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2015年4月26日 (日曜日)

「判ればええんや」の最高傑作

高校時代、僕は「アンチ・ビートルズ」だった。高校一年の夏、映研の合宿で、当時、最先端のプログレッシブ・ロックとハード・ロックの洗礼を浴びて以来、最早、過去のロック・グループを聴く事も無い、と確信を持ったこともある。

しかし、一番の理由は、ビートルズのアルバムは、ロック小僧が好きになった女の子と「お近づき」になる、一番手っ取り早いツールだったことにある。ロックが市民権を得て、高校生の間でもちょくちょく聴かれるようになった時代である。お気に入りの女の子が、ちょっとでもロックに興味があるとすると、持ち出すのが「ビートルズ」。

音楽が好きな女の子であれば、さすがに「ビートルズ」は知っている。ロック小僧が好きになる女の子は、基本的に音楽が好きな子である。よって、「お近づき」になるために、ロック小僧は決まって「ビートルズ」のアルバムをネタにアプローチすることになる。ロック小僧ばかりでは無い。普通の洒落た男子も「ビートルズ」なのだ。これにはどうにも腹が立つ。

とにかく、ロックと言えば、普通の高校生は「ビートルズ」。ビートルズを知っていたら「いかした格好良い男子」的に見られていた訳だから、どうにも気に入らない。ピンク・フロイドやEL&P、キング・クリムゾン、レッド・ツェッペリンを聴いている男子は「ちょっと危ない子」としてマークされていた。

ちなみに、中学時代から深夜放送に親しんで来たこともあって、ロックのシングルの世界には結構通じていたし、テレコのお陰で、エアチェック中心に、ビートルズやアフター・ビートルスのアルバムにも、ある程度、精通していた。それでも、前述のような背景もあって、高校1年生の頃、ビートルズの諸作、アフター・ビートルズの諸々のソロ盤は一切聴かなかった。

そこで、1975年の初夏(6月後半だったと記憶している)、映研でのポール談義に遡る。当時の僕のポール評は「シングル盤レベルについては、希有のメロディー・メーカーではあるが、アルバム単位になると、曲単位でバラツキが出る」。しかし、ここで、とある映研女子が大反論。あれこれ議論した挙げ句、このアルバムを放ってよこされた。Paul McCartney & Wings『Venus And Mars』(写真左)である。
 

Venus_and_mars

 
つまり「このアルバムを聴いてから言え」ということである。で、即、その夜、聴いた。カセットにダビングしながら、3回繰り返して聴いた。う〜ん、このアルバムは実に良い。ポールのアルバムとしては、当時、最新作。1975年5月にリリースされたばかり。聴いたことが無かった訳である。

この『Venus And Mars』については、あらゆるメディアで様々な人々、様々な切り口で語られており、ここではアルバム評の詳細は割愛する。一言で言うと、収録された全ての曲について「出来が良い」。どの曲についても、ポールの才能が満ちあふれている。僕は、この『Venus And Mars』がポールのアルバムの中で、一番、アルバムとしてまとまっていて、優れた内容のトータルアルバムだと思っている。

いやいや、この新作アルバムは凄いな〜、と感じ入りながら、翌日、映研の部室で、とある映研女子にその感動を告げると、一言「判ればええんや」と言い放って、『Venus And Mars』を大事そうに抱えながら去って行った。「判ればええんや」って、何がええんやろう、と思いながら、その後ろ姿を見送ったことを昨日のことの様に覚えている。

それからである。僕の高校一年からの信念「ビートルズの諸作、アフター・ビートルズの諸々のソロ盤は一切聴かない」、を曲げなければならなくなったのは。『Venus And Mars』談義の翌週、今度は『Band on the Run』を持ってきて、「これは聴いたことがあるのか」と問われ、聴いたことが無いというと、「とにかく聴け」とアルバムを部長席に叩き付けて、これまた颯爽と部室を後にした。

僕の「アンチ・ビートルズ」の信念は、『Venus And Mars』のお陰で一瞬のうちに崩壊した。それほど、この『Venus And Mars』のトータル・アルバムとしての出来は良い。ポールの最高傑作であろう。ヒプノシスのジャケットもお洒落で最高である。

 
 

震災から4年1ヶ月。決して忘れない。まだ4年1ヶ月。常に関与し続ける。がんばろう東北、がんばろう関東。自分の出来ることから復興に協力し続ける。 

Never_giveup_4

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コメント

高校時代、ビートルズをネタに言い寄られたことが一度もない、ビートルズファンです。そんな不埒なことにビートルズが利用されていたことも憤慨ですな(♯`∧´)
 
しかし、なぜその時にヴィーナス&マーズを学校に持って行ってたかが、一番の不思議です…。ま、それでマスターの偏見がとけたってことで*\(^o^)/*

こんばんは、ようこそ、ひとんちゃん。
 
そりゃあそうでしょう。ひとんちゃんにビートルズをネタに言い寄って、見当違いなこと言ったら「切られる」からね。ビートルズのネタ話になった時の目つきは「変なこと言うたら切るで」。妖気漂い、結構怖かったからなあ(笑)。
 
「なぜその時に『ヴィーナス&マーズ』を学校に持って行ってたか」って、確かに不思議ですね〜。意外と当時の映研は「ビートルズもの」は御法度でしたからね。この『ヴィーナス&マーズ』が当時の映研に持ち込まれた、初めての「ビートルズもの」です。「何を持ってきたんや」。先輩達を含め、映研の部室にピリビリと緊張が走ったのを生々しく思い出しました。
 

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