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2015年4月10日 (金曜日)

ジャズ喫茶で流したい・61

ブルーノート・レーベルのアルバムには、地味ではあるが、それはそれは素晴らしい純ジャズを展開している「隠れ名盤」というものが多く存在する。

不思議なことは、このブルーノートの「隠れ名盤」の存在を知らしめたのは、一般のジャズ者の方々だということ。ジャズ喫茶を中心に、そのブルーノートの「隠れ名盤」の存在を知らしめ、口コミで、その素晴らしさを伝承した。その情報を一握りの意識ある評論家の人達が文字に認め、世にその情報を発信した。

そもそもブルーノート・レーベルのアルバム自体、意外と日本には情報が不足していた。というか、今でも不足している。キャンペーンという名の下に雑誌などに情報が流布されても、恒常的にその情報が定期的に流れている訳では無い。つまり、欲しい時に、その情報が無い可能性がある、ということ。

よって、ブルーノートの「隠れ名盤」については、なかなかまとまった情報が無い。自分で聴いて判断していくしかないのである。ということで、最近、ブルーノートの1500番台を聴き返している。

そして、このアルバムと再会する。『Paul Chambers Quintet』である。ブルーノートの1564番。1957年5月の録音。ちなみにパーソネルは、Donald Byrd (tp), Clifford Jordan (ts), Tommy Flanagan (p), Paul Chambers (b), Elvin Jones (ds)。テナーのクリフォード・ジョーダンの存在がマニアの心をくすぐる。

このアルバムの存在は、ジャズ雑誌やジャズ本に紹介されることは無い。僕はブルーノートのRVGリマスターのリイシューが始まるまで、このアルバムの存在を全く知らなかった。ジャケットだって、なんだかパッとしない、平凡なデザインである。このアルバムが「隠れ名盤」なんて、聴くまで思いもしない。
 

Paul_chambers_quintet

 
しかし、聴くとまずは驚く。素晴らしいハードバップな内容である。そして、ブルーノート独特の響きと録音の個性が、かなり強烈にてんこ盛りである。このアルバムは、ブルーノートの独特の個性と魅力がギッシリ詰まったアルバムである。

参加しているミュージシャンも大活躍である。特に、ドナルド・バードのトランペットが、何時になく溌剌としてとても良い。こんなにポジティブに溌剌とペットを鳴らすドナルド・バードは珍しい。なるほど、このプレイを聴くと、ドナルド・バードは一流のジャズ・トランペッターだということが判る。

クリフォード・ジョーダンのテナーも良い。少し地味ではあるが、端正で正統派なアドリブ・ブレーズが良い。テナーを十分に鳴らし切っているテクニックも捨てがたい。フロントの二人、ドナルド・バードのトランペットとクリフォード・ジョーダンのテナーの溌剌としたブロウが、このアルバムを更に魅力あるものにしている。

そして、主役のベースのポール・チェンバースは、歌うようなソロの展開も良い。バックに回った時に、ウォーキング・ベースも端正で迫力があって良い。もしかしたら、ブルーノートのリーダー作の中で、ベーシストとして、一番優れたテクニックと歌心を表現しているのではないか、と思っている。それほど、このアルバムでのチェンバースのプレイは見事である。

聴き返してみて、このアルバムが、どうして、ジャズ雑誌やジャズ本に紹介されることが無いのか、理解に苦しむ。ジャケット・デザインが地味だからなのか、良く判らないが、明快に理解出来るのは、このアルバムは、ハードバップのアルバムの中で、意外と出色の出来なんだ、ということ。

良いアルバムです。ハードバップを感じ、ブルーノート独特の音の響きと録音の個性を感じるのに相応しい「隠れ名盤」です。ジャズ者初心者からジャズ者ベテランまで、幅広くお勧めの逸品です。
 
 
 
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Never_giveup_4

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