山中千尋の考えるスタンダード集
自作曲は自分にとって弾き易くて良いのだろうが、聴いていて「独りよがり」になりがちで、その「独りよがり」は弾きやすさを追求するあまりの「偏ったアレンジ」によるものだと感じている。
やはり、ジャズ演奏においては、自作曲をやるのも良いが、今まで多くのジャズメンが手掛けてきた「スタンダード曲」をやることも大切だろう。スタンダード曲にはそれぞれの個性があり、その個性を活かしつつ、自分が弾きやすく、その曲の個性を表現するには「アレンジ」のテクニックが大切になる。
日本では、ジャズを聴く上で、この「アレンジ」の重要性について、なかなか言及されることが無い。日本ではアレンジのテクニックよりは演奏のテクニックやミュージシャンの個性が優先される。アレンジについては「二の次」なのだ。でも、ジャズの演奏の良し悪しの鍵を握る大きな要素のひとつは、この「アレンジ」なのだ。
そんな、スタンダード曲のアレンジについて、聴く度に感心するアルバムがある。山中千尋『After Hours 2』(写真)。山中千尋が2008年に発表した『アフター・アワーズ』の続編アルバム。スタンダード曲集である。ちなみにパーソネルは、山中千尋 (p), アヴィ・ロスバード (g), 中村恭士 (b), 脇義典 (b)。ピアノ、ギター、ベースのオールドスタイルのピアノ・トリオである。
このスタンダード集、山中千尋のアドリブの才能全開である。ピアノ、ギター、ベースのオールドスタイルのピアノ・トリオの特性を良く理解し、山中千尋自身のピアノを客観的に良く理解し、それぞれのスタンダード曲の潜在的な個性を良く理解した、今までの「スタンダード曲集」には無い「音の響きと展開」が楽しい。
収録された曲は以下のとおり。それぞれの「スタンダード曲」のアレンジを聴く度に、「ほぅ、そう来たか」とか「う〜ん、なるほどね」と感心したり、感嘆したりの11曲である。
1. Fly Me To The Moon
2. Wakey, Wakey
3. Drift Apart
4. Just One Of Those Things
5. Georgia On My Mind
6. I’ll Close My Eyes
7. Moanin’
8. Beautiful Love
9. Skating In Central Park
10. Autumn Leaves
11. Katsute
11. I Didn’t Know What Time It Was
選曲もなかなかユニークなんだよね。それぞれのスタンダート曲を良く知っている、山中千尋のアレンジ・センスが惹き立つ選曲も見事である。「どスタンダード」と言われる「Fly Me To The Moon」「Georgia On My Mind」や「Autumn Leaves」などをさり気なく選曲しているところなぞ、実に確信犯的で思わずニンマリする。
DVD付きの限定盤とCDのみの通常盤でジャケット写真が違うのも、なかなか「お洒落」。山中が和服を着ているところも意味深で実にクール。良く練られた「山中千尋の考えるスタンダード曲集」である。とにかくアレンジが優秀。
震災から3年10ヶ月。決して忘れない。まだ3年10ヶ月。常に関与し続ける。がんばろう東北、がんばろう関東。自分の出来ることから復興に協力し続ける。
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