渡辺香津美の考えるフュージョン
日本のフュージョン・ジャズの中で、ジャズ者初心者の時代から、ずっと今まで聴き続けてきたアルバムがある。特に、渡辺貞夫、渡辺香津美のアルバム諸作は別格で、特に、渡辺香津美のアルバムは、ことある毎に聴き直すことが多い。
特に、1979年リリース、異種格闘技風の香津美フュージョンの傑作中の傑作『KYLYN』から、続く1980年リリースの『TO CHI KA』はお気に入りで、もう30年以上も聴き続けていることになる。そして、もう一枚、大のお気に入りの香津美フュージョンのアルバムがある。
そのアルバムとは、1981年リリースの『頭狂奸児唐眼(TALK YOU ALL TIGHT)』(写真左)である。漢字の読みは「とうきょうがんじがらめ」と読む。英訳すると「TALK YOU ALL TIGHT」となる。フュージョン・ジャズのアルバムとしては、かなり凝ったタイトルである。
このアルバムは、『KYLYN』での、当時YMOのメンバーであった坂本龍一、高橋幸宏との異種格闘技なコラボレーションから、『TO CHI KA』での米国フュージョン・ジャズの強者の面々とのセッションの経験を踏まえて、その成果を当時のKAZUMI BANDをメインに取り纏めたアルバムが『頭狂奸児唐眼』である。
パーソネルは、渡辺香津美 (g), 笹路正徳 (key), 清水靖晃 (ts), 高水健司 (b), 山木秀夫 (ds) のクインテット構成。このクインテットが当時の「KAZUMI BAND」になります。ちなみに、プロデュースはフュージョン・ジャズの伊達男マイク・マイニエリ。このプロデュースは前作『TO CHI KA』と同じ。
冒頭の「NO HALIBUT BOOGIE」のイントロのギターの音だけで、このアルバムの内容が、当時良くあった「ソフト&メロウな耳当たりの良いフュージョン・ジャズ」では無いことが判ります。テイストとしては、ロックなテイストとテクノポップなテイストがフュージョン・ジャズとが程良くブレンドされていて、独特のフュージョン・サウンドに仕上がっています。
この冒頭の「NO HALIBUT BOOGIE」を聴いてワクワクすれば、当時の先進的なフュージョン・サウンドにバッチリ適応しますが、逆に「やかましいなあ、これ」と眉を細める向きには、この尖ったフュージョン・サウンドに対しては拒絶反応を起こすでしょうね。そんな「踏み絵」の様なオープニングの1曲です。
続く「MARS」から「BRONZE」についても、内容的には尖った硬派な内容のフュージョンで、まさに、『KYLYN』での、当時YMOのメンバーであった坂本龍一、高橋幸宏との異種格闘技なコラボレーションから、『TO CHI KA』での米国フュージョン・ジャズの強者の面々とのセッションの経験と成果を十分に自家薬籠中のものとした、いわゆる「香津美の考えるフュージョン・ジャズ」です。
以降の収録曲もいずれも普通の「ソフト&メロウな耳当たりの良いフュージョン・ジャズ」では全く無く、アコギが中心の曲も、内容的にはしっかり尖っていて硬派。今の耳には、コンテンポラリーなジャズとして違和感無く耳に響きます。香津美フュージョンの傑作の一枚と言えます。
ジャケット・デザインも当時のフュージョン・ジャズのジャケットとは、全くもって「一線を画する」もので、実にシュールで実に趣味の良いもので、アルバムの尖った硬派なフュージョン・ジャズという内容と上手く合致していて、これまたセンスの良いもので感心することしきり、です。
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