これはマニアなブルーベック盤
久々のデイブ・ブルーベックである。僕はブルーベックがお気に入りなのだが、我が国では、どうもブルーベックは人気が無い。音楽の好きな人のレベルで、昔、アリナミンVの宣伝でお馴染みとなった「テイク・ファイブ」を演奏したバンドのリーダー、という位の認識しか無い。
そんな我が国で人気がイマイチのブルーベックである。ブルーベックのアルバムばかり紹介していると、「マスター、またブルーベックなん」とか「ブルーベックってそんなにええのん」なんて声があちらこちらから聞こえてきそうで、最近、ちょっと控えめにしてきた。が、やはり、久々に聴くと、ブルーベック・カルテットは良い。
今日は、そんなブルーベックのアルバムの中から、ちょっとマニアックなアルバム、Dave Brubeck『Jazz: Red Hot & Cool』(写真左)を選択。1954年1月18日、ニューヨークの「Basin Street East」でのライブ録音。ちなみにパーソネルは、Paul Desmond (as), Dave Brubeck (p), Bob Bates (b), Joe Dodge (ds)。
冒頭「Lover」の始まりから、ライブ・ハウスの中の様々な音が聴こえる。ガラスのコップの触れあう音、ナイフ&フォークが触れあう音、ライブ音源ならではの臨場感が実に良い雰囲気だ。そこに、まずデスモンドのアルトが滑り込む様に旋律を奏でる。これが良い。このデスモンドのアルトが、ブルーベック・カルテットの一番の「売り」だ。
柔らかで円やかで流麗なデスモンドのアルト・サックス。ジャズは煙と汗の中、激しく、エモーショナルな演奏を奏でるもの、とする向きには、全く正反対のデスモンドのアルト。昔は「軟弱アルト」と陰口を叩かれたものだ。今では、スムース・ジャズの先駆けも先駆け、彼のテクニックの高さと共に、高い評価を得ている。
そして、ブルーベックのピアノ。スイングしないジャズ・ピアノと揶揄されるブルーベックのピアノだが、どうして、しっかりスイングしている。そう、ブルーベックはライブ演奏でこそスイングする。しかし、そのスイングは黒人ジャズメンの粘りのあるオフビートなスイングでは無く、白人らしい、クラシックの様に整然とした、スクエアなスイング感なのだ。
我が国では、硬派なジャズ者の方々は「ジャズを演奏するのに、クラシックの様に整然とした、スクエアなスイング感とは何事か」ということになって、ブルーベックは常に「分が悪い」。でも、この個性的なスイング感こそが、ブルーベックの真骨頂であり、ブルーベックの最大の個性なのだ。一聴するだけでブルーベックと判るスイング感。
ボブ・ベイツのベースとジョー・ドッジのドラムも堅実でテクニックも優秀。この二人がバックを支えているからこそ、フロントでデスモンドのアルトとブルーベックのピアノが、心ゆくまでインプロビゼーションを展開することが出来る。ブルーベックの独特のスイング感をしっかり理解し、しっかりサポートするこのリズム・セクションは地味だがなかなかに優秀。
良いライブ盤です。とにかく演奏される曲という曲の演奏の雰囲気が実に良い。しなやかなインプロビゼーション、リラックスしたリズム&ビート。そこに、柔らかで円やかで流麗なデスモンドのアルト・サックスが乱舞し、硬質でスクエアなスイング感のブルーベックのピアノが絡む。ブルーベック・カルテットここにあり、という感じの聴いて楽しいライブ盤です。
震災から3年11ヶ月。決して忘れない。まだ3年11ヶ月。常に関与し続ける。がんばろう東北、がんばろう関東。自分の出来ることから復興に協力し続ける。
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