基準となるジャズ・ピアノの技術
先日、10日(日)のブログで、「ジャズ・ピアノのスタイルの基本」と題して、Bud Powell『Jazz Giant』をご紹介した。様々なジャズ・ピアノを聴き進めていって、基本に戻りたくなる時、この『Jazz Giant』を必ず聴く。
そして、もう一枚のバド・パウエルは、ジャズ・ピアノのテクニックの基準。ジャズ・ピアノのテクニックはいかばかりか、との問いにはこのアルバムをもって応える。Bud Powell『The Genius Of Bud Powell』(写真左)。
パウエルのキャリアの初期(1950〜1951年)に行なわれた2回のセッションを1枚にまとめたものではあるが、その構成は以下の通り。
1)tracks 1-4 = July 1, 1950, New York
パーソネルは、Bud Powell (p), Ray Brown (b), Buddy Rich (ds)
2)tracks 5-12 = February 1951, New York
パーソネルは、Bud Powell (p) solo
1)については、LPの収録曲にはあるまじきこと、「Tea for Two」の3連発。同じ曲の異なるテイクが3連続で入っている。通常のアルバムではおおよそ考え難い。しかし、これがこのアルバムを聴けば納得する。
同一曲3連発であるが、それぞれの演奏での表現が異なる。同じ曲でも優れたテクニックにかかれば、違った表現が可能になるのだ。しかし、その優れたテクニックのレベルは、選ばれた者だけが手にする「途方も無いテクニック」である。その「途方も無いテクニック」が広くて深い歌心を伴い、具体的な音となって、このアルバムに詰まっている。
4曲目の「Hallelujah!」のテクニックは常識を超えている。譜面に書かれた曲を何度も何度も練習して、本番に臨んでいるのでは無い。テーマだけがあって、アドリブ・フレーズの展開は全くの「一発勝負」。頭の中に閃いたフレーズを指に伝えて、鍵盤を叩く。ジャズは即興の音楽。その言葉を思い出す。
バックのベースのレイ・ブラウン、ドラムのバディ・リッチともに、この鬼気迫るバドのアドリブについていくのが精一杯。青息吐息で、バドのアドリブ・フレーズに追従する。
5曲目以降は、もはやベースとドラムは必要がない。バド・パウエルのソロ・ピアノ8連発である。これも当時、通常のアルバムではおおよそ考え難い。ジャズでは、当時、まだまだ市民権を得ていない「ソロ・ピアノ」である。それでも、これがこのアルバムを聴けば納得する。
バド・パウエルのテクニックを愛でるには、ベースとドラムは必要無い。バドのピアノがあれば良い。いや〜、胸の空くような、青空の中、太陽の光を浴びながら飛翔する様なアドリブ・フレーズ。どこまでも高く高く飛ぶような驚愕のテクニック。あまりにフレーズが速すぎて、指がもつれそうな雰囲気になるが、バドは絶対にそうはならない。
このアルバムは、ジャズ・ピアノのテクニックの基準である。ジャズ・ピアノにおける「優れたテクニック」とは何か。このアルバムを聴けばたちどころにそれが理解出来る。このアルバムに詰まっているテクニックは凄い。思わず笑いがこみ上げて来るハイ・テクニック、そして併せ持つ「歌心」。これだから、ジャズを聴くのは止められない。
震災から4年2ヶ月。決して忘れない。まだ4年2ヶ月。常に関与し続ける。がんばろう東北、がんばろう関東。自分の出来ることから復興に協力し続ける。
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