お気に入りの女性ボーカル盤
ジャズ・ボーカルのアルバムというのは相当な数に上る。当然、ジャズ・ボーカリストはキラ星の如く、相当な数になる。他の楽器と同様、体系立って、代表的なミュージシャンのアルバムを聴いて、その楽器の傾向と意義を確認する、なんてことが出来ない。とにかく、ジャズ・ボーカリストの数が多すぎる。
といって、1940年代から1950年代に活躍し、メジャーとなって、その後もずっと歌い続けた、ジャズ・ボーカルのレジェンド達のアルバムを聴けば、ジャズ・ボーカルが理解出来るか、と問われれば否と答える。
とにかく、ジャズ・ボーカルは人間が肉声をもって、それぞれの個性を活かして歌うのだから、同じスタイルというものが無い。つまり、ジャズ・ボーカルには、他の楽器の様に、エバンス派とかパウエル派、パーカー派などという演奏に関する「スタイル」が無い。
つまりは、ジャズ・ボーカルを愛でるには、ボーカリストの個性や声質や容貌が気に入って、自分に合ったボーカリストを聴き進めて行くのが手っ取り早いと感じている。
そんなジャズ・ボーカルであるが、僕の好みのボーカリストは、ちょっと他のジャズ者の方々とは違うんやないかなあ、と思って久しい。僕の好きなボーカリストを挙げると、先輩ジャズ者の方々の眉が曇ることが多いのだ。
まあ、先に述べたように、ボーカリストの個性や声質や容貌が気に入って、自分に合ったボーカリストを聴き進めて行くのが手っ取り早いと思っているので、あまり他のジャズ者の方々の評価は参考にはするが鵜呑みにはしないようにしている。
昨年11月に、僕にとって魅力的なジャズ・ボーカル盤がリリースされた。土岐麻子『STANDARDS in a sentimental mood 〜土岐麻子ジャズを歌う〜』(写真左)である。
土岐麻子のソロ・デビュー10周年(2014年時)記念した、なんと9年ぶりとなる「STANDARDS」シリーズの第4弾。土岐麻子はこれまでに、ジャズ・スタンダードのアルバムを3枚リリースしている。そのうち2枚はヴォーカル物としては曲数が少なく、ミニアルバムという趣。今回はフル・アルバムで気合い十分である。
僕は土岐麻子のボーカルが好きで、歌い方、個性、声質が僕の耳にフィットする。 ポップス系のシンプルでストレートな歌声であり、英語の発音もしっかりしている。しっとりとした甘い声系ではあるが、コケティッシュでは無い。ちょっとユーモラスでキュートな声回しが微笑ましい。
以前、リリースされたジャズ・スタンダードのアルバム3枚も所有しているし、土岐麻子のポップス系のボーカル盤も幾枚か所有している。今でも時々聴くことがある、長年のお気に入り女性ボーカリストである。
さて、この『STANDARDS in a sentimental mood 〜土岐麻子ジャズを歌う〜』であるが、内容充実で聴き応え十分。父であり日本を代表するサックス奏者・土岐英史のプロデュースもバッチリはまっていて、全く飽きの来ない内容。土岐麻子のボーカルの魅力満載である。
「In a Sentimental Mood」「Round Midnight」「Smile」「Stardust」The Look of Love」「Misty」「Cheek to Cheek」といったスタンダード楽曲に加え、土岐英史作品に英詞を書き下ろしたオリジナル楽曲「Lady Traveler」「After Dark」も収録。 とりわけ、「Smile」の収録が良い。僕はこの「Smile」が大好きなのだ。「Smile」が入っていれば「何でも通し」ですね(笑)。
意外な選曲としてRed Hot Chili Peppers「Californication」が入っていて、ジャズ・シンガーBlossom Dearieのクリスマスソング「Christmas in the City」は、細野晴臣とのデュエットでシットリと聴かせる。
アレンジも良好、父君の土岐英史のアルト&ソプラノサックスに加え、曲によって市原ひかりのフリューゲルホルンがフィーチャーされていて、バックバンドの演奏も良好。良いジャズ・ボーカル盤です。久々に、我がバーチャル音楽喫茶『松和』でも、このジャズ・ボーカル盤がヘビロテになっています。
震災から3年10ヶ月。決して忘れない。まだ3年10ヶ月。常に関与し続ける。がんばろう東北、がんばろう関東。自分の出来ることから復興に協力し続ける。
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『ゲッツ/ジルベルト+50』を聴いていたら、クレジットに土岐麻子の名前があってこの記事を思い出しました。。彼女好みです。。『ゲッツ/ジルベルト+50』のイパネマの娘はアストラッドのそれより数倍ヨカです。お勧めのアルバムも聴いてみたくなりました。。では、では。
投稿: かぁ | 2015年1月23日 (金曜日) 17時52分
はじめかして、かぁさん。松和のマスターです。
『ゲッツ/ジルベルト+50』の土岐麻子も良いですね。
私も好きです。不思議と彼女の唄声はボサノバの雰囲気に
バッチリ合うんですね。
このアルバムでは、ジャズ・スタンダード曲にも十分に
適応することが良く判ります。
投稿: 松和のマスター | 2015年1月25日 (日曜日) 19時43分
こんにちわ。
私もジャズヴォーカルは不思議が多いと思っています。
近年のニューアルバムのほとんどをみても、「営業用ジャズ1001」からの定番スタンダードが必ずといっていいほどとりあげられますが、なぜこんなリスクを犯すのだ?と思うことが多いです。(笑)
若い歌手にすればジャズ1001の古典は新鮮なのかもしれませんが、長年エラ、サラ、カーメンなどなどの歌唱を聞いているフアンからすれば、(・・今サラかよ・・)(~o~)と思うことが多いようにも思います。
綾戸ちえさんを初めて聞いた時は感動しましたが、しばらくすると弘田三枝子さんほかの、この類はジャズなんだろうかなあ?とも思いはじめ、なによりもそのえげつないまでのコテコテぶりを日本人が演じることへの抵抗感があります。
アンバートンがなぜ今でも愛されるのかとかんがえると、オランダ人の「非ネイティブイングリッシュ」がゆえのていねいさ、情感の伝わりやすさ、そしてその選曲の新鮮さなのかなあ?と思っています。
八代あきさんのジャズは私は「ムード歌謡」と思って楽しんでいますが、
青江美奈さんの「ジャズ」は好きでしたです。^^
ジャズはアドリブだといいますが「ジャズに名演あって名曲なし」などという迷言?はあの時代のジャズをさした言葉であり、大衆はいつの時代でも「ジャズも名曲なくして名演なし」ということではないのかなあ?なんてね。。(笑)
投稿: おっちゃん | 2015年2月 8日 (日曜日) 07時13分