ジャズ喫茶で流したい・62
長年、ジャズを聴いてきて、ジャズのアルバムの聴き方には大きく分けて2つあると思っている。突出して優れた奏者のパフォーマンスをピンポイントで追求する聴き方がひとつ。そして、奏者を限定せずに、アルバムの演奏全体の雰囲気を堪能する聴き方がひとつ。大きく分けて二つの聴き方がある。
日本では圧倒的に前者の聴き方が多い様に感じる。ジャズの演奏全体の雰囲気を語る前に、誰のペットが凄いの、彼のテナーが凄いの、演奏全体の雰囲気を愛でる前に、奏者のテクニックを中心に、そのアルバムを語る評論が実に多い。
まあ、そういう聴き方もひとつではある。しかし、その弊害は、同じ楽器奏者同士を比較し始めて、誰が一番凄いか、誰が一番優れているか、を中心に論じる傾向に陥るところにある。プロの奏者同士がそういう比較論を語るのはまだ良いとして、素人がプロの奏者のテクニックや個性を、主観的に評価して論じるのはいかがなものか、と思う。
つまりは、突出して優れた奏者のパフォーマンスをピンポイントで追求する聴き方は、どうしてもジャズに対する視野が狭くなるという弊害に気を付けなければならない、ということ。つまりは、突出して優れた奏者のパフォーマンスをピンポイントで追求する聴き方と併せて、アルバムの演奏全体の雰囲気を堪能する聴き方を織り交ぜる聴き方が、一番、バランスが取れて良いだろう。
ジャズには、そんなバランスを取れたアルバムの聴き方がズバリはまるアルバムが多くある。そんなアルバムの一枚がこれ。ブルーノートの1565番『Cliff Jordan』(写真左)。1957年6月の録音。ちなみにパーソネルは、Cliff Jordan (ts), Lee Morgan (tp), Curtis Fuller (tb), John Jenkins (as), Ray Bryant (p), Paul Chambers (b), Art Taylor (ds)。
ええ〜っと、奏者は全部で7人。セプテット構成である。フロントを張る楽器が、リーダーのクリフ・ジョーダンのテナー、リー・モーガンのトランペット、カーティス・フラーのトロンボーン、ジョン・ジェンキンスのアルトの4管構成。いやいや〜、4管構成のハードバップなんてなかなかありませんぜ。
リズム・セクションは、レイ・ブライアントのピアノ、ポール・チェンバースのベース、アート・テイラーのドラム、のお馴染み、ピアノ・トリオ構成のリズム・セクション。しかし、マニア的に言うと、ブルーノートにレイ・ブライアントが参加しているのが、とても珍しい。というか、さすがブルーノート、若き日のレイ・ブライアントを記録に残しているのだ。
さすがに7人編成である。突出して優れた奏者のパフォーマンスをピンポイントで追求することは出来ない。なぜなら、7人とも優れた奏者であるからだ。そんな7人がしっかりリハーサルを積み、7人全員、水準以上の優れた演奏を展開する。甲乙付けがたい。そうなれば、アルバムの演奏全体の雰囲気を堪能するに限る。そう、このアルバムは、アルバムの演奏全体の雰囲気を堪能できる好盤なのだ。
冒頭の「Not Guilty」からラストの「Ju-Ba」まで、収録されたどの曲もどの曲も、絵に描いた様なハードバップ。聴いていて、とにかく楽しく、とにかく魅力的なハードバップな演奏がぎっしり詰まっている。テクニックも素晴らしい。展開するフレーズの歌心も素晴らしい。
録音も良い。録音の響き、楽器のバランス、楽器の抜け具合、どれもがブルーノート・レーベル独特のもの。ルディ・バン・ゲルダーは謹製、アルフレッド・ライオンお墨付きのブルーノート・サウンドである。ほんと、このアルバムの音は、実にブルーノートらしい。
但し、ジャケット・デザインはブルノート・レーベルのアルバムらしからぬ、平凡なデザイン。これだけが残念。このジャケットの平凡さが、このアルバムを地味なものにしているのだろう。これだけ内容のあるアルバムにも拘わらず、ジャズ盤の紹介本などに、このブルーノートの1565番『Cliff Jordan』の名が挙がることは殆ど無い。
でも、内容的にはとっても良いアルバムです。ジャズ者初心者の方々にも、このアルバムはお勧め。ジャズ盤の紹介本などで全く目にすることの無いアルバムですが、買って手に入れて損は全く無い、実にブルーノートらしい好盤です。
震災から4年1ヶ月。決して忘れない。まだ4年1ヶ月。常に関与し続ける。がんばろう東北、がんばろう関東。自分の出来ることから復興に協力し続ける。
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