凄いギターを弾くボーカリスト
ジャズ・ギタリスト&ボーカリストのジョージ・ベンソン(George Benson)の本来の姿は「ギタリスト」なのか「ボーカリスト」なのか。ベンソンの数あるリーダー作をいろいろと聴く度に思うことである。
1960年代後半、マイルスにも見初められ、新進気鋭のジャズ・ギタリストとして登場したジョージ・ベンソン。そのジャズ・ギタリストの腕前は、ウエス・モンゴメリーの再来と謳われ、泣く子も黙るコンテンポラリーなジャズ・ギターの人気者として1970年代前半を過ごし、1970年代後半、そのギターの腕前をも上回るボーカルを披露、遂にはボーカルが前面に出てきて「凄いジャズ・ギターを弾く優れたボーカリスト」としての地位を確立したのが、1980年代前半。
例えば、このGeroge Benson『In Your Eyes』(写真左)などは、そんな「凄いジャズ・ギターを弾く優れたボーカリスト」としての一枚だろう。1983年の録音&リリース。このアルバムはベンソンは、ボーカリストとしての側面を思いっきり前面に押し出し、ところどころで渋くて凄まじいテクニックのジャズ・ギターを披露するという、「凄いジャズ・ギターを弾く優れたボーカリスト」としてのポジションを確立している。
冒頭のソフト&メロウなフュージョン・ジャズの名曲「Feel Like Making Love」を聴くと、この時代のベンソンの特長がよく分かるのだが、このソフト&メロウなフュージョン・ジャズの名曲が、思いっきりファンキーでブラック・コンテンポラリーな楽曲に早変わりしている。いやいや、この「Feel Like Making Love」のフュージョン・ジャズでのアレンジが頭にあると、このベンソンのアルバムのアレンジには思いっきりビックリします(笑)。
他の楽曲も、基本路線は「思いっきりファンキーなブラック・コンテンポラリー」で、ベンソンのボーカルは、ジャズのボーカルというよりは、ブラック・コンテンポラリー(いわゆる「ブラコン」)のボーカルそのものと捉えて良い。ジャズのボーカルとして、このアルバムのベンソンのボーカルを捉えると思いっきり違和感を感じてしまいます。
しかし、7曲目の「Being With You」などは冒頭より、ソフト&メロウな心地良いベンソンのジャズ・ギターが炸裂し、アドリブ部では、往年の「ウエス・モンゴメリーの再来と謳われた、泣く子も黙るフュージョン・ジャズ・ギター」を十分に聴かせてくれます。やはり、そのテクニックとアドリブ・フレーズの響きは圧倒的で、なるほど、ベンソンって、確かに「出身はギタリストやったんやなあ」ということを思い出させてくれます。
アルバム全体の雰囲気は「思いっきりファンキーなブラック・コンテンポラリー」ですが、要所で往年の「ウエス・モンゴメリーの再来と謳われた、泣く子も黙るフュージョン・ジャズ・ギター」を聴かせてくれて、その割合から、このアルバムは「凄いジャズ・ギターを弾く優れたボーカリスト」としてのベンソンを的確に表現しています。
1980年代前半のジョージ・ベンソンを知る上で、欠かすことの出来ない佳作盤。フュージョン・ジャズ者の方々には、1980年代前半のフュージョン・シーンの雰囲気を代表する盤の一枚としてお勧めの一枚です。
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