ハービーの初リーダー作です。
そう言えば、このブログで、ハービー・ハンコックの若かりし頃、つまりは、ブルーノート・レーベル時代のハービーをご紹介する機会が無かったことに気が付いた。よし、それでは、ブルーノートでの初リーダー作から順に聴き直してみよう。
ブルーノートでの初リーダー作は、Herbie Hancock『Takin' Off』(写真左)。ブルーノートの4109番。1962年5月18日の録音。ちなみにパーソネルは、Freddie Hubbard (tp), Dexter Gordon (ts), Herbie Hancock (p), Butch Warren (b), Billy Higgins (ds)。
パーソネルが興味深い。デクスター・ゴードン(略してデックス)のみが、1920年代前半の生まれ。その他は、1930年代後半。そんな中でもリーダーのハービーが1940年生まれと一番若い。デックスとハービーの年齢差が17年。ほとんど親子くらい年齢が違う。若手4人にベテランが1人という図式である。
特にデックスは、ビ・バップからの叩き上げ組。残りの若手4人はハードバップからの参入で、いわゆる「ビ・バップを知らない子供達」である。ハードバップもどちらかと言えば、モード奏法にも精通した「新主流派」傾向のメンバーである。パーソネルの顔ぶれを見れば、デックスだけが浮いている。こんなパーソネルでジャズ演奏して上手くいくのかい、と不安になる。
さて、このハービーの初リーダー作『Takin' Off』は、全てハービーの自作曲で占められている。そして、このアルバムに収録された全ての曲の出来が素晴らしい。良い曲ばかりなんですよ、これが。曲の傾向は、ファンキー・ジャズとモード・ジャズに二分されるかな。どちらの傾向の曲も魅力的。
ファンキー・ジャズ系が冒頭の「Watermelon Man」と5曲目の「Driftin」が秀逸。特に、冒頭の「Watermelon Man」は後にジャズ・スタンダード曲となり、多くのジャズメンにカバーされる。ハービーもエレ・ジャズとしてセルフ・カバーしている。「Driftin」も良いねえ。ダンディズム溢れるクールで緩やかな展開は「大人の雰囲気」。
ファンキー・ジャズとモード・ジャズとくれば、ビ・バップからの叩き上げサックス奏者デックスとは全く合わないのでは、と危惧するのだが、これがとんだ「杞憂」。ファンキー・ジャズでもモード・ジャズでもデックスはバリバリ吹きまくる。それもデックス独特のノリと個性で吹きまくる。ファンキーやモードなど全くお構いなしである。
この『Takin' Off』というアルバムは、デックスの出来が突出していて、デックスのブロウが実に充実しているところが一番印象に残る。デックスのサックス奏者としての懐の深さも十分に感じる。ダンディで雄々しいデックスのブロウは唯一無二。ブリッと吹いて、若手ジャズメンを瞬時に従えている。
リーダーのハービーのピアノも良い。デビュー作にして、ハービーのピアノの個性の殆どが、演奏のそこかしこに散りばめられている。このアルバムに収録されているどの曲でも、ピアノのフレーズと手癖を聴くと、恐らくこれはハービーでは、と思えるほど、ハービーのピアノの個性が色濃く出ている。
唯一、惜しいのは、フレディー・ハバードが雄弁すぎること。そして、物真似が過ぎること。確かに上手い。上手すぎるほど上手い。しかし、オリジナリティーは、と問えば、このアルバムでのハバードは個性がなさ過ぎる。加えて、テクニックに任せて吹きぎている。以前、マイルスが、ハバードに関して厳しい指摘をしていたこと思い出す。
ハバードの減点ポイントを勘案しても、このハービーの初リーダー作『Takin' Off』は、クールなハードバップ盤として良い出来だと思います。ハードバップ後期、新主流派寄りの新しい響きを湛えたハードバップな演奏としてお勧めの一枚です。
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