新生・四人囃子のポップなプログレ
昨日は、四人囃子から離れた森園勝敏が参加した新フュージョン・ジャズ・バンド「プリズム」のファーストアルバムをご紹介した。さて、それでは、森園勝敏が抜けた後の四人囃子はどうなったのか。
森園勝敏の抜けた後、新たなギタリストとして佐藤ミツルを招いて、新生・四人囃子を立ち上げる。そして1977年に『PRINTED JELLY』(写真)をリリースする。ちなみにメンバーは、佐藤ミツル (g,vo), 佐久間正英 (b), 坂下秀実 (key), 岡井大二 (ds,per)の4人。
ギターが森園から佐藤に変わっただけで、これだけサウンドの雰囲気が変わるものか。僕は、この『PRINTED JELLY』をリリース一年後、大学に入ってから聴いた。そして、この四人囃子のサウンドの変わりようにビックリした。
森園の在籍した頃の四人囃子のサウンドは、神秘性、幻想性溢れる、ちょっと捻れたところもあり、トリッキーなアレンジも散りばめられた、1970年代前半、プログレッシブ・ロック全盛期のサウンドである。しかし、この佐藤のエレギ中心の新生・四人囃子のサウンドは根本的に異なるサウンド。
神秘性、幻想性は全く排除され、ストレートでポップなサウンドに変わった。そして、アレンジもシンプルになり、プログレッシブ・ロック特有のトリッキーなアレンジは影を潜めた。リズム&ビートも変則拍子が無くなり、シンプルなものとなった。晴れ晴れとした見通しの良いサウンドが、新生・四人囃子の個性。
なんて表現したら良いのか。そう、プログレの雄、イエスが『リレイヤー』というプログレ名盤の後、いきなりメンバーを元に戻してリリースした『究極』というアルバムがある。このイエスの『究極』を初めて聴いた時の違和感と驚きに似ている。コッテコテのプログレ・サウンドがいきなり、ストレートでポップなサウンドに変身した。そう、あの時の感覚に似ている。
時代は1977年。海外ではパンク・ロックがはやり始め、プログレッシブ・ロックは衰退した。そんな時代の環境の中で、コッテコテのプログレ・サウンドはもはや古い感覚だったのかもしれない。この『PRINTED JELLY』のサウンドは、そんなことを思い出させてくれる。
とにかく、それまでの作品の様に、複雑な構成や変拍子は目立たなくなり、ストレートで分かりやすい曲が多く、これはこれで「アリ」かなあ、と当時感じましたが、その感じ方は今の耳でも変わりません。聴く度に、その新しい不思議な感覚が感じられて、面白いですね。
プログレッシブ・ロックとしては、神秘性、幻想性、トリッキーなアレンジ、変則拍子が不足しているし、フュージョン・ジャズとしては、リズム&ビートにファンクネスが感じられず、ボーカルも素直。ラストの9分の大曲「ヴァイオレット・ストーム」を聴くにつけ、これはジャズやないな、と思います。
以降の変化が楽しみな、過渡期のストレートでポップなプログレ・サウンドですね。次のアルバムでの変化が楽しみな『PRINTED JELLY』の音世界です。
震災から3年8ヶ月。決して忘れない。まだ3年8ヶ月。常に関与し続ける。がんばろう東北、がんばろう関東。自分の出来ることから復興に協力し続ける。
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