両手タッピング奏法を引っさげて
「タッピング奏法」というギターの奏法がある。指板上の弦を指で叩き付けて押弦したり、そのまま横に弾いたりして音を出す奏法である(Wikipedia参照)。今では、YouTubeなどがあるので、動画で見れば、この奏法は一目瞭然なのだが、動画が簡単に見れない時代、この奏法を理解するには時間がかかった。
Stanley Jordan(スタンリー・ジョーダン)というジャズ・ギタリストがいる。このスタンリー・ジョーダンが、両手タッピング奏法を引っさげて、デビューした。1985年のことである。1980年代といえば「MTV」の時代。僕はこのスタンリー・ジョーダンを深夜テレビの映像で初めて見た。
僕はと言えば、遅い晩飯を摂りながら聴き耳を立てていた。最初は「何が新しいんだ」と思った。でも、聴いていると、どうもギターの音が今までとは違う。繊細ではあるが、かなり複雑に和音と単音が交錯し、ユニゾン&ハーモニーを奏でる。最初は多重録音かと思った。でも、映像はスタンリー・ジョーダン一人のパフォーマンスを延々と写している。
1分ほどして、左手の動きがおかしい。左手の動きが、それまでに見たことの無い動きをする時に、今までとは違ったギターの音色がするのだ、と言うことに気付く。なんやこの奏法は。その後、スイング・ジャーナルでそのギタリストの名前がスタンリー・ジョーダンと言い、この不思議な音色を奏でる奏法は「両手タッピング奏法」だということを知った。
ただ、両手タッピングという奏法自体は古くから存在していたらしく、スタンリー・ジョーダンはこの奏法を再発見し、デビュー盤での目玉とした。そのデビュー盤とは、Stanley Jordan『Magic Touch』(写真左)である。1985年のリリース。新生ブルーノート・レーベルからの第一弾リリース。
この「タッピング奏法」のデビューはセンセーショナルだった。LPで聴く限り、繊細ではあるが、かなり複雑に和音と単音が交錯し、ユニゾン&ハーモニーを奏でる部分がこういう響きになるのかが判らない。今までのジャズ・ギターの音色とは異なり、とても新鮮に感じる。
それは、有名な曲を演奏する時、より感じることが出来る。冒頭のレノン=マッカートニーの「Eleanor Rigby」、2曲目の「Freddie Freeloader」、そして3曲目の「Round Midnight」、この3曲を聴けば、この「両手タッピング奏法」の特徴がより良く理解出来るのではないか。確かに、それまでのジャズ・ギターに無い、新しい響きを感じる。
スタンリー・ジョーダンは、通常のギター奏法についても非凡なものがあり、両手タッピング奏法に拘らなくても、通常のギターだけでも、ジャズ・ギターの新人の登場として期待を持って聴かれるべき内容については、もっと評価されても良いかと思う。
そのスタンリー・ジョーダンも、1959年7月の生まれなので、今年で56歳になるのか。僕と同じ世代なので、彼のデビュー以来、彼の活動については、ずっと気にしてはいる。まだまだ現役の由、心強い限りである。
震災から4年2ヶ月。決して忘れない。まだ4年2ヶ月。常に関与し続ける。がんばろう東北、がんばろう関東。自分の出来ることから復興に協力し続ける。
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