デジタル時代のボブ・ジェームス 『Foxie』
さすがはボブ・ジェームスである。1983年のこのアルバムを聴けば、デジタルな機材をコントロールし、デジタルな楽器を使いながら、アナログな雰囲気を再構築し、それでいて、デジタルな個性をしっかりと表出している。
ボブ・ジェームスの限りないセンスを感じる。他のミュージシャンは、ロック、ジャズを問わず、アナログからデジタルへの移行に苦しんでいる。デジタルに手を染めて、ポシャっちゃったミュージシャンも数知れず。
特にキーボードは難しい。例えば、アナログ・シンセサイザーとデジタル・シンセサイザーでは音が全く違うし、アタックのタイミングも全く違う。音の太さも違う、響きも違う。アナログで培った個性が、デジタルでは全く輝かない。
さて、そんなボブ・ジェームスがデジタル機材をコントロールし、アナログ時代の個性を取り戻したアルバムが、Bob James『Foxie』(写真左)。1983年の作品。ジャケットが前作の「人骨のレントゲン写真」を使った驚きジャケから一変して「ポップかつセクシーなイメージ」に変わった。
この「ポップかつセクシーなイメージ」がこのアルバムの音世界を如実に表している。まず、冒頭の「Ludwig」が往年のボブ・ジェームスの雰囲気を再現している。この「Ludwig」とは、かの有名なベートーベン(Ludwig van Beethoven)のファーストネームから借用され、この「Ludwig」という曲は、様々なベートーベンの作品をコラージュして一曲に仕立て上げたもの。
イントロの「第9」の部分は判るんですがね〜(笑)。しかし、ボブ・ジェームスって、こういうクラシックの曲を素材として、フュージョン・ジャズに展開するのがとても上手い。アレンジの才が冴え渡る。そして、いつも感心するのだが、ボブ・ジェームスはシンセサイザーの扱いがとても上手い。
シンセサイザーを扱わせたら、恐らく、ジャズの世界でいくと、チック・コリア、ジョー・ザビヌルに比肩するレベルである、と睨んでいる。特に、シンセサイザーをポップに扱わせたら、恐らく、ジャズ界一ではないか。
この冒頭の「Ludwig」を聴くと、アナログ時代の往年のボブ・ジェームスが、デジタル時代に甦って来たことを強く感じる。以降、2曲目の「Calaban」以降、どの曲にも、アナログ時代からのボブ・ジェームスの音の個性と手癖の個性が「そこここ」に散りばめられている。
当時サントリーのCMで使用されたという6曲目の「マルコポーロ」は、今の耳で聴いても良い出来な楽曲。単に、ソフト&メロウなフュージョン・ジャズでは無い、時にハードな展開を見え隠れさせながら、独特の音世界の展開が楽しい。
CMで採用された曲だからといって、ゆめゆめ軽く聴くなかれ、である。さすが、ボブ・ジェームスは凡人では無かった。この1983 年リリースのアルバムを聴けば、その才能とセンスが只者で無いことが良く判る。
アナログからデジタルへの大変革にも耐え、ポジティブにイメージ・チェンジに成功。このアルバム以降、デジタルの世界の中で、ボブ・ジェームスの個性が様々な形態で展開されていく。
★震災から4年2ヶ月。決して忘れない。まだ4年2ヶ月。常に関与し続ける。がんばろう東北、がんばろう関東。自分の出来ることから復興に協力し続ける。
★Twitterで、松和のマスターが呟く。名称「松和のマスター」でつぶやいております。ユーザー名は「v_matsuwa」。「@v_matsuwa」で検索して下さい。
« 70年代のグリフィンをもう一丁 | トップページ | 阿川泰子のボーカルはお気に入り »
コメント