クールでアーバンなエレ・ジャズ
1970年代後半、シンセサイザーやシーケンサーを使用した「テクノ・ポップ」というジャンルの演奏形態が台頭した時、恐らく、そのうち、ジャズの世界の中でも「テクノ・ジャズ」的な演奏形態が出てくるだろうと思っていた。それも、恐らく、日本が中心になるのでは、と予測していた。
その「テクノ・ジャズ」として、納得の出来のユニットが出現したのが、2001年のこと。そのユニットの名前は「東京ザヴィヌルバッハ」。伝説のエレ・ジャズ・ユニット、ウェザー・リポート(WR)のキーボード奏者ジョー・ザヴィヌルと「音楽の父」バッハを併せ持ったユニット名。日本発と言うことで「東京」が冠に付く。
主に現代音楽の分野で使われていた自動変奏シーケンスソフト「M」にリズム隊を担当させ、その上にキーボードやサックスがインプロビゼーションしまくる、まさに「テクノ・ジャズ」と呼ぶに相応しいユニット。「M」が繰り出すポリリズムとエレクトロニック・リズム&ビートが素晴らしい個性。
そんな東京ザヴィヌルバッハの2012年の秀作。タイトルは『AFRODITA』(写真左)。東京ザヴィヌルバッハは、2010年以降、坪口昌恭ソロ主体の活動にシフトしており、この作品も坪口昌恭の単独制作。とは言え、坪口昌恭ではなく東京ザヴィヌルバッハ名義の作品。ここでも、自動変奏シーケンスソフト「M」がリズム&ビートをガッチリ押さえている。
このアルバムを聴いて、思わずニンマリする。メイン楽器は、シンセサイザーではなくエレクトリック・ピアノなのだ。シンセではなくフェンダー・ローズがメインになっているところが実に良い。
東京ザヴィヌルバッハの個性、自動変奏シーケンスソフト「M」が繰り出すポリリズムと気紛れなエレクトロニック・サウンドの上に、フェンダー・ローズが乱舞する。フェンダー・ローズの音が大好きで、シーケンサーのリズム&ビートが大好きな僕にとっては、こんなに聴いていて心地良いアルバムは無い。
エレピがメインではありながら、シーケンスソフト「M」のアフリカ的なポリリズムとフェンダー・ローズの「丸いクールさ」が融合して、「テクノ・ジャズ」的なアーバン・イメージがアルバム全体に漂う、不思議な雰囲気を持ったエレクトリック・ジャズである。加えて、聴き障りが良い。アンビエント・ミュージック風のアレンジが実に「恣意的」だ。
こういうジャズが日本から発信される時代になったことを強く実感出来る、東京ザヴィヌルバッハの『AFRODITA』。クールなアーバン・エレクトリック・ジャズ。ラストのWRの「8:30」のカバーが、僕達、WR者にはたまらない。
震災から3年10ヶ月。決して忘れない。まだ3年10ヶ月。常に関与し続ける。がんばろう東北、がんばろう関東。自分の出来ることから復興に協力し続ける。
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