ビッグバンド・ジャズは楽し・37
これはこれは、素晴らしいビッグバンドに成長したものだ。ジャズ・ピアニスト、小曽根真が率いる「No Name Horses(以降、略してNNH)」である。ピアニスト小曽根真が率いる総勢15名のビッグバンド。メンバーはいずれも日本を代表するミュージシャン。このNNHの最新アルバムが、これまた、素晴らしい内容のアルバムに仕上がっている。
そのアルバムとは、小曽根真 featuring No Name Horses『ROAD』(写真左)。JAZZ LIFE DISC GRAND PRIX にてアルバム・オブ・ザ・イヤー2014 第1位を受賞。ビッグバンドがアルバム・オブ・ザ・イヤーを受賞するのも珍しいが、日本人リーダーのビッグバンドがこういう大きな賞を受賞するのは、穐吉敏子=ルー・タバキン・ビッグバンド以来ではなかろうか。
収録曲は以下の2曲。「ビッグ・バンド交響詩“ROAD”」と「ラプソディ・イン・ブルー」の2曲構成である。まずは、1曲目の「ビッグ・バンド交響詩“ROAD”」。重厚な一大音楽絵巻、小曽根渾身の交響詩。しっかりと大胆かつ細心に書き込まれたビッグ・バンド交響詩。
このビッグ・バンド交響詩を聴くと、ジャズのビッグバンドがここまでの様々な表現が出来るとは、と先ずは思わずビックリする。ダイナミックな展開から繊細な表現まで、音の大きさからすると、フォルテッシモからピアニッシモまで、相当に広大なダイナミックレンジ。アンサンブル、ユニゾン&ハーモニーのニュアンスの豊かさ。まるで、ビッグバンドがクラシックのオーケストラに置き換わったかのような、素晴らしくアーティスティックな音世界。
そして、2曲目が「ラプソディ・イン・ブルー」。ジョージ・ガーシュウィンの名曲である。このクラシックの名曲のスコアをそのまま、ビッグバンド・ジャズに移し替えたような、正統な「ラプソディ・イン・ブルー」。変にアレンジしたり、変に加工したりすることは一切無し。正面から「ラプソディ・イン・ブルー」に向き合い、真っ当にアレンジされた「ラプソディ・イン・ブルー」。
そんな「ラプソディ・イン・ブルー」を最高テクニックを誇るNNHが、渾身の演奏で表現していく。適度な緊張感が清々しい、端正なビッグバンド・ジャズ。破綻の無い、崇高な構築美が眩しいくらいの「ラプソディ・イン・ブルー」である。
さすがに、JAZZ LIFE DISC GRAND PRIX にてアルバム・オブ・ザ・イヤー2014 第1位を獲得しただけはある内容である。惜しむらくは、あまりにアーティステックで端正で破綻の無い分、最後まで聴き通すと、ちょっと「トゥー・マッチ」に感じるところ。
演奏の密度も濃く、アレンジも重厚な為、気が向いたときにサクッと気軽に聴く、という感じのアルバムでは無い。しっかりと構えて、対峙するように聴き込むアルバムという感じが強い。アート度が高いと言って良い。ちょっとアート度が高すぎて、ポップな雰囲気が希薄なので、その辺のところで好き嫌いが分かれるのでは、と感じている。
素晴らしい内容のアルバムである。日本のビッグバンド史に残る名盤であると思う。しかし、「ジャズ史上の名盤、必ずしも愛聴盤ならず」という格言があるが、この小曽根真 featuring No Name Horsesの『ROAD』は、その類の一枚かもしれない。
震災から3年11ヶ月。決して忘れない。まだ3年11ヶ月。常に関与し続ける。がんばろう東北、がんばろう関東。自分の出来ることから復興に協力し続ける。
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