デジタル環境の中「復調の証」
時代は1980年代に入って、録音環境も録音機材もアナログからデジタルへとドラマチックに変化していく。この『Sign of the Times』では、そんなデジタルな世界での音作りに苦闘するボブ・ジェームスが見え隠れする。シンセサイザーもアナログからデジタルへ。音は洗練されてはいるが細くデリケートになる。
さて、次作のBob James『Hands Down』(写真左)ではどうなったのか。1982年のリリースになる。ボブ・ジェームス10作目のリーダー・アルバムなので指が10本のレントゲン写真。加えて、タッパンジー・レーベルを設立して、CBSに移籍後、7枚目のアルバムなので、指のレントゲン写真の上に薄っすら「7」の文字が浮かぶ。
パーソネルは大量になるので書かない。当時の名うてのフュージョン畑のミュージシャン総出といった風情のパーソネル。さすがは、フュージョン・ジャズの大御所ボブ・ジェームスである。曲によって、メンバーの構成をダイナミックに組み替えている。こんなことが出来るのは、一握りの超一流のミュージシャンに限られる。
さて、冒頭の「Spunky」、このブギーなフュージョン・ナンバーを聴けば、このアルバムでのボブ・ジェームスの好調さが良く判る。格好いいなあ。前作ぐらいから、シンセサイザーが目立つが、デジタル・シンセサイザーは音が細い。前作はそれが弱点だったんだが、今回の『Hands Down』ではその弱点もしっかりと克服されているところが凄い。
さすがはボブ・ジェームス、アレンジの妙で、デジタル・シンセの音の細さを克服して、クッキリとした音色として聴かせてくれる。これだけクッキリとした音色であれば問題無い。6曲目の「It's Only Me」などはシンセが演奏の中心で、テクノ・ポップなフュージョンという趣。シンセの音もデジタル臭さを克服しつつ、エッジの立った新しい時代のシンセ音を聴かせてくれる。
3曲目の「Shamboozie」も良い。ファンクネスが色濃く漂う、リズム&ビートが渦巻く、アーバン・フュージョン・チューンである。とにかくクールで爽快。ここでも、ボブ・ジェームスはフェンダー・ローズを上手く使って、デジタルチックな雰囲気を中和している。こういうアレンジはとにかく上手い。
このボブ・ジェームス10枚目のリーダー作『Hands Down』は、録音環境がデジタルに移行する中、ボブ・ジェームスがその卓越したアレンジ能力を発揮して、着実に復調していることを感じさせてくれる、なかなかの佳作だと思います。
ちなみに、ボートラが加わっている盤には、そのボートラに「Theme From "Star Trek"(スター・トレックのテーマ)」が入っている。スター・トレックにリアルタイムに接してきた僕達の世代にとっては、これがまた楽しい演奏。出だしのフレーズを聴くと、思わずニンマリしてしまう。
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