四人囃子独特の個性の再確認
1970年代の日本のプログレッシブ・ロックの世界の中で「四人囃子」の存在はもはや伝説であろう。しかし、この「四人囃子」のバンド名に正しく反応する方は、1970年代の日本プログレのマニアしか、いないのではと思う。それほど、この四人囃子の存在については、1980年代以降、再評価されることも無く、歴史の彼方に葬り去られているような状況である。
そんな四人囃子が、1978年にリリースしたアルバムが『包(BAO)』(写真)。「パオ」と読む。前作の『PRINTED JELLY』で、プログレ独特の大作主義と神秘性、幻想性は全く排除され、ストレートでポップなサウンドに変化。複雑な構成や変拍子は目立たなくなり、ストレートで分かり易くなった。
そして、この『包』である。前作であまりにプログレッシブ・ロックな要素が排除されたので、いよいよ次作はインスト中心のフュージョン・ジャズ化か、なんて想像していたのだが、良い意味で期待を裏切られた。意味深なアルバム・ジャケットと相まって、四人囃子らしさが戻って来た。
前作の、複雑な構成や変拍子を排除し、ストレートで分かり易い、ストレートでポップなサウンド路線は踏襲してはいるが、プログレ独特の神秘性、幻想性と、四人囃子独特の「ほんわか感」「不思議感」を元に戻している。特に、四人囃子独特の「ほんわか感」「不思議感」は歌詞の世界で大きくフィーチャーされていて、四人囃子は良い方向に方向転換したと感じた。
そして、バンド全体の音は、前作にも増して、キーボードの音が前面に押し出されて、ポップなサウンドがアルバム全体に満載である。逆にこのキーボードの比重が高くなったことで、プログレらしさが戻ってきていて、四人囃子独特の「ほんわか感」「不思議感」を漂わせたポップなプログレ・サウンドという、四人囃子独特の音世界をこのアルバムで再確認することが出来る。
収録された曲のバラエティー感、ユーモラス感、ストレートでポップなサウンド。この四人囃子独特のサウンドをベースに、1970年代前半から中盤にかけては、大作主義と神秘性、幻想性を反映させ、プログレッシブ・ロックらしい作品を世に出し、1970年代後半は、時流に乗ったサウンドのコンパクト化、ポップ化を反映させ、『PRINTED JELLY』や『包』を世に出した。
この『包』に収録された曲は長くても5分半という、プログレの大作主義とは無縁な、コンパクトな楽曲でまとめられていて、シンセサイザー中心のややテクノ風なエレクトリック・サウンドが見え隠れするところに、このアルバムがリリースされた1978年の「時代の音」を感じる。
ちなみに、アルバム・タイトルやジャケットからイメージされる大陸的なもの、中国的なものは、インストのタイトルや曲調に少し感じ取れるだけである。プログレッシブ・ロックのアルバム・タイトルやジャケットは、そのアルバムの音世界を的確に表現しているものなのだが、これだけは期待外れである(笑)。
震災から3年9ヶ月。決して忘れない。まだ3年9ヶ月。常に関与し続ける。がんばろう東北、がんばろう関東。自分の出来ることから復興に協力し続ける。
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こんにちは、ちんたろ男です。四人囃子の「包」、いいアルバムです。ちんたろ男はプログレマニアなのですが、なかなか日本のバンドまで耳がまわらなくて、いつか気に入ったときに困らないように前期のアルバムはボックスセットも含めて先に買いそろえておきました。たまにちょこちょこ聴いてはいたのですが、歌詞と演奏のバランスが、なんとなくギクシャクしていて(はまるとたまらないんでしょうけど)、あまりのめり込んではいませんでした。で、ディスクユニオンでこの「包」のボロボロのアナログが300円で出ていたときも、「おお、こいつは洗い甲斐がある」ぐらいの感じで手に入れたのですが、このアルバムはいいですね。とても良く練れて無駄のないアルバムだと思います。流れもスムーズだし、歌ものの曲もいい。一般的には「一触即発」とかの評判がいいようですが、この辺りはどのような評価を受けているんでしょう。ちょっとズレているかもしれませんが、私が大好きなのは「スウィートラバーソング」です。音程も不確かな歌い具合ですが、なぜかたまらなく胸が締め付けられます。車の中で初めて聴いたときに、あまりの曲の良さに何度も繰り返して聴いてしまいました。ですから、ここでこのアルバムが取り上げられているのを見つけたときはとても嬉しかったです。
投稿: ちんたろ男 | 2015年1月24日 (土曜日) 21時12分
はじめまして、ちんたろ男さん。松和のマスターです。
そうですね。四人囃子と言えば「一触即発」ばかりが
採り上げられがちですが、この『包』はなかなかの内容で、
私もこのアルバムの音世界が気に入っています。
なかなか採り上げられないアルバムですが、日本の
プログレ名盤の一枚だと思います。
投稿: 松和のマスター | 2015年1月25日 (日曜日) 19時40分