偉大な存在へのオマージュ 『Wes Bound』
いろいろとジャズのアルバムを聴き続けているが、色んな硬派な純ジャズを聴き続ける中で、こういうアルバムに出会うと、なんだかホッとする。いわゆるフュージョン・ジャズでは無いんだが、フュージョン・ジャズ基調のメインストリーム・ジャズ。いわゆる「コンテンポラリーな純ジャズ」。
例えば、このLee Ritenour 『Wes Bound』(写真左)なぞ、そんな「コンテンポラリーな純ジャズ」な一枚。1993年の録音&リリースになるが、音の雰囲気はフュージョン・ジャズからスムース・ジャズなんだが、出てくるフレーズは、かなり「メインストリーム・ジャズ」している。
冒頭のタイトル曲「Wes Bound」を聴くと、まずは「これは、ウエス・モンゴメリー」と思う、が、バックの演奏を聴くと、これは「ウエス・モンゴメリーでは無い」と考え直す。バックの演奏が、思いっきりフュージョン・ジャズしているのだ。でも、フュージョン・ジャズとは言っても、傾向としては「メインストリーム・ジャズ」と言って良い位、硬派で純ジャズっぽい雰囲気を漂わせている。
リトナーのウエス風ジャズ・ギター、良い感じです。ジャズ・ギタリストにとって、ウエスは神様に近い存在。このアルバムの演奏を聴けば、リトナーも例に漏れず、ウエスの信奉者であり、ウエスを敬愛する「ウエス者」であることが良く判る。とにかく、ウエスを良く聴き、ウエスによく学び、ウエスを敬愛している。そんな雰囲気が本当に良く判る演奏だ。
ウエスの手になる曲も10曲中5曲を占め、ウエスの曲では、特にリトナーは喜々として、オクターブ奏法を駆使して、ウエス節を展開する。うっかり聴いていると、これってウエスのギターじゃないのか、と誤解するほど、リトナーのウエス節は堂に入っている。う〜ん、なるほど、リトナーはウエスが飛び切り好きなんやね〜。
バックのリズム・セクションは、ハービー・メイソンのドラムが思いっきり効いている。そこにボブ・ジェームスのキーボードが被って、ボブ・ジェームスが被るのだから、フュージョン・ジャズになってしまうのか、と思いきや、意外と「コンテンポラリーな純ジャズ」な響きに思わず感心する。ウエスにはやはり「コンテンポラリーな純ジャズ」なリズム・セクションだろう。
ジャケットも優秀。実に雰囲気のあるジャケットだ。1993年という時代を考えると、もはや純ジャズ的な雰囲気って、なかなかお耳にかかれなくなっていくんだろうなあ、とちょっと危惧していた時代なので、このアルバムとの出会いは嬉しかったし、ある確信を持った。
音の雰囲気はフュージョン・ジャズからスムース・ジャズなんだが、出てくるフレーズは、かなり「メインストリーム・ジャズ」という、新しい雰囲気を湛えた「コンテンポラリー・ジャズ盤」が、これからどんどん出てくると思った。1980年代中盤からの「純ジャズ復古」を切っ掛けにした、新しいジャズの進化の形態である。
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