日本男子もここまで弾く・2
思い起こせば、かれこれ10年来、注目し続けている日本の若手男子ピアニストがいる。その名は「松永貴志」。1986年生まれなので、今年で29歳になる。まだまだ若手から中堅に差し掛かる、有望株の日本男子ジャズ・ピアニストである。
僕がこの松永貴志に出会ったのは、2003年7月。彼のアルバム『TAKASHI』(写真左)を、iTunes Storeで発見した時である。このアルバム『TAKASHI』は、当時、17歳の現役高校生ジャズ・ピアニストとして衝撃的デビューを飾った、松永貴志の1stアルバムであった。
既に、小学生の時にアート・テイタムをコピーしたというだけあって、そのテクニックは飛び抜けている。このデビュー盤を聴き込んで、これが現役高校生のピアノ・プレイかと驚愕した。日本人男子の高校生がここまでのジャズ・ピアノを弾きこなすとは、遂に新しい時代が来た、と感じた。
少し、もったりとしているが、ハイ・テクニックで破綻の無い、良く回る右手。正確なリズム&ビートを刻みつつ、アドリブのベースラインをシッカリと押さえる左手。そして、タッチの雰囲気はピチピチで若々しい。
とにかくガンガンに弾き倒している。これが良い。それでいて、そんなシーツ・オブ・サウンドの様なアドリブ・フレーズは、時にセロニアス・モンクの様な幾何学的な展開に変化したりする。この変化が良い。
ピアノを弾けないジャズ者の方々は、ジャズ・ピアノの命は「タメ」が大事だとか「間」が大切だとか言うが、それだけではピアノのフレーズは弾き回せない。ピアノのフレーズを弾き回す大前提は、アドリブ・フレーズを弾き回す「勢い」であり「馬力」である。
自作曲も出色の出来だ。これは凄いなあ、と当時驚いた。加えて、スタンダード曲のアレンジも良好。この松永貴志はピアノのテクニックも素晴らしいが、コンポーザーとして、アレンジャーとしての才能も確かなものがある。2003年当時、彼の将来がとても楽しみだと強く感じた。
松永貴志『TAKASHI』。ちなみにパーソネルは、松永貴志 (p), 安カ川大樹 (b), 広瀬潤次 (ds)。安カ川と広瀬のリズム・セクションも強力。ベースは超低音をブンブン唸らせ、ドラムは躍動感のあるリズム&ビートを供給し続ける。そして、松永貴志のピアノは、完全に彼のオリジナルである。
僕は、この松永貴志がメジャーな存在にならないのが不思議でならない。日本のレコード会社は評論家は何をしているのか、と問いたくなる。今では彼はそこそこの中堅ジャズ・ピアニストとなった。しかし、まだ実力を最大限発揮した彼の代表作は、まだこの世に出でてはいない。
震災から3年11ヶ月。決して忘れない。まだ3年11ヶ月。常に関与し続ける。がんばろう東北、がんばろう関東。自分の出来ることから復興に協力し続ける。
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