日本男子もここまで弾く・5
辛島文雄は、ドラマーのジャズ・ジャイアントの一人、エルビン・ジョーンズのバンドでレギュラー・ピアニストとして活躍した、実績のある我が国のトップ・ピアニストの一人である。しかし何故か、辛島文雄は日本のジャズ雑誌、ジャズ評論家からの受けが良くない。
1970年代、頭角を現し、確実な実績を挙げてきた辛島であるが、当時、ジャズのトレンドは「クロスオーバー&フュージョン」。電気楽器を活用したジャズが流行で、辛島が活躍していたメインストリーム・ジャズは過去のジャズとして片隅に追いやられていた。
そういう背景もあってか、辛島のピアノは完全に割を食っている。僕はジャズを聴き始めた1970年代後半から、辛島のピアノを聴いている。何故か、当時、FMで辛島のピアノをよく聴いた思い出があるのだ。スピーカーを介して流れて来た辛島のピアノには全く違和感を感じなかった。
辛島のピアノは、ジャズ・ピアノとして、オーソドックスなスタイルである。スタイルとしては、マッコイ・タイナーの流れを汲む個性で、タッチが明快でガンガン弾く。しかし、シーツ・オブ・サウンドほど音符の音は多く無い。間を活かしたタッチが明快で適度に雄弁なピアノ。これが辛島の個性である。
そんな辛島のピアノを十分に楽しめるアルバムがこれ。辛島文雄 & Elvin Jones『Moonflower』(写真左)。1978年4月の録音。ちなみにパーソネルは、辛島文雄 (p), Andy McCloud (b), Elvin Jones (ds)。タッチが明快でメリハリのある辛島のピアノは、ダイナミズム溢れるエルビンのドラムに負けていない。
アコースティック・ピアノに独特のエコーがかかっていて、アコピがエレピの様に聴こえるところに、ちょっと時代を感じるが、耳につく程では無い。こんなにエコーかけなくったってなあ、とちょっと思うくらい。辛島の明快なタッチと端正なフレーズが十分に印象に残る。聴き応えのある良いピアノだ。
ドラムのエルビンも良い仕事をしている。バッシバッシとダイナミズム溢れる、ポリリズミックなドラミングが素晴らしい。聴いていて、ああこれはエルビンのドラミングやなあ、とハッキリ判る個性。辛島のピアノとの相性はとても良い。エルビンのブラシは絶品だ。
そして、アンディ・マックロードのベースがなかなか良いんですよね。しっかりとトリオ演奏の底をしっかりと支えていて、破綻の無い端正で堅実なベースラインが魅力的です。ベース・ソロも聴き味の良いアドリブ・ラインが印象的でグッドです。
内容があって、聴き応えのあるピアノ・トリオ盤だと思います。ジャズ紹介本や雑誌のピアノ・トリオ特集などに、全くと言って良いほど名前の挙がらない辛島文雄。日本でほとんど採り上げられないのが実に不思議で実に不満です。
それでも、辛島のリーダー作は結構な枚数がリリースされていて、意外とジャズの本場、米国での評価の方が高そうですね。最近では、ダウンロードサイトで、辛島のリーダー作に触れる機会が多くなっていて、良い環境になりつつあります。一度、彼のピアノを聴いて欲しいですね。なかなか良いですよ。
震災から4年。決して忘れない。まだ4年。常に関与し続ける。がんばろう東北、がんばろう関東。自分の出来ることから復興に協力し続ける。
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