ヒカシューの個性を振り返る
今年の7月の頭で「YMOを総括する時が来た」として、1970年代後半から1980年代前半にかけて流行った「テクノポップ」を振り返っている。
もちろんYMOの諸作、YMOファミリーの諸作は聴き直しの最中で、テクノポップと言ってしまえば、ターゲットとなるアーティストはYMOだけでは無いので、その周辺のバンドにも触手を伸ばしている。
1970年代後半から1980年代前半が流行のピークだったので、今から振り返ると45年前から35年前。現状、当時の音源がどこまで残っているかがポイントになる。LPで残っている場合が一番多いが、LPの音源を入手して聴き直しは意外と手間がかかって効率的では無い。という観点から、CDかダウンロード音源がターゲットになる。
今回、ヒカシューの音源を見つけた。ヒカシューとは、1978年にボーカルの巻上公一を中心に結成されたバンド。デビューから数年間のイメージから、ニューウェーブ・ロックやテクノポップ・バンドとして認知されている。僕達は学生時代、このヒカシューがお気に入りだった。
このヒカシューの個性を体感するなら、やはりデビュー盤の『ヒカシュー』(写真)だろう。近田春夫がプロデュースを担当し、当時「ROXY MUSICとPOP GROUPと宴会の演芸楽団を一緒にしたような新感覚派バンド」と評された。今から振り返れば「言い得て妙」である。
単にニューウェーブ系やテクノポップ系の音で終始していないところが面白い。今でもハッキリと思い出せるほど、このバンドの個性は際立っている。結成当初から演劇、フリーインプロヴィゼーション、民族音楽を取り入れたアプローチを続けていたというが、それも納得、演劇的アプローチや、フリーキーにブレイクするところなど、既成のロックとは一線を画するユニークな個性である。
サウンド自体がそれほど斬新な訳では無いし、テクニック的にも機材的にも突出している訳でも無い。しかし、出てくる音は、このヒカシューにしか出せない音世界なのだ。それぞれの曲をちょっと聴いただけでヒカシューの音と判るのだから、その個性は際立っている。
収録された曲は、一度聴いたら忘れられない個性的なものばかりだが、僕は「レトリックス&ロジックス」「モデル(クラフトワークのカバー)」「20世紀の終りに」「プヨプヨ」「雨のミュージアム」「幼虫の危機」あたりが、シュールでテクノでヒカシューっぽくてお気に入り。
「プヨプヨ」なんて5拍子の曲なんだが、5拍子を刻む拍子割りが無い状態で5拍子を刻んでいる。この辺の発想がヒカシューならではなのだ。
当時、それまでの歌謡曲やフォークソングに無い、新しい感覚のJポップは「ニューミュージック」と呼ばれたが、僕はこのヒカシューやYMOの音世界こそが「ニューミュージック」であり、ユーミンは決して「ニューミュージック」では無いと思ったのだが、今の耳で聴き直してみて、意外とこれは外れていないと感じている。
このデビューアルバム『ヒカシュー』に加えて、セカンド盤の『夏』、サード盤の『うわさの人類』と、遠く大学時代に聴き親しんだアルバム音源も手に入れた。テクノポップの聴き直し〜総括は、思ったよりも面白く興味深い。
震災から4年4ヶ月。決して忘れない。まだ4年4ヶ月。常に関与し続ける。がんばろう東北、がんばろう関東。自分の出来ることから復興に協力し続ける。
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