全体を覆うリリカルな音世界 『Open, to Love』
初冬の凛とした空気の冷たさと、しんしんと静かな夜の雰囲気にピッタリの「ECMレーベルのソロ・ピアノ」。ジャズのフォーマットを踏襲しつつも、現代音楽の雰囲気、現代クラシックの響きを取り込んだ音世界は独特の個性を放っている。
そんな「ECMレーベルのソロ・ピアノ」の中の一枚、おおよそジャズとは異なる、どちらかといえば現代音楽の雰囲気が強い「凛とした」静謐感溢れるソロ・ピアノ盤。Paul Bley『Open, to Love』(写真左)。ECMレーベルの1023番。1972年9月11日、ノルウェーはオスロのスタジオでの録音。
ECMレーベルの総帥、プロデューサーのManfred Eicher(マンフレッド・アイヒャー)の美意識が反映された、豊かなエコーと切れ味の良いピアノ音。静謐感、透明感豊かな独特の音世界の中で、ポール・ブレイのソロ・ピアノが映える。
もはやこの音はジャズの類の音では無い。どう聴いても、これは、現代音楽、現代クラシックの類の演奏である。ジャジーなリズム&ビートは皆無。ちょっと聴くだけでは、フリー・ジャズというよりは、現代音楽と形容した方がピッタリの即興演奏。
が、しかし、よくよく聴き進めてみると、その演奏の即興性は、明らかにジャズから派生した、柔軟でイマージネーション豊かなもの。即興の展開はジャズ。しかし、リズム&ビートは皆無で、ジャジーなリズム&ビートはかけらも無い。このソロ・ピアノの音世界こそがECMレーベルの音世界の最たるものであるとも言える。
このポール・ブレイのソロ・ピアノの音世界は、一言で言い表すと「リリカル」。アルバム全体を覆う徹頭徹尾「リリカル」な世界。静謐な空間の中で、音数を厳選した、鋭敏なソロ・ピアノ。日本的に言うと「侘び寂び」の世界に通ずる、水墨画な様な、幽玄な淡い陰影、濃淡のあるソロ・ピアノの世界。
とても、普通のジャズ的なソロ・ピアノとは言い難いので、好き嫌いがハッキリするソロ・ピアノだと思います。ジャズ者初心者の方々には、ちょっと取っ付き難いでしょう。ジャズを聴き進めて、ジャズ者中堅レベルに到達した頃に、じっくり聴き耳を立てて丁度良いアルバムかと思います。
この初冬の季節、静謐な古い石庭を愛でながら聴くに相応しい、豊かなエコーと切れ味の良いピアノ音。「侘び寂び」の世界に通ずる水墨画の様な雰囲気を持つ、芸術的なソロ・ピアノ盤です。
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