『Bad Company』の遠い思い出
バッド・カンパニーというバンドがあった。ボーカルのポール・ロジャースとドラムスのサイモン・カーク(元フリー)、ギターのミック・ラルフス(元モット・ザ・フープル)、ベースのボズ・バレル(元キング・クリムゾン)の4人によって結成された、ブルース・ロックを基調とした、シンプルな英国ロック・バンドである。
日本ではまずシングル「キャント・ゲット・イナフ」が売れた。そして、ファースト・アルバム『バッド・カンパニー(Bad Company)』(写真左)がリリースされた。1974年夏のことである。このアルバムも、当時の日本ではヒットの部類に入る、ヒットチャート最高位24位にチャート・イン。
この英国ロックの名作がリリース40周年を記念して、デラックス・エディション化された。特にリマスターの具合が良く、アルバム自体の音が劇的に改善されている。CDのフォーマットとしては最上のものだろう。もともと、内容の優れたファースト盤である。音のキレ、バランス、密度、スピード感、いずれをとっても申し分無い。
さて、このファースト盤『Bad Company』が我が映研に持ち込まれたのは高校2年の頃、1975年の初夏のちょうど今頃、5月の終わりか6月上旬だったと記憶している。かの映研女子が持ち込んだ。部室に入った時には、既にSide Twoの1曲目「Bad Company」が鳴り響いていたことを覚えている。
1年遅れではあるが、この『Bad Company』は映研でもヒットした。ヒットしたんだが、部室に行く毎日毎日この『Bad Company』がかかっている。というか、かかり過ぎだ。3週間も続けて部室に入ると『Bad Company』が流れている。これには閉口した。
どうも一年生男子どもが入れ替わり立ち替わり、この『Bad Company』をかけて聴き耳を立てているらしい。こいつらそんなに英国ロックが好きだったけ。というより、まだ高校生になって2ヶ月。英国ロックとは何たるか、なんてまだ全く理解していないはず。
おかしいなあ、と思いつつ、その理由を訊いた。一年生男子WとYが深刻な顔をして答えた。「このアルバムを理解出来ないと、英国ロックは理解出来ないんです」。「はぁ?」。つまりは、英国ロックを理解したいが為に、毎日毎日『Bad Company』を聴いているとのことである。
一年生男子WとYが続ける。「でも、ロック・ミュージシャンにとって大切なことも教えて貰いました」。「教えて貰った?」。「ボーカルのポール・ロジャースは英国ロックで最高のボーカリストで、奥さんが日本人なんです。つまり、優れたロック・ミュージシャンは奥さんが日本人なんです」。「はぁ?」。
一体誰だ、そんな変なことを教えたのは・・・。確かに、当時、ポール・ロジャースの奥さんは日本人のマチさんだったが、他の優れたロック・ミュージシャンの奥さんは日本人だったかなあ。少なくとも、ジョン・レノンの奥さんは日本人のヨーコさんだったけど、他は思い当たらない。
どうも、かの映研女子Uの仕業らしかった。かの映研女子Uいわく「そんな変なこと教えてへんって。ポール・ロジャースのボーカルは最高やろ、彼の奥さんは日本人なんやで、とは言ったけど」。「でも『Bad Company』の良さが判らんようやったらアカンね、とは言ったなあ」。
なるほど。当時、一年生男子どもに、一年上のお姉さんとして一目置かれていた映研女子Uの発言力には絶大なものがあった。ロックについては映研に入って洗礼を浴びてまだ2ヶ月。カルガモの子供と一緒で、最初に教えられたことが「絶対」になる。英国ロックと優れたロック・ミュージシャンの条件については、かの映研女子Uの発言が一年生男子どもには「絶対」となった訳。
罪作りなことするなあ。部長の僕がそれは違うと教え直しても、一年生男子どもはなかなか納得しない。一年上のお姉さんとして一目置かれていた映研女子Uの発言力は絶大である。あこがれのお姉さん先輩の言うことは「絶対」なのだ。「あこがれ」かあ、高校時代の誤解と思い込みほど厄介なものは無い。一年生男子どもが『Bad Company』の良さを語ることが出来るまで、『Bad Company』は映研の部室で響き続けた(笑)。
この今回の『Bad Company』のリマスター盤を聴きながら、このエピソードを突如思い出した。リマスター優秀の優れた音は忘れた思い出を想起させてくれる。青春時代の誤解と思い込みほど厄介なものは無い。ゆめゆめ後輩にいきなり変なことを教えてはいけない。遠い昔、高校時代の教訓である(笑)。
震災から4年2ヶ月。決して忘れない。まだ4年2ヶ月。常に関与し続ける。がんばろう東北、がんばろう関東。自分の出来ることから復興に協力し続ける。
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嘘やん〜〜、そんな、可愛い後輩のWくんとYくんにそんなこと言うたなんて、いや、絶対何かの間違いや(゚o゚;;
Bad Company は好きやったし、奥様が日本人やったことは誇りに思ったのは事実やけど…
うぅん、おかしいなぁ、そんなひどいこと、したぁなぁ(ーー;)
投稿: ひとんちゃんぅぅぅ | 2015年5月31日 (日曜日) 20時02分
『Bad Company』の4曲目「Don't Let Me Down」に差し掛かったところで、そう言えば、と突如、思い出しました(^_^)v。
Bad Companyについては、確かに映研男子後輩WとYに対して、熱く語っていましたよ〜。そんな内容とは知りませんでしたが(笑)。
特にこの2人については、かの映研女子による教育が行き届いていたのか、様々な方面に「ボーカルのポール・ロジャースは英国ロックで最高のボーカリストで、奥さんが日本人なんです。つまり、優れたロック・ミュージシャンは奥さんが日本人なんです」と触れ歩いておりました。先輩のNさんとMuさんなどはこの説を聞いてひっくり返っておりました。本当に忠実な後輩達でございました(笑)。
投稿: 松和のマスター | 2015年5月31日 (日曜日) 23時39分