ドルフィーの初リーダー作です
ジャズ・ミュージシャンの命は「個性」というが、この人ほど、その言葉を実感出来るミュージシャンはいない。そのミュージシャンとは、エリック・ドルフィー(Eric Dolphy)。
エリック・ドルフィーはアルト・サックス奏者。この人の吹くフレーズは、一聴すればすぐに「これは変だ」と感じるはずだ。この「これは変だ」は、ジャズ者初心者の方々のみならず、音楽を趣味で聴く人ならば感じるはず。それだけ、このドルフィーの吹くアルトは「並外れた」個性の塊である。
彼の吹き綴るフレーズは「でたらめ」では無い。どこか調子外れで、変に音程を上げ下げしたり、変なドロドロした旋律をなぞったり、クラシック音楽の耳で聴くと、これは「でたらめ」に聴こえても不思議では無い。
しかし、ちゃんと法則や決め事があって、その法則や決め事に従って、調子を外したり、音程を上げ下げしたり、ドロドロとして旋律を展開しているのだ。伝統的な技法をきちんと押さえつつ、どこまで自由にアドリブ・フレーズを展開出来るのか。ドルフィーは、その一点にかけていたジャズメンである。
そういう点を抑えると、エリック・ドルフィーはフリー・ジャズの範疇に入るジャズメンでは無い。あくまで、伝統的なジャズを基本にした「個性」である。
そんなドルフィーを実感できるアルバムは、やはり初リーダー作に遡るのが基本かと思う。ドルフィーの初リーダー作は、Eric Dolphy『Outward Bound』(写真左)。このアルバムを聴けば、いかにドルフィーの個性が、他の追従を許さない、途方も無く尖った個性であることが良く判る。
1960年4月1日の録音。ちなみにパーソネルは、Eric Dolphy (fl, b-cl, as), Freddie Hubbard (tp), Jaki Byard (p), George Tucker (b), Roy Haynes (ds)。なるほど、ドルフィーの尖った個性にしっかりと追従出来る、ハイ・テクニックの持ち主で、新しい感覚のアドリブが展開出来る、当時の若手から中堅のジャズメンを厳選している。そういうところも、ドルフィーらしいところである。
冒頭の「G.W.」を聴けば、ドルフィーの吹くフレーズが、いかに個性的なのかが良く判る。しかし、その個性がとりわけ実感できるのが、ジャズ・スタンダード曲を素材にした演奏だろう。
例えば、2曲目の「On Green Dolphin Street」などがその好例。もともと、半音を効果的に配した、ちょっとエキゾチックな雰囲気が特徴のこのスタンダード曲が、ドルフィーの手にかかると、更にその曲の個性が増幅され、ドルフィーの個性が浮かび上がる。素材曲の個性と演奏家の個性との相乗効果である。
5曲目の「Glad To Be Unhappy」と、6曲目の「Miss Toni」などのスタンダード曲でも、ドルフィーの個性は突出する。他のアルト・サックス奏者が吹くスタンダードとドルフィーが吹くスタンダード、解釈も違えば、吹き上げるフレーズも全く異なる。というか、ドルフィーの「個性」だけが如何に突出しているものであるかが良く理解出来る。
このアルバムがリリースされた当時、この突出した個性が如何に突出していたものであったかは、このアルバムのジャケット・デザインを見れば良く判る。このジャケット・デザインは秀逸である。ドルフィーの他の追従を許さない、途方も無く尖った個性のイメージを上手く表現している。
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ドルフィー節すきです。^^
何事につけ、自分だけのスタイルを持つ人はとても魅力的ですね。
最近思うのですが「フュージョン」「クロスオーバー」といえば「融合」であるからして決して1つのスタイルではないはずだと思うのですが、歴史を重ねた現在では誰もが「フュージョンフレーズ」といえばなんとなくそのスタイルを想起できることが不思議といえば不思議です。笑
私論ですが、本当の意味で「融合」という独自のスタイルで「これがフュージョンだ」?というひとつの答えを示したアルバムといえば
マイルスの「ザマンウィズザホーン」ではなかったか?と思っています。
「俺はジャズのペットを吹く。ドラムとベースはファンクのまま、ギターは
ハードロックのままでいけ」とのコンセプトで見事独自のスタイル・答えをみせてくれたような気がします。
ロックのクリームの手本はあのエバンス~ラファロ(特にベース)ではなかったか?と私は勝手に想像していますがw、はたして「いわゆるフュージョンギタースタイル」?の元祖は誰でしょうかねえ?
投稿: おっちゃん | 2015年5月 9日 (土曜日) 11時34分