チェンバーズのハードバップ良盤
ハードバップ時代、リーダー作を録音する際、演奏者の誰もが共演を望んだベーシストと言えば、ポール・チェンバースである。とにかく、ハードバップの名盤と呼ばれるアルバムというアルバムには必ずと言っていいほど、ベーシストの欄に名を連ねている。
しかも、かのマイルス・ディヴィスのレギュラーバンドのベーシストにも抜擢され、ハードバップ時代のベーシストといえば「ポール・チェンバース」 という図式が出来上がっているほど、凄いベーシストなのだ。
リーダーとしてのプロデュース力に優れるのだろう、このチェンバースのリーダー作についても優れた盤が多い。例えば、Paul Chambers『Go!』(写真左)なんか、その代表例の一枚。1959年2月の録音になる。ちなみにパーソネルは、Julian 'Cannonball' Adderley (as), Paul Chambers (b), Philly Joe Jones, Jimmy Cobb (ds), Wynton Kelly (p), Freddie Hubbard (tp)。
ハードバップ時代真っ只中のアルバム。こいつは良い。こいつは凄い。ハードバップを堪能したいのなら、このアルバムは外せない。目眩く、絵に描いたようなハードバップの世界 が繰り広げられるのだ。
パーソネルを見渡せば、ベースのチェンバースをはじめとして、アルトサックスがキャノンボール、 トランペットがハバード、ピアノがケリー、ドラムがフィリー・ジョー、と全く申し分ない。そして、絵に描いたようなハードバップな演奏を支え、鼓舞する様に、ポール・ チェンバースのウォーキング・ベースが炸裂する。ブンブン唸るようなウォーキング・ベースが堪能できる。
如何に、チェンバースのベースが非凡であったかは、それぞれの曲毎に、その曲想と雰囲気次第で、彼のウォーキングベースは表情をテンポを奏法を様々に変化させることからも良く判る。
しかも、 それが全く違和感なく、その演奏にとけ込み、ソロイストを際だたせるのだ。これはもう理屈の世界ではなく、天性のモノだと僕は思う。とにかく、チェンバースのベースは、演奏の中で際立つのだが、とても心地良いのだ。
ハードバップ全盛期に、チェンバースがサイドメンとして引っ張りだこだったということについて、このアルバムを聴けば納得。他のメンバーも気心知れてリラックスした雰囲気の中、馴れ合いにならずに適度なテンションを張りながら、それぞれの演奏をテクニックを披露していく。
とりわけ、ドラムのフィリー・ジョーが素晴らしい。やや荒々しいかなと思われる演奏の中に、豊かなテクニックに裏付けされた、繊細さを垣間見させるような柔軟なドラミングと堅実なリズムキープ、そして、ダイナミックな怒濤の様なドラムロール。彼の代表的名演のひとつと言っても良いのではないか。アルトのキャノンボールも、力強く「唄って」おり、ファンキーなフレーズの連発が聴いていて楽しい。
惜しむらくは、この盤の録音がちょっと、というところ。あまりにエコーをかけすぎていて、ダイナミックで切れ味の良いハードバップな演奏が緩く冗長に聴こえてしまうのだ。これは残念。もう少し、エコーを控えめにすれば、この盤、ハードバップ時代の絶対的名盤の一枚として君臨していたのではないか。
それでも、このアルバム・ジャケットを見れば、実に雰囲気があって、良きハードバップの時代を感じさせてくれる。録音はエコー過多だが、演奏は一流。良いアルバムです。
震災から4年2ヶ月。決して忘れない。まだ4年2ヶ月。常に関与し続ける。がんばろう東北、がんばろう関東。自分の出来ることから復興に協力し続ける。
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