欧州的フリージャズの思い出
暑い夏にフリージャズなんてとんでもない。確かにその意見には激しく合意します。でも、それはエアコンの効かない、若しくはエアコンの無い部屋や喫茶店での話で、意外と暑い夏に、エアコンのバッチリ効いた部屋、若しくは喫茶店で聴くフリージャズは「いける」。
今から35年ほど前、1980年から1981年の頃、暑い暑い大阪の夏に、エアコンのバッチリ効いた喫茶店で、結構、フリージャズを聴かせてもらった思い出がある。大阪駅前の駅前第3ビルの地下だったと思う。ジャズ喫茶では無いが、専らBGMがジャズな喫茶店があった。
最初は、待ち合わせの時間待ちに偶然入ったのだが、いきなりハービー・ハンコックの『モンスター』がかかった。うへ〜と感心して聴き入っていたら、次はオーネット・コールマンの『ジャズ来るべきもの』がかかった。うへ〜。
何度か通ううちに判ってきたのだが、この喫茶店のマスターはフリージャズ好き。結構、フリージャズのアルバムがかかる。ええんかいな。客、けーへんで、と真剣に思った。
特に暑い夏には、このフリージャズのかかる頻度が上がる。しかし、当時、新しいビルだった駅前第3ビル。エアコンはバッチリ効いている。しかもフリージャズは耳当たりが悪い。当然、喫茶店の客は僕一人。薄暗い店の中はマスターと給仕のお姉ちゃんと僕の3人。そこにガンガンにかかるフリージャズ。
このアルバムもこの喫茶店で聴かせて貰った。Anthony Braxton『Town Hall 1972』(写真左)。黒いジャケットにギロっと不気味に浮かぶ目。この怪しいジャケットだけでもこのアルバムは只者では無いと感じる。聴いてみると判る。コッテコテのフリージャズ。
ちなみにパーソネルは、Anthony Braxton (ss, as, cl,fl), Dave Holland (b), Phillip Wilson (ds), Barry Altschul (per), John Stubblefield (ts, fl, b-cl), Jeanne Lee (vo)。1972年5月、ニューヨークのタウンホールでのライブ録音。
リーダーのブラックストンはシカゴ生まれ。米国人でありながら、奏でるフリーなブロウは欧州の響き。ヨーロピアンな現代音楽の様な展開。バックのベースもドラムもフリーな展開。
リズム&ビートはかけらも無い。もはやこれは通常のジャズの範疇の音楽では無い。でも、限りなく自由な即興演奏はジャズである。ジャズ以外の何物でも無い。
ブラックストンのアルトはアブストラクト。キュッキュッと絞り上げるような金属音。フレーズ無きフレーズが断続的に続く。欧州の現代音楽的な響き。フレーズ無きアブストラクトな展開。これぞフリージャズという内容。
通常の音楽ファン、通常のジャズ者の方々には不向きな、硬派で完璧なフリー・ジャズ。繰り返しますが、普通のジャズ者の方はこのアルバムには無理して手を出さなくても良いです。
1981年の暑い大阪の夏。エアコンのバッチリ効いた喫茶店。鳴り響くブラックストンのアブストラクトなアルト。ブンブンと低音蠢くホランドのベース。ウイルソンの即興溢れるドラミング。思いっきりフリーなジャズ。
当然、お客は僕一人。でも、そこに鳴り響くフリージャズは極上の響き。本当に良い音していた。
震災から4年4ヶ月。決して忘れない。まだ4年4ヶ月。常に関与し続ける。がんばろう東北、がんばろう関東。自分の出来ることから復興に協力し続ける。
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学生時代にバイトしていた都内の某ジャズ喫茶でも、リクエストがない時にはマスターの指示でもっぱらフリージャズをかけていました。そのマスター曰く、「仕事で暗い中で1日中きいているならフリーのほうが刺激的で良い」とのことでした。笑
当時ジャズが好きになったばかりの私は「サキコロ」ほかの大名盤を大音量で聴きたかったので、客からのそうした定番リクエストを心待ちにしていたものでした。(~o~)
今でも「定型リズムのバックがない、集団即興演奏スタイル」?は読書のバックの効果音としてしか聞きませんが(^^ゞ、1度だけジャズ喫茶でフリージャズを無理やりガマンして集中して聴いていた時に「トリップ体験」?したことがあります。楽器の音が「人間の会話」のように聞こえたような気がしました。笑。もちろんシラフでした。(^^♪
個人的意見としましては「コレクティブインプロビゼーション(集団即興演奏」(=デキシー、ニューオリンズ、フリーなど)は「阿波踊り」に近いなあ・・(踊るあほうに見るあほう、同じあほなら踊らにゃソンソン)なんて思ったりもします。^_^;
アルバートアイラーの「ゴースト」はじめ、フリーのスタイルは、限りなくジャズの原点のスタイルに近いものがあるなあ・・なんてね。笑
投稿: おっちゃん | 2015年7月30日 (木曜日) 05時09分