« アキコ・グレースの「今」の原点 | トップページ | 甲斐バンド『at NHKホール』 »

2014年12月13日 (土曜日)

ジョンスコの純ジャズなアルバム

エレ・マイルスから現れ出でて、自由度の高い、ハイテクニックでジャズ・ロックなエレギ。ヨーロピアンな、ややフリー気味のジャズロックの響きを湛え、相当に捻れたフレーズとコードワークが特徴のギタリストが、ジョン・スコフィールド(John Scofield・以下略して「ジョンスコ」)。

ジョン・マクラフリンはアブストラクトでフリーキーなフレーズが個性だが、このジョンスコは、捻れたフレーズでくねりながらのフリーキーさが個性。一回聴いたら忘れられない、一回聴いたら直ぐ判る、独特の「捻れの個性」がジョンスコである。

ジョンスコはフュージョン・ジャズには走らなかった。ジョンスコの「捻れた個性」のエレギは、フュージョン・ジャズの特徴のひとつである「ソフト&メロウ」にはそぐわない。どちらかと言えば、純ジャズ寄りの個テンポラリーなジャズのフィールドで活躍している。

そんなジョンスコがメインストリーム・ジャズの範疇で演奏した佳作がある。そのアルバムとは、John Scofield『Time on My Hands』(写真左)。1989年11月の録音。ちなみにパーソネルは、John Scofield (g), Joe Lovano (sax), Charlie Haden (b), Jack DeJohnette (ds)。

まず、パーソネルを見て欲しい。ベースとドラムのリズム・セクションが、ジャズ・ベースの哲人、チャーリー・ヘイデンとポリリズムの達人、ジャック・デジョネットである。バリバリ硬派で純ジャズ的なリズム・セクションをバックに座らせて、ジョンスコは、真面目実直に、純ジャズ的なフレーズを「捻れた個性」で弾き上げていく。
 

John_scofield_time_on_my_hands

 
とにかく、ストイックで硬派なメインストリーム・ジャズである。ジョンスコは「捻れた個性」のエレギを、ややフリーキーな面にシフトしつつ、しっかりと硬派で純ジャズ的なリズム・セクションを立てながら、メインストリーム・ジャズ的なフレーズを真摯に弾きまくる。

ジョー・ロバーノのサックスの存在もキーポイント。ジョー・ロバーノは、当時、個性のあるフリー・ジャズなサックス奏者として売り出し中。アブストラクトさを控えめに、ややフリーに傾きながら、堅実なフレーズを吹き上げる。ストレートで限りなくフリーに近いフレーズを吹き上げつつ、ジョンスコの「捻れた個性」のエレギが相性良く絡む。

このアルバムは、メインストリーム・ジャズの範疇で演奏したアルバムとは言え、収録された曲は全てジョンスコのオリジナル。常套手段であるスタンダード曲の選択は無い。この辺がジョンスコの矜持を感じるところで、当時の新伝承派と一線を画するところ。メンストリーム・ジャズな演奏に手を染めるとは言え、安易にスタンダード曲に頼ることはしない。

ジョンスコの「捻れた個性」のエレギを感じる入門盤としても適したアルバムです。さすがにマイルスに見そめられたエレギである。メインストリームなジャズを演奏する場面でも、安易なアプローチに走ることは無い。真摯で爽やかな緊張感が清々しい佳作です。

 
 

震災から3年9ヶ月。決して忘れない。まだ3年9ヶ月。常に関与し続ける。がんばろう東北、がんばろう関東。自分の出来ることから復興に協力し続ける。 

Never_giveup_4

★Twitterで、松和のマスターが呟く。名称「松和のマスター」でつぶやいております。ユーザー名は「v_matsuwa」。「@v_matsuwa」で検索して下さい。
 

« アキコ・グレースの「今」の原点 | トップページ | 甲斐バンド『at NHKホール』 »

コメント

コメントを書く

コメントは記事投稿者が公開するまで表示されません。

(ウェブ上には掲載しません)

トラックバック


この記事へのトラックバック一覧です: ジョンスコの純ジャズなアルバム:

« アキコ・グレースの「今」の原点 | トップページ | 甲斐バンド『at NHKホール』 »

リンク

  • まだまだロックキッズ(バーチャル音楽喫茶『松和』別館)
    この「松和・別館」では、懐かしの「1970年代のロック」盤の感想や思い出を率直に語ります。これまでの、ジャズ喫茶『松和』マスターのひとりごと・ブログの中で不定期に掲載した、70年代ロックの記事を修正加筆して集約していきます。
  • 松和の「青春のかけら達」(バーチャル音楽喫茶『松和』別館)
    この「松和・別館」では、懐かしの「1970年代のJポップ」、いわゆるニューミュージック・フォーク盤の感想や思い出を率直に語ります。これまでの、ジャズ喫茶『松和』マスターのひとりごと・ブログの中で不定期に掲載した、70年代Jポップの記事を修正加筆して集約していきます。           
  • AORの風に吹かれて(バーチャル音楽喫茶『松和』別館)
    AORとは、Adult-Oriented Rockの略語。一言でいうと「大人向けのロック」。ロックがポップスやジャズ、ファンクなどさまざまな音楽と融合し、大人の鑑賞にも堪えうるクオリティの高いロックがAOR。これまでの、ジャズ喫茶『松和』マスターのひとりごと・ブログの中で不定期に掲載した、AORの記事を修正加筆して集約していきます。  
2023年5月
  1 2 3 4 5 6
7 8 9 10 11 12 13
14 15 16 17 18 19 20
21 22 23 24 25 26 27
28 29 30 31      

カテゴリー