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2015年1月 5日 (月曜日)

ピーターソン晩年の「魂の演奏」

オスカー・ピーターソンは僕のお気に入りのピアニストの一人です。僕としては、ジャズ・ピアニストとして「テクニック」は最高、アドリブ・フレーズは歌心溢れ、スインギーでポジティブ。

あまりに上手すぎるピアノなので、「上手すぎるから嫌い」などと訳の判らない評価もされてしまう、ジャズ界の伝説のピアニストです。2007年12月、満82歳で、惜しくもこの世を去りました。近年でのジャズ界の最大級の損失でした。

実は長年、年が明けると、オスカー・ピーターソンのピアノが聴きたくなる「癖」があって、今年もその「癖」が出てきました。う〜ん、オスカー・ピーターソンが聴きたい。ということで、今年は晩年のオスカー・ピーターソンを聴き進めることにしました。

晩年のピーターソンを聴くとなると、まず手にするのが、Oscar Peterson『A Night in Vienna』(写真左)。2003年11月21日、ウイーンでの「ベーゼンドルファー」会社設立175周年記念コンサートのライブ音源。ちなみにパーソネルは、Oscar Peterson (p), Niels-Henning Orsted Pedersen (b), Ulf Wakenius (g), Martin Drew (ds)。

ピーターソンは、1993年に脳梗塞で倒れた。歩く事が出来なくなるほどの状態だったが、リハビリを重ね、 その後、まだ左手が不自由ではあったが、再びピアノを弾けるようになった。そして、この『A Night in Vienna』は、2007年12月に鬼籍に入る3年前の、ピーターソン晩年の「魂のパフォーマンス」の記録である。

リハビリを重ねて、再びピアノが弾けるようになったとは言え、ピーターソンの左手は往年の輝きを取り戻せてはいない。左手はシンプルにベースラインを抑えるのみ、まだまだ動く右手で演奏全体のドライブ感をカバーする。アート・テイタムを越えたと言われ、縦横無尽に鍵盤を弾きまくった、元気な頃のピーターソンの面影は霞んではいる。
 

Oscar_peterson_vienna

 
しかし、それに引き替えるかの様に、陰影のある、響きと歌心を前面に押し出した、ロマンティシズム溢れる、印象派のようなピアノが芳しい。3曲目の「When Summer Comes」などがその好例だ。ピーターソンの人生の重みを感じさせる名演である。ちょっと心がメランコリックなら、思わず落涙してしまいそうな「儚さ」。

そして、ラストの「Hymn To Freedom」が感動的だ。邦題「自由への讃歌」。米国黒人の公民権運動に呼応して、ピーターソンが書いた、ピーターソン唯一の思想の入った「革命歌」だ。しかし、公民権運動のリーダー、キング牧師が暗殺されて以来、身の危険を感じ、公民権運動に失望して、ピーターソンはこの曲を演奏することが無くなった。

しかし、ここでその「Hymn To Freedom」をフルコーラスで切々と演奏する。これが実に良い。これが実に心に沁みる。もともと、この曲は1962年の名盤『Night Train』のラストに収録されている「大のお気に入り曲」なのだが、この晩年のピーターソンの人生の重みを感じさせる、陰影のある、響きと歌心を前面に押し出した、ロマンティシズム溢れるピアノで、切々と演奏されると、もうこれは「感動の名演」である。

往年のバリバリ弾き進めるピーターソンはここにはいない。しかし、伝説の名ジャズ・ピアニスト、ピーターソンは、陰影のある、響きと歌心を前面に押し出した、ロマンティシズム溢れる、印象派のようなピアノの響きと共に、しっかりとここに居る。テクニックを超えた「魂の演奏」というのは、この『A Night in Vienna』での演奏のことを言うのだろう。

やはり、オスカー・ピーターソンは素晴らしい。彼はジャズ・ピアノについては、エンターテインメント性を前面に据えたが、どうして、こうやって彼の生前の成果を聴き直してみると、エンターテインメント性と同じくらいに、アーティスティックな面を備えていることに感動を覚える。素晴らしい伝説のピアニストでした。

 
 

震災から3年9ヶ月。決して忘れない。まだ3年9ヶ月。常に関与し続ける。がんばろう東北、がんばろう関東。自分の出来ることから復興に協力し続ける。 

Never_giveup_4

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コメント

こんにちは、初めて書き込みさせて頂きます。
暫く前から時々お邪魔して、アルバムや曲選びの参考にさせて頂いています。
オスカー・ピーターソンの「HYMN TO FREEDOM」は昔から大好きな曲です。その演奏の中でも左手不自由になってからの演奏の方がが味わいがあって好きです。
その演奏のCDを手に入れようと思うのですが、御紹介の「A Nighit in vienna」と「サマーナイト イン ミュンヘン」で迷っています。ご意見をお聞かせ頂ければ有り難いです。

初めまして、焚火屋さん。松和のマスターです。
 
お問い合わせの『A Nighit in vienna』と『A Summer Night in Munich』の
どちらがお勧めか、という件ですが、タッチと弾き回しの確かさという観点で
僕は『A Summer Night in Munich』推しです。

『A Nighit in vienna』は、そのタッチと弾き回しから、明らかにピーターソンが
弱っている、と判る程で、それはそれで感動的ではあるのですが、ピアノ・トリオを
鑑賞するという面で評価すると、やはりタッチと弾き回しの確かさという観点で
『A Summer Night in Munich』に軍配が上がると思います。
 

マスター、どうもありがとうございます。取り敢えず、サマーナイト イン ミュンヘンを捜してみます。(ヨレヨレのフリーダムも聴いてみたいと思ったりもして(^^;;)

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