阿川泰子のボーカルはお気に入り
僕はジャズ・ボーカルについては「異端」である。ジャズ・ボーカルの基本と呼ばれる女性ボーカリストについては、あまり聴いた事が無い。どちらかと言えば、純ジャズなボーカルというよりは、フュージョン・ジャズっぽい、異種格闘技的なボーカル盤を良く聴く。
僕が大学時代、ジャズ者初心者駆け出しの頃、良く聴いたジャズ・女性ボーカルのアルバムの一枚がこれ。Yasuko Love-Bird(阿川泰子)『Journey』(写真)。1980年のリリース。阿川泰子4枚目のリーダー盤。バックのメンバーは全て純国産。日本人オンリーの優れ盤である。
阿川泰子は女優としてデビューしたが、1978年よりスタートしたジャズ・シンガーとしての活動が大受けし、その大人の女性を感じさせるルックスと共に大人気を博した。当時、大学生の僕達にとっては、歳上の美しいおねーさんである。
しかし、僕がこの阿川泰子のボーカル盤がヘビロテになったのは、ルックスとかの影響では無い。この盤、聴けば判るのだが、バックの演奏のアレンジがとても面白い。基本はエレクトリック・ジャズからフュージョン・ジャズ。それもシンセなどを大々的に取り入れた、ジャズと言うよりはロック寄りの大胆なアレンジ。
そんな尖った、ロックでフュージョンな演奏をバックに、阿川泰子は朗々と歌いまくる。いつもこのアルバムを聴いて思うのだが、阿川泰子は歌が上手い。このアルバム、収録曲は全て誰もが知っている、有名なジャズ・スタンダード曲。それぞれの曲の曲想をイメージしつつ、様々な歌い方で聴き手に迫る。意外と攻撃的なボーカルである。
そして、阿川泰子のボーカルにはファンクネスは無縁である。正統なジャズ・ボーカルにありがちな、ファンキーに粘るところが全く無い。歌いこなしで巻くことがあるが、この「巻き」もサラッとしていて癖が無い。聴いていて、耳に当たることが無い。
このサラッとした、ファンクネスに無縁でありながらジャジーなボーカルが阿川泰子の個性である。この「ファンクネスに無縁でありながらジャジーなボーカル」というところが、バックのジャズと言うよりはロック寄りの大胆なアレンジに実に合うのだ。
例えば、2曲目の「Take The "A" Train」を聴けば、このアルバムの面白さが良く判る。冒頭シンセがウネウネして「なんだなんだ」と思っていたら、いきなり「A列車で行こう」がブワーッと始まる。これ実に良い。硬派な正統派ボーカル命のジャズ者の方々は怒り心頭なのだろうが、僕はこの「A列車で行こう」はアリである。
ブラジリアン風アレンジの「Moonlight Serenade」もニンマリの一曲だし、ソフト&メロウなアレンジで迫る、どスタンダードな「Whisper Not」も洒落ていて良い。ラストの「Good-Bye」も素直でしみじみとしていて実に良い雰囲気だ。
改めて言っておくが、このアルバムは、正統派のジャズ・ボーカル盤では絶対に無い。でも、僕はこのアルバムの音世界が、阿川泰子のボーカルが大好きだ。1980年のフュージョン・ブームに乗っかった、調子に乗った「企画モノ」とゆめゆめ思うなかれ。「ファンクネスに無縁でありながらジャジーなボーカル」は意外と癖になる。
震災から4年2ヶ月。決して忘れない。まだ4年2ヶ月。常に関与し続ける。がんばろう東北、がんばろう関東。自分の出来ることから復興に協力し続ける。
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jジャズヴォーカルは実に不思議なジャンルだなあ、と今でも思っています。
近年では「習い事」感覚で「趣味はジャズヴォーカルです」という方も多く、またそんな方でも「一生の記念に!」なんて感覚で簡単に自分のCDがつくれてしまいますね。
そしてインデペンデントでも手売りで数百枚くらいは売ってしまうので、まあ数百万もかければいっぱしの堂々デビューができることもあり、ますますよーわからん世界?のようにも思えます。^_^;
どうせインディーズで勝負するならせめて独自の選曲で勝負すればいいのに「お稽古で必死に習った1001からのスタンダード」ばかりをとりあげたのではボロが丸ミエで「恥の上塗り」でんがなっ!?とかおもって、もののあわれさえ感じて切ないです。笑
阿川さんはまったく興味がありませんでした。自分の偏見もあります。あまりに「ツクラレモノ」「売るためにジャズを利用した」と感じていました。^_^;^_^;
たとえば演歌歌手のすごさは「大アップにさえ最後まで耐える」ほどの見事なショーマンぶりでもありますが、昔からジャズやクラシックの映像が売れないのは、パーカーなどのドキュメンタリとしての興味対象以外は「終始ムッツリ顔のおっちゃん」の顔のアップが多いジャズやクラシックは何度も見れないからだと思っています。
その点阿川さんは「演歌風ショウマンシップ」は見事でしたね。^^
投稿: おっちゃん | 2015年6月 5日 (金曜日) 14時25分