ブルーノート謹製ハードバップ
人呼んで「テナー・タイタン」。ソニー・ロリンズは、ブルーノート・レーベルに4枚のリーダー作を残している。どれもが水準以上の内容で、さすがロリンズ、さすがアルフレッド・ライオンである。そんな若きソニー・ロリンズがブルーノートに残した成果を聴き直してみた。
まずは、これだろう。『Sonny Rollins, Vol.1』(写真左)。1956年12月の録音。ブルーノートの1542番。ちなみにパーソネルは、Donald Byrd (tp), Sonny Rollins (ts), Wynton Kelly (p), Gene Ramey (b), Max Roach (ds)。ブルーノートにおけるロリンズの初リーダー作。
冒頭の「Decision」を聴くと、ちょっと「あれれ」と思う。リーダーのロリンズのテナーが目立たない。まずはトランペットが目立つ。輝かしいブラスの響きを湛えつつ吹きまくる、吹きまくる。初めは「リー・モーガン」かと思ったら違った。なんと「ドナルド・バード」である。
ええ〜、ドラルド・バードってこんなにバイタルに吹きまくるトランペッターだったかなあ。とにかく、このソニー・ロリンズのリーダー作で、俺が主役じゃ、と言わんばかりに、全編に渡ってトランペットを吹きまくる。場面によっては五月蠅い位だ。
そして、相変わらず、ドラムのマックス・ローチは冗長なドラムソロで目立ちたがる。マックス・ローチは基本的に目立ちたがり屋で、バックに回っているときも、結構、バシャバシャ叩いていて、ちょっと五月蠅いくらい。これがバップ・ドラミングだ、と言われればそれまでだが、ちょっと五月蠅い。
加えて、哀愁のハッピー・スインガーであるピアノのウィントン・ケリーも何時になく弾きまくっている。これまた、根っからのハッピー・スインガーが弾きまくるのだから、目立つ目立つ。これまた五月蠅い位に弾きまくる。
どうもロリンズは人が良すぎる。参加したサイドメンが目立ちまくるリーダー作なんて聴いたことが無い。1曲目の「Decision」を聴いて先が思いやられる展開である。
しかし、2曲目の「Bluesnote」でロリンズも吹きまくり始める。まあ、バードのトランペット、ローチのドラム、ケリーにピアノが目立ちまくっているのは「そのまま」なのだが、そんな中にロリンズが割って入り始める。プロデューサーのアルフレッド・ライオンのサジェスチョンがあったのだろうか。
3曲目の「How Are Things In Glocca Morra?」以降、ロリンズの吹きまくりのスペースがどんどん広がっていって、やっとリーダー作らしく、ロリンズが吹きまくる。なんだかホッとする。ロリンズのテナーは、豪快に吹きまくってこそのテナーなので、他に吹きまくられているロリンズは「らしくない」。
ただ、この『Sonny Rollins, Vol.1』は、内容的には、絵に描いた様なハードバップ・ジャズで、テーマ部のユニゾン&ハーモニーも、アドリブ部の展開も、典型的なハードバップな音が満載。アレンジもカッチリしていて実に端正な音作りがなされており、まさに徹頭徹尾「ハードバップ」な音なのだ。
僕は、この『Sonny Rollins, Vol.1』は、ロリンズを聴くというよりは、ハードバップを聴くアルバムとして、皆にお勧めしている。このアルバムには、良質で端正なブルーノート・レーベル謹製の「ハードバップ」が詰まっている。
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