、これが意外と聴き応えのあるソロ・パフォーマンスに聴こえるのだから、如何にアート・ファーマーのトランペットのソロが優れているか、トランペットの音が魅惑的なのかが判ろうというものだ。

このアルバムのファーマーのトランペットの音をジックリと聴き込めば、それが良く判るのだが、とにかくファーマーのトランペットは良く鳴っている。よく「ブラスの響き」というが、この「ブラスの響き」が十分に体感出来るほど、トランペットがよく鳴っている。しかも、素直にストレートに淀みなく「鳴る」。これは快感ですらあるほどだ。

この素直にストレートに淀みなく「鳴る」トランペットが、日本のジャズ者の方々の吟線に触れるのだろう。音を感じて、音を愛でるのに優れた民族である日本人ならではの感覚である。

以上の理由で、このアルバムは、ジャズというグループ・サウンズを楽しむにはちょっと辛い、録音バランスの悪いアルバムなので、ジャズ者初心者の方々には推薦しかねる。

この録音バランスの悪さを踏まえて、アート・ファーマーのトランペットの良さ、素直にストレートに淀みなく「鳴る」トランペットを愛でることの出来る、ジャズ者中堅からベテランの方々にお勧めの好盤だと僕は思う。

 
 

震災から4年3ヶ月。決して忘れない。まだ4年3ヶ月。常に関与し続ける。がんばろう東北、がんばろう関東。自分の出来ることから復興に協力し続ける。 

Never_giveup_4

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コメント

私もアートファーマーのアルバムの中では、マスターに同じくこの「アート」が一番好きです。^^特に1曲目(有名な映画音楽の割りにはほとんど他ではとりあげられませんよね)。

ところで、クラシック音楽の歴史をおよそ数百年、また、ジャズの歴史をおよそ100年、そしてロックの歴史をおよそ50年と考えますと、後に登場した音楽ほど先例があるので進化のスピードが速いことに改めて驚いてしまいます。

私の記憶では、1960年代当時の音楽シーンの中で「ロックは若者だけの音楽ではなく将来大人も楽しむ」と予測した人はほとんどいなかったように思います。

そして現在では、ある意味「産みの苦しみ」?という意味ではジャズやクラシックのミュージシャンよりはPOPSのほうが「オリジナル曲で勝負する」という意味において大変そうだなあ、、なんて思ったりもします。

最近読み返した「クリーム自伝」の中でも「いつも凄いアドリブを期待される」ことへのメンバーへのプレッシャーの凄さ、また「スローハンド~クラプトン」の言葉のまちがった解釈(運指がスローにみえる、からではなかった)、「毎回凄いアドリブなんて不可能」などの葛藤は改めて興味深いものがありました。

私はかつて、クリームの海賊ライブ盤に凝っていたことがあるのですが(笑)、どの曲もそのルーティーンは「ほぼ一緒」だ、と思いました。

私はまた、パーカーの「別テイクの羅列」をきいても「ルーティーンは一緒だなあ」としか理解できませんです。^_^;

演奏するたびに「天才的なメロディ」?がひらめくなら、むしろ「作曲家」として有名になっていたかも?ですね。^_^;(~o~)

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