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2014年12月の記事

2014年12月31日 (水曜日)

今年も大晦日、今年も有り難う

昨日は田舎への移動にて、ブログはお休みしました。現在、千葉県北西部地方を離れて、北関東に逗留しています。のつもりでしたが、一昨日より風邪にて自宅にて伏せっています(>_<)。

さて、大晦日になりました。なんやかんや、慌ただしかった2014年も終わります。来年は、もうちょっと落ち着いた、楽しい一年でありたいですね。

昨年に引き続き、今年もジャズのアルバムのリイシューについては、大型の企画ものが少なかったです。特に、未発表音源の大量放出など、ボックス盤などの大型企画が乏しかった一年でした。

1950年代から60年代の有名盤の廉価盤リイシューなど、ジャズ者初心者向けの企画が多くあって、それはそれで良かったと思います。まあ、当方からすると、所有しているものが大多数なので、あまり触手は伸びませんでしたが。

プレスティッジ・レーベルのレコード番号順のリリースなど、蒐集家としてちょっと触手の伸びそうな企画もありましたが、その辺はブルーノート・レーベルとは内容が違うので、なかなか番号順のプレスティッジ・レーベルのアルバムを揃える気にはなりませんでしたねえ。

逆に、1970年代ロックは、ボックス企画盤が目白押し。財布のひもは緩みっぱなしでした。あるぞあるぞ、と言われ続けていた音源がドバーッとリイシューされたので、これはこれで大変でした。何が大変って、入手するのも予算面で大変ですが、聴くのもボリュームがあるので大変。本業での行き帰りの長い通勤時間を活かして、聴き通しました。iPhoneさまさまです。 
 

Photo_2

 
バーチャル音楽喫茶『松和』のこのブログ、「ジャズ喫茶『松和』マスターのひとりごと・ブログ」も、2006年4月以来のブログ運営を経て、今年、累計150万ヒット越えを達成しました。最近は、一日平均1,000ヒットを恒常的に越えていて、ブログ運営サイドとしては、心強い限りです。

音楽が好きで、聴くのが好きで(演奏するのも好きですが、今は時間が無い)、アルバムをコレクションするのが好きで、その楽しい気持ち、感じた気持ちを皆さんと共有したくて、ブログの運営を始めました。しかし、当初はこれだけの方々が、我がブログにアクセスして、読んで貰えるとは思っていませんでした。本当に嬉しい限りです。ありがとうございます。

体調的には、大手術後2年が経過し、なんとか普通の生活が出来る様になってきました。もう元の身体に戻ることはないので、無理は絶対にできませんが、仕事も定時まで、土日はゆっくり休む、という規則正しい生活を心がければ、大きく破綻すること無く、日々を過ごせるようになってきました。来年もこの調子でいきたいと思っています。

新年のブログは1月2日に再開します。それでは皆様、良いお年を。

 
 

震災から3年9ヶ月。決して忘れない。まだ3年9ヶ月。常に関与し続ける。がんばろう東北、がんばろう関東。自分の出来ることから復興に協力し続ける。 

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2014年12月29日 (月曜日)

ピアノ・トリオの代表的名盤・42

ジャズのアルバム蒐集の中で、今年、最後の成果であった。ずっと探していた。というか、CDとして廃盤になって久しく、中古盤も万円単位の値が付く中で、半ば入手を諦めていたアルバムが幾枚かある。

そんなアルバムの中で、奇跡的にリイシューされたアルバムが、Steve Kuhn『Life's Magic』(写真左)。1986年の録音。ちなみにパーソネルは、Steve Kuhn (p), Ron Carter (b), Al Foster (ds)。ヴィレッジ・ヴァンガードでのライヴ音源。もともとの原盤はBlack Hawk。

ピアノのスティーブ・キューンのピアノは、端正でリリカル、しなやかで耽美的。ダイナミックさも兼ね備え、適度にメリハリあるピアノタッチは実に典雅なもの。そんなキューンのピアノを思いっきり堪能出来るライブ音源がこの『Life's Magic』。

実はLPで所有したのだが、そのうち、CDリイシューされるだろうと、10年ほど前に売ってしまった。カセットテープにダビングしていたのだが、テープが破損してしまった。それ以来、この音源とは縁が全く無かった。というか、CDリイシューされない。

しかし、2012年10月に米国でCDリイシューされたという情報を得たのが、今年の初め。Amazonに走ったが、既に新品の在庫は無かった。しかし、気になることと言えば、アルバム・ジャケットのデザインが違うこと。もともとのオリジナルのデザインは、写真の右。今回リイシューのデザインは写真左。
 

Steve_kuhn_lifes_magic

 
ふと疑惑が生じる。本当に、1986年ビレバガ録音の『Life's Magic』の音源なのか。マスターテープから起こしたリイシューCDなのか。もしかしたら、内容の全く異なるパチモンかもしれないし、LP音源からダビングした偽CDのリイシューかもしれない。

しかし、ネットとは便利なもので、このアルバム・ジャケット違いのCDリイシュー盤は、正に1986年ビレバガ録音の『Life's Magic』の音源で、ちゃんとマスターテープからのCD化であることが判明。しかし、再発の情報が無い。

その待望の再発の報に接したのが、今年の11月。Amazonで米国にてCD再発を発見。即ポチッとな、である(笑)。そして、目出度く、この12月の初旬にCDゲットと相成った。幸せな一時である(笑)。

内容的には全く申し分無いピアノ・トリオ盤である。1986年当時で、既にジャズ・レジェンドであるベースのロン・カーター、ドラムのアル・フォスターをバックに従えて、端正でリリカル、しなやかで耽美的なキューンのピアノが乱舞する。ライブ音源ということもあって、ダイナミックさも兼ね備えて、それはそれは素敵なトリオ演奏である。

いや〜諦めずに頑張って探し続けて良かった。今年、最後の成果である。アルバム・ジャケットが異なるのが残念なのだが、CD音源が確保できただけでも嬉しい限りである。長くアルバム蒐集をやっていると、こういうことがあるから止められない(笑)。

 
 

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2014年12月28日 (日曜日)

ピーターソンのソロ・ピアノ盤

心ない方は、オスカー・ピーターソンを「テクニック優先のスイングの権化」と呼ぶが、とんでもないと僕は思う。「上手すぎて面白く無い」などという、思いっきり的外れな評論もある。とんでもないことだ、と僕は思う。

このソロ・ピアノのアルバムに耳を傾けて欲しい。Oscar Peterson『My Favorite Instrument』(写真左)。1968年4月、西ドイツのHans Georg Brunner-Schwer Studioでの録音。趣味性の高いMPSレーベルからのリリースである。

卓越したテクニックに裏付けされた、素晴らしいジャズ・ピアノの世界がここにある。良く動く右手と、それに呼応するように、負けずに良く動く左手。これだけ、よく動く両手は、驚異的ですらある。このピーターソンのピアノこそが、ジャズを芸術と言わしめるに足るものだ、とほとほと心から感心してしまう。

趣味良くスイングし、恐らくはジャズ・ピアニストの中で、総合的に見てナンバーワンのテクニックを駆使して、バリバリと弾きまくる。それでいて耳に五月蠅くない。アドリブ・フレーズの歌心が満載なのだ。ピーターソンは単に高いテクニックだけのピアニストでは無い。
 

My_favorite_instrumant

 
さて、このピーターソンのソロ・ピアノ盤『My Favorite Instrument』、邦題「ソロ!!」の内容について触れておくと、1曲目のハードバップ時代の雰囲気満載の「Someone to Watch over Me」がまず耳を惹く。ガーシュイン作曲のスタンダード曲だが、ピーターソンは、スタンダード曲のアレンジが実に上手い。

2曲目「Perdido」のパワフルなスイング感、4曲目「Who Can I Turn To (When Nobody Needs Me)」、6曲目の「I Should Care」のバラード表現の美しさ、そして、ラストの「Take the "A" Train」のリラックスした楽しさ、収録されたどの曲も素晴らしいものばかり。とりわけ、個人的には7曲目の「ルルが町にやってくる(Lulu's Back in Town)」が大のお気に入りだ。

素晴らしいソロ・ピアノ盤です。ソロ・ピアノを紹介するジャズ本や雑誌には、そのタイトルが挙がることがあまり無いのが意外です。オスカー・ピーターソンのピアノが如何にオーソドックスで、如何に純ジャズ志向なのか、よく判るソロ・ピアノ盤です。僕は、このソロ・ピアノ盤で、オスカー・ピーターソンがお気に入りの一人になりました。

 
 

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2014年12月27日 (土曜日)

エバンス者には「聴く価値あり」

久し振りにBox盤を一気聴きした。一気聴きとは言っても、1日1枚、計8日でCD8枚。8枚組Box盤を8日間で一気聴きしたことになる。現在、頭の中はビル・エバンスだらけである(笑)。

そのBox盤とは、Bill Evans『The Secret Sessions』(写真左)。ビル・エバンスの熱狂的ファンが私的に録音した音源。マイク・ハリス&エヴァリン・ハリス夫妻が、ズタ袋の中に隠し持った小型テレコによって私的に録音されたもの。録音場所は固定されていて、これが、ニューヨークのライブスポット、Village Vanguard(ビレッジ・ヴァンガード)と言うのだからビックリ。

しかも、1966年から1975年の間、約10年に渡る間、ずっとビル・エバンス・トリオの演奏を、つまりは「隠し撮り」していた。10年間に渡るビル・エバンス・トリオの変遷が記録されているのだ。エヴァンスが同クラブに出演すると、週2回出かけてテープを回す。赴任先の西海岸からトンボ帰りをしてまで録音を続けたとか。

ファンの気持ちもここまでくると「執念」を感じる。しかし、その「執念」のお陰で、1966年から1975年の間、約10年の間のビル・エバンス・トリオのライブ・スポットでの演奏、つまりは正式なレコーディングでは無い「生の、真の姿の、普段の」演奏の様子を追体験することが出来るのだ。これは素晴らしいことである。

でも、しかし当然のことながら、この録音って、ビル・エバンスによって正式に認められた録音では無い。つまりは違法録音。それでも、その内容の重要性に、エバンスの死後、エバンス財団が許可を出して、Milestones社長であるOrrin Keepknewsがリリースに踏み切ったという曰く付き。これも素晴らしいことである。

素晴らしいことが積み重なって、今、僕達は、このBox盤『The Secret Sessions』を通じて、当時のビル・エバンス・トリオの、正式なレコーディングでは無い「生の、真の姿の、普段の」演奏の様子を追体験することが出来るのだ。

しかも、小型テレコでの録音とは言え、あのUHER(ウーヘル)製の小型テレコでの録音なので、音は意外と良い状態なんですね。もっとチープな音質を想像していたので、この音質にはビックリしました。十分に鑑賞に耐えるレベルです。特に、1970年代に入ってからは、テープの質も向上したんでしょう。想像以上にかなり良い音で録音されています。
 

Bill_evans_secret_sessions

 
さて、この『The Secret Sessions』を一気聴きして感じるのは、正式なレコーディングでは無い「生の、真の姿の、普段の」演奏でありながら、その時その時のビル・エバンス・トリオの演奏のレベルは相当に高いものだ、ということ。そして、コンスタントに高いレベルの演奏内容を維持しつつ、しかも、アレンジやテンポ、演奏の雰囲気などが、ビル・エバンス・トリオならでは個性で、その個性がずっと維持されていること。

さすが、一流のレベルのジャズメンの演奏って、普段の演奏でもそのレベルは高く、その個性は確実に維持されているんですね。実は、個々の演奏毎に、また時期を跨がって、もっとバラツキがあると思っていました。が、そんなバラツキなんてどこにも無い。いや〜、プロのジャズ演奏のレベルの高さを再認識しました。

そして、このBox盤『The Secret Sessions』に収録されている1966年から1975年の間、ベースはほとんどエディ・ゴメスが務め、ドラムが定期的に変わっていく、というパーソネルの変遷で、ビル・エバンス・トリオが演奏する音の傾向や個性が変化するのは、「ドラムの存在と個性」が重要な鍵を握っている、ということがよく判ります。

ビル・エバンスにとっては、ベーシストは、スコット・ラファロ、エディ・ゴメス、マーク・ジョンソンが絶対的な存在であって、この3人のベーシストは良く似通ったところがあって、僕が思うに、ビル・エバンスに合ったベーシストは、この3人のベーシストの音しかない。ビル・エバンス・トリオにとって、ベースの音は変化してはいけないのだ。

しかし、ドラムは違う。その時、その時期によって、ドラムを変えることによって、トリオの音の個性や変化させる、ドラムはビル・エバンス・トリオにとっての「変化の源、変化の鍵」なのだ。この1966年から1975年の間のこのBox盤『The Secret Sessions』に記録されている音を聴けば、それがよく判る。

収録された10年間、エバンスのピアノ・タッチは全く変わりません。これも、このBox盤を聴き通して、初めて実感出来る感覚です。ビル・エバンス者、いわゆるマニア向けのBox盤なんですが、逆に、ビル・エバンス者にとっては、一度は聴く価値のあるライブBox盤だと思います。

 
 

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2014年12月26日 (金曜日)

「看板に偽りあり」と言うけれど...

『The Complete Bitches Brew Sessions』(写真)。マイルスが1969年8月から70年2月に残したスタジオ録音を集め、1998年に発売された4枚組ボックス盤である。

このボックス盤は発売当時、思いっきり物議を醸し出した。タイトルを見ると、『Bitches Brew』に用いられた未編集テープや別テイク等の素材を集めたもの、という印象を受けるが、それは間違いで、本作は『Bitches Brew』製作当時の、つまり、1969年8月から70年2月に残したスタジオ録音楽曲を集めたもの、なのである。

とある著名な評論家が「看板に偽りあり」と糾弾したこともあって、このアルバムは「偽りの紛い物」扱いされていて、実に気の毒な境遇にある。中古品に至っては二束三文的な価値しか与えられず、その高いレベルの内容の割に不遇なボックス盤の代表格になってしまった。

収録曲は以下の通りになる。

Disc one

    "Pharaoh's Dance" (Joe Zawinul) - 20:06
    "Bitches Brew" (Miles Davis) - 26:58
    "Spanish Key" (Davis) - 17:34
    "John McLaughlin" (Davis) - 4:22

Disc two

    "Miles Runs the Voodoo Down" (Davis) - 14:01
    "Sanctuary" (Wayne Shorter) - 10:56
    "Great Expectations" (Davis - Zawinul) - 13:45 available on Big Fun
    "Orange Lady" (Zawinul) - 13:50 available on Big Fun
    "Yaphet" (Davis) - 9:39 previously unreleased
    "Corrado" (Davis) - 13:11 previously unreleased
 

The_complete_bitches_brew_sessions

 
Disc three

    "Trevere" (Davis) - 5:55 previously unreleased
    "The Big Green Serpent" (Davis) - 3:35 previously unreleased
    "The Little Blue Frog" (alternate take) (Davis) - 12:13 previously unreleased
    "The Little Blue Frog" (Davis) - 9:09 previously unreleased
    "Lonely Fire" (Davis) - 21:09 available on Big Fun
    "Guinnevere" (David Crosby) - 21:07 available on Circle in the Round

Disc four

    "Feio" (Shorter) - 11:49 previously unreleased
    "Double Image" (Zawinul) - 8:25 previously unreleased
    "Recollections" (Zawinul) - 18:54 previously unreleased
    "Take It or Leave It" (Zawinul) - 2:13 previously unreleased
    "Medley: Gemini / Double Image" (Zawinul) - 5:52 available on Live-Evil

 

見渡せば、結構「previously unreleased(未発表曲)」の表記があって、意外とこのボックス盤はブート盤などに精通した「ヲタク」なマイルス者では無く、普通のマイルス者にとっては、『Bitches Brew』製作当時の、つまり、1969年8月から70年2月に残したスタジオ録音楽曲の中で、正式な音源として「未発表な」ものが聴ける、貴重なボックス盤だったりするのだ。

この「previously unreleased(未発表曲)」の表記がある曲は、ちょっとテンションが低く、漂う様な雰囲気の曲が多いのだが、意外にこれが良い。1970年代のプログレッシブ・ロックを聴き込んだ僕としては、この1970年前後の独特のプログレッシブな「浮遊感」が良いんですね。シタールの音も意外としっくりきます。

確かに「The Complete」の文字に偽りあり、なんだろうが、それはそれとして、もう少し、その内容について正確に伝えるべきだろう。ブート盤など、おいそれ手の出せない、普通のマイルス者にとっては、これはこれで、入手して一聴する価値のあるボックス盤だと僕は思う。

 
 

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2014年12月25日 (木曜日)

「しみじみ」とするジャズが良い

年末である。今年もあと僅かである。こういう時期は、聴いて「しみじみ」とするジャズが聴きたい。「しみじみ」とする音色と言えば、やはり「管楽器」だろう。そう、サックスだ。サックス系の音色で「しみじみ」したい。

ということで選んだアルバムがこれ。Roland Kirk『The Inflated Tear』(写真左)。1967年11月27〜30日の録音。「ジャズの虚無僧」、ローランド・カークの名盤である。ちなみにパーソネルは、Ron Burton (p), Steve Novosel (b), Jimmy Hopps (ds), Dick Griffin (tb), そして、Roland Kirk (tenor saxophone, manzello, stritch, clarinet, flute, whistle, cor anglais, flexafone)。

ローランド・カークは、マルチ・リード&マルチ・インストルメント奏者であるが、やはり、まずはテナーが秀逸。冒頭の「The Black and Crazy Blues」のゆったりとした、漢字で書くと「哀歌」と書くような、思いっきりブルージーなテナーの音色が心を揺さぶる。思わず「しみじみ」する。とこれは、テナーとクラリネットの2本吹きの効果が出ているのかなあ。

この1曲目の「The Black and Crazy Blues」については、ローランド・カークは「俺が死んだらこの曲を流して欲しい」と語っていたという。なるほど、ニューオーリンズ伝統の葬送行進曲に則った曲なのね。感涙の名演、名曲です。ほんと、心が揺さぶられる様に「しみじみ」します。
 

The_inflated_tear

 
そして、ローランド・カークはフルートの名手でもある。2曲目の「A Laugh for Rory」を聴けば、その腕前が良く判る。なんと愛らしいフルートだろう。これがあの強面の「ジャズの虚無僧」、ローランド・カークが奏でる音だろうか。カークの強面な表情とこのフルートの愛らしい音色とのギャップが激しい。でも、これが良い。あっけらかんと「しみじみ」する。

そして、5曲目のタイトル曲「The Inflated Tear」。これがまた、心揺さぶられる「しみじみ」さ。哀愁の咆哮です。複数管楽器の同時吹きで、思いっきり個性的で重厚なハーモニーが耳に押し寄せます。音として「怒り・悲しみ・喜び」を織り交ぜ、マルチ・リード&マルチ・インストルメントで唄い上げた、感涙の名演、名曲です。

この「しみじみ」系の名演、名曲が要所要所に配置されて、他の曲は聴いていて楽しいモダン・ジャズの演奏の数々。しみじみしつつも、躍動的な演奏にもポジティブに心揺さぶられる。いやはや、この『The Inflated Tear』って、聴けば聴くほど、その良さにどんどん填まっていく、そんなジャズ名盤です。

ローランド・カークのリーダー作の中で、普通に聴いていて、あまり違和感の無いアルバムがこの『The Inflated Tear』だと思います。ローランド・カークの入門盤としても最適でしょう。そして、「しみじみ」とする名曲、名演を聴きたければ、このアルバムはイチ押しの一枚です。

 
 

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2014年12月24日 (水曜日)

今日のフリー・ジャズ入門盤...2

「フリー・ジャズ」とは何か。ジャズの演奏には「ルール」いわゆる「演奏の方法や表現の仕方」があります。この「ルール」は、その時代その時代で、多数決によって決められた「ルール」であって、その「ルール」では「自分ならでは表現できない」と主張するミュージシャンが出てくるのは当然だと思います。

じゃあ、自分だけの「自由なルール」を作ってしまおう、ということで、突如、現れたのがフリージャズです。この新しい表現方法は、1960年代、瞬く間にジャズ界に浸透していくことになります。ジャズの歴史の中では、避けては通れない、重要なジャズの演奏スタイルの一つです。

しかし、フリー・ジャズの演奏はよほどジャズを聴き慣れていないと、聴くのが苦痛以外の何物でもありません。単純に、心のおもむくまま、感じるまま、楽器を吹き鳴らしているとしか、思えないですからね。
 
秩序も何もあったもんじゃない、聴き続けるのが苦痛になる、そんな厄介なジャズのジャンルが「フリー・ジャズ」です。今回もそんな「フリー・ジャズ」のジャンルの演奏から、入門盤として取っつき易いアルバムを一枚ご紹介します。

そのアルバムとは、Albert Ayler『Prophecy』(写真左)。「Cellar Cafe」のライブ録音。1964年6月の録音。ちなみにパーソネルは、Albert Ayler (ts), Gary Peacock (b), Sunny Murray (ds)。

アルバート・アイラーは、1960年代に現れたフリー・ジャズの旗手。彼のブロウイング(吹きっぷり)こそが、フリー・ジャズと感じ入ってしまうほど、印象的でフリーなテナーです。しかしながら、1970年11月、突如、行方不明となり、25日、ニューヨークのイースト川で死体が発見されました。公式には溺死とされていますが、他殺説もあり、その真実は謎のままです。
 

Albert_ayler_prophecy

 
アルバート・アイラーが、いかにフリー・ジャズの重要人物のひとりであったか、が理解できるエピソードのひとつとして、ジョン・コルトレーンの来日時のインタビューが挙げられます。コルトレーンは、もっとも自分に影響を与えた音楽家二人としてオーネット・コールマンとともにアイラーの名前を挙げていたそうです。

確かに僕もそう思います。アイラーのフリー・インプロビゼーションを聴いていると、残念ながら、コルトレーンは足下にも及ばない。コルトレーンは、ハード・バップからフリー・ジャズまで、総合点で最高のテナー奏者。アイラーは、フリー・ジャズという限定された演奏ジャンルでは、明らかにコルトレーンの上を行く存在でした。

この『Prophecy』は、そのアイラーの優れたフリー・ブロウイングの一端を感じることが出来る好盤のひとつ。代表作「Ghosts, First Variation」をあくまでもシンプルに、自由に歌い上げるアイラーは美しい。

フリーな演奏でありながら、印象的なフレーズあり、メロディアスなフレーズあり、フリーな中に不思議な秩序が突如現れ、フリーな演奏はあくまでも自由。心の中から沸き立つようなフレーズの連続は十分な聴き応え。

良いライブ・アルバムです。でも、「ド」フリーな演奏ですから、ジャズ初心者の方々には、ちょっとお勧めしかねます。僕も、ジャズ初心者の時、フリー・ジャズって、さっぱり判りませんでした。

ジャズを聴き続けて、10年くらい経ってからですかね、何となく、抵抗なくすんなり聴けるようになったのは・・・・。ですから、このアルバムはジャズ中級者向け。 

 
 

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2014年12月23日 (火曜日)

ルーさんのアルトの本質を感じる

ルー・ドナルドソンはブルーノートの看板アルト・サックス奏者である。日本ではあんまり人気が無い。おそらく、アルト・サックスと言えば「チャーリー・パーカー」が絶対と信じて疑わない、1960年代から1970年代のジャズ評論家のお陰だと思う。歌心があってポップで聴き易いルーさんのアルトは「俗っぽい」。

しかし、そんな評価は気にすることは無い。ジャズの場合、まずは自分の耳で聴いてみること。ジャズ評論家の評価は参考程度に留めておけば良い。まずは自分の耳で感じること。そして、ルーさんのアルトの本質を感じることが一番。そんなルーさんのアルトの本質を感じることが出来るアルバムがこれ。『Lou Donaldson Quartet Quintet Sextet』(写真左)。ブルーノートの1537番。

カルテットのパーソネルは、Lou Donaldson (as), Horace Silver (p), Gene Ramey (b), Art Taylor (ds)。1952年6月20日の録音。

クインテットのパーソネルは、Blue Mitchell (tp), Lou Donaldson (as), Horace Silver (p), Percy Heath (b), Art Blakey (ds)。1952年11月19日の録音。

セクステットのパーソネルは、Kenny Dorham (tp), Matthew Gee (tb), Lou Donaldson (as), Elmo Hope (p), Percy Heath (b), Art Blakey (ds)。1954年8月22日の録音。
 

Lou_donaldson_456

 
いずれの演奏もアレンジはビ・バップのアレンジの域を出ていない。しかし、演奏の雰囲気はハード・バップに近い。そんな中で吹き上げるルーさんのアルト・サックスは、既に歌心満点でポップで聴き易い。ビ・バップの様に決してテクニック優先に走らない。聴き手を意識し、演奏を聴いて貰うという意識で吹いているのだろう。その辺がビ・バップの演奏とは一線を画する。

ルーさんは、ブルーノートの総帥、プロデューサーのアルフレッド・ライオンがルーさんをスカウトする時、「パーカーの様に吹けるか」と訊いたそうだ。ルーさんは「もちろん」と応えた。しかし、ルーさんは、パーカーの様な音色ではあるが、ルーさんはルーさんならではの個性でアルトを吹いた。

ルーさんのアルトは、パーカーの様な音色ではあるが、パーカーと同様、テクニックも優秀ではあるが、パーカーの個性をコピーした様には吹かない。この辺にルーさんの矜持を強く感じる。ルーさんはプロである。さすが、聴かせてなんぼ、のプロのジャズメンである。

このカルテット、クインテット、セクステットの3つの編成で演奏するルーさんであるが、どの編成でも歌心があってポップで聴き易いルーさんのアルトは全く変わらない。これが素晴らしい。己の個性をしっかりと理解し、しっかりと表現する。ルーさんのアルトは聴き心地満点。僕はこのアルトがお気に入りだ。

 
 

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2014年12月22日 (月曜日)

今日のフリー・ジャズ入門盤は...

フリー・ジャズはジャズ初心者には荷が重いと思っています。ずばり、個人的な意見を言わせていただくと、フリー・ジャズの演奏は、よほどジャズを聴き慣れていないと聴くことが苦痛以外の何物でもありません。

単純に心のおもむくままに感じるままに楽器を吹き鳴らしている、としか思えないですからね。秩序も何もあったもんじゃない、聴き続けるのが苦痛になる、そんな厄介なジャズのジャンルが「フリー・ジャズ」です。

しかも、ちゃんとしたステレオ・セットで聴かないと、その演奏の素晴らしさが実感出来ない、という問題もあります。フリー・ジャズの鑑賞は音の分離と粒だちが良くないと単なる音の塊となって、雑音、ノイズに聴こえたりするので、できればちゃんとしたステレオ・セットでの鑑賞をお勧めします。

さて、今日のフリー・ジャズ入門盤は、Pharoah Sanders『Black Unity(ブラック・ユニティ)』(写真左)。

1971年11月の録音。パーソネルは、以下のとおり。Marvin Peterson (tp, per), Pharoah Sanders (ss, ts, balaphone), Carlos Garnett (ts, fl), Joe Bonner (p), Stanley Clarke, Cecil McBee (b), Norman Connors, Billy Hart (ds), Lawrence Killian (cga, talking d, balaphone)。
  
パーソネルの半分は知らないミュージシャン。でも、ペットはマービン・ピーターソン、ベースは、セシル・マクビーとスタンリー・クラークなど若手精鋭を起用、押さえるところは押さえていて、期待の持てるラインアップです。
 

Black_unity

  
ファラオはコルトレーンの晩年に行動を共にし、コルトレーンの死後、後継者として一番名乗りを挙げたサックス奏者。力強いブロウ、スピリチュアルな演奏、長いフレーズと極端に短いフレーズを組み合わせたグニャグニャ・ラインが特徴。このグニャグニャ・ラインが「はまると癖になる」。

このアルバムは、なんと37分23秒の長尺、タイトル曲「Black Unity」の1曲のみ。LP時代はA面、B面に2分割されていたので、CDになってから、この曲は切れ目無く通して聴けるようになった。よって、この「Black Unity」はCDで手に入れるべきでしょう。

完全に「自由気まま・勝手気まま」に演奏する「フリーをはき違えた」演奏では無く、混沌とした中にもリズムとビートの底には秩序があり、実に聴き応えがあります。ツインテナー、ツインベースにツインドラムの編成で、冒頭からブラック・ファンク炸裂。疾風怒濤、音の塊のようなグルーブ感でグイグイ引っ張りながら、全員、全速力で走り始めます。

そして、徐々に姿を見せるファラオのサックス。バリバリバリバリと吹きまくります。長いフレーズと極端に短いフレーズを組み合わせて、グニャグニャグニョグニョと吹き上げながら、時々咆哮ようなサックスが突き抜け、ツインテナーにツインベースにツインドラムの編成が奏でる怒濤のバック演奏を従えて、思いっきり疾走し続けます。

なかなか格好良いフリー・ジャズです。もちろん、ジャズ初心者の方には「聴くな」とは言いませんが、聴く時は十分、精神状態と体調に気をつけて聴いて下さい。体に合わない、と思ったら、我慢せずに聴くのを中止して下さいね(笑)。

 
 

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2014年12月21日 (日曜日)

Blue Noteの一味違うXmas盤

ブルーノート・レーベルは、1970年代の「純ジャズ氷河時代」に活動停止してしまう。しかし、1985年、純ジャズの復権と共に活動を再開、旧来からの「ブルーノート」のブランド・イメージをしっかり保持しつつ、最高質の「その時代の最先端のジャズ」をリスナーに供給する姿勢は、まさに「ブルーノート・レーベル」そのもの。

この新生ブルーノートの活動には心強いものがあるのだが、このブルーノート・レーベルが、単独リーダー作では無いが、ブルーノートのスター演奏家達が演奏する数々のクリスマス・ソングを集めた「コンピもの」がこのアルバムである。タイトルが『Yule Struttin'(A Blue Note Christmas)』(写真左)。収録曲は以下の通り。

1. Vauncing Chimes - Horizon, Bobby Watson
2. Silent Night - Stanley Jordan
3. Christmas Song - Lou Rawls
4. I'll Be Home for Christmas/Sleigh Ride - Eliane Elias
5. Winter Wonderland - Chet Baker
6. Merrier Christmas - Benny Green
7. Merrier Christmas - Dianne Reeves
8. O Tannenbaum -John Hart
9. Jingle Bells - Count Basie
10. Chipmunk Christmas - John Scofield
11. God Rest Ye Merry Gentlemen - Joey Calderazzo
12. Have Yourself a Merry Little Christmas - Dexter Gordon
13. Silent Night - Benny Green
14. Little Drummer Boy - Rick Margitza
 

Yule_struttin

 
まずは聴いていただきたい。1曲目のボビー・ワトソン&ホライズンの「ヴァンシング・チャイムス」のメインストリームな演奏。今の時代のジャズ的な演奏に乗って演奏される「ヴァンシング・チャイムス」は実に楽しい。

そして、ギターによる驚異のタッピング奏法で一時代を風靡したスタンリー・ジョーダンの「きよしこの夜」の、素晴らしく、ブルース・フィーリング溢れるソロを聴く頃には、この新生ブルーノートのクリスマス・コンビアルバムは「ただ者ではない」と感じる。

4曲目の「クリスマスをわが家で〜そり遊び」も、イリアーヌの繊細なピアノでもって、前半はリリカルなソロで、後半は、ファンキーなラテン・タッチの対比が素晴らしい。

選曲もひねりが効いていて、「もっとメリー・クリスマス」は、セロニアス・モンクの作なる不思議な響きのする秀作で、2パターンのアレンジを聴き比べさせてくれる。ひとつでは、ベニー・グリーンが入魂のソロで聴かせ、もう一方では、ダイアン・リーブスのボーカルで聴かせる、といった憎い趣向。

10曲目の「チップマンク・クリスマス」などは、ギンギンのジャズ・ギタリスト、ジョン・スコフィールドが、ストレートで小気味の良い、豪快なジャズ・ギターでクリスマス・ソングを奏でる。

そして、大ベテランのテナー奏者デクスター・ゴードンの「ハヴ・ユアセルフ・ア・メリー・リトル・クリスマス」は、僕のお気に入り。最高潮の時のデックスには及ばないけど、「歌を歌うようにテナーを吹く」存在感のあるデックスは健在だ。

さすが、ブルーノート・レーベルのクリスマス・アルバムは、いつの時代もひと味違う。

 
 

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2014年12月20日 (土曜日)

Xmasの季節のユーミン盤です

1970年代から80年代前半のユーミンのアルバムには、季節性を感じさせる名曲が多数収録されていて、これがそれぞれに絶品。それぞれの曲を聴けば、その曲の中で唄われる季節を感じ、その季節の雰囲気を追体験する。特に、その歌詞の世界は絶品であり、この時代のユーミンは「詩人」であった。

さて、今年もそろそろXmasである。最近はテレビや商店街での派手なXmasイベントや装飾が控えめになって、意外と静かな年の瀬である。僕としては好ましいことで、Xmasの季節は厳かに過ごして然るべきだと思っている。

さて、このXmasのシーズンになると、必ず聴きたくなるユーミンのアルバムがある。バリバリに季節性を感じさせる名曲「ロッヂで待つクリスマス」が冒頭に入っている、そのアルバムとは『流線形’80』(写真左)。
 
結婚を機に一旦活動を停止、1978年3月に『紅雀』で、荒井由実から松任谷由実に名前を変えてカムバックしたユーミンが、8ヶ月という短期間でリリースした、松任谷由実名義のアルバムとしては2枚目の『流線形'80』。

アルバム全体の雰囲気としては、ユーミンとしては絶好調とは言い難い内容ではある。日本の新しい感覚のポップスもあれば、意外と俗っぽい歌謡ポップス調の曲もある。どちらの方向に行こうとしているのか、よく判らないアルバムではある。

しかし、この「日本の新しい感覚のポップス」の類の曲は絶品である。「真冬のサーファー」は、山下達郎がバック・コーラスに参加した絶品。山下達郎アレンジのコーラス・ワークは渾身の出来である。このコーラス・ワークはそれまでの日本には無かったものだ。
 

Ryusenkei_80

 
「入り江の午後3時」は、軽快なポップス・ソング。この穏やかな軽やかさは米国には無い。日本ならではの穏やかな軽やかさ。暖かい日だまりの様な軽やかさ。ユーミンの面目躍如な名曲。「かんらん車」は、世田谷・二子玉川園の観覧車をモデルにした、雪も舞う寒い冬に独りで閉園前の観覧車に乗るという、まさにユーミン・ワールド。

そして、このXmasのシーズンを彷彿とさせるユーミンの名曲が「ロッヂで待つクリスマス」。これはどこから聴いても名曲。明らかに、このXmasのシーズンにぴったりの、聴けばこのXmasシーズンを必ず思い出させてくれる名曲中の名曲である。

逝った人たちへの「レクイエム」が心に沁みる。とにかく歌詞の世界が絶品である。アレンジも厳かでしみじみとしていて絶妙。 
  

小さなつむじ風が 尾根をかけ降りるたびに 縞模様広がる 
月のゲレンデ 夢を見るように 私はガラスにほほよせる

ゲームにはしゃぐ人も 炎を見ていた人も いつか表に出て
熱のある日は 部屋に残された 子供の私が蘇り座ってる

君の君の声のこだま追いかけ 窓もドアも越えて 心は滑る
やがて響きわたる 花火の音を ロッヂで待つクリスマス

 
ライトアップされた図書館脇のクリスマス・ツリーを眺めながら、聖歌隊の賛美歌を聴きつつ、遠い空の下にいる人のことを慮りながら、しみじみとその季節感を噛みしめていた学生時代を思い出す。さあ、あと4日でXmasイブ。

 
 

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2014年12月19日 (金曜日)

ロリンズ自然体のフュージョン盤

2008年から延々と続いているのであるが、ソニー・ロリンズのリーダー作の聴き直しを再開した。再開は1970年代終盤のアルバムからである。今回のアルバムは、Sonny Rollins『Don't Ask』(写真左)。

1979年5月の録音。ちなみにパーソネルは、Sonny Rollins (ts, lyricon), Mark Soskin (p, key, syn), Larry Coryell (el-g), Jerome Harris (el-b), Al Foster (ds), Bill Summers (conga, per)。ギター好きのロリンズは、このアルバムで、エレギの鬼才、ラリー・コリエルを選んでいる。

コリエルを選んで、さぞかしハードなエレ・ジャズが展開されるかと思いきや、実にポップな純ジャズが展開される。このアルバムのポップさは、ロリンズのリーダー作の中でも屈指のポップさ。聴き心地の良いこと、この上無し。歌心満点のロリンズのブロウが映えに映える。

ロリンズのマイルストーン第8作。「Easy Living」以来2年ぶり。1979年当時は、ジャズ界はフュージョン・ジャズのピーク。ソフト&メロウなフュージョン、聴き易さ満点のエレ・ジャズが席巻し、そんな中でのロリンズのリーダー作である。しかし、さすがはロリンズ。フュージョン・ジャズには染まらなかった。

冒頭の「Harlem Boys」が実に良い雰囲気を醸し出す。聴き易いポップなフレーズがフュージョンっぽいが、ロリンズは決して、フュージョンに迎合しない。バックのリズム・セクションも同じだ。叩き出すリズム&ビートはしっかりとした純ジャズ基調。ジェローム・ハリスのエレベとアル・フォスターのドラムが意外と硬派に純ジャズなビートを叩き出す。
 

Dont_ask

 
エレギの鬼才、コリエルの参加は2曲目から。2曲目はこれが聴きもの。コリエルとロリンズのデュオ演奏。コリエルの鋭く素早い反応のギター・フレーズに対して、ロリンズがしっかと受け止めつつ、ロリンズ節を前面に押し出して、堂々と応じているところが実に良い。横綱相撲のロリンズが悠然と吹きまくる。

そうそう4曲目の有名スタンダード曲「My Ideal」もコリエルとロリンズのデュオ演奏。ロリンズの悠然としたブロウに、エレギの鬼才、コリエルの切れ味の良いエレギが反応素早く応える。悠然自若としたロリンズに、エレギの鬼才、コリエルの切れ味鋭いフレーズが寄り添うように伴奏する。これも「聴きもの」。

このアルバムのロリンズは、当時、大流行したフュージョン・ジャズに迎合すること無く、純ジャズな演奏を繰り広げるが、演奏の雰囲気は実にポップ。聴き易く、心地良く、耳当たりが良い。そういうところはフュージョン・ジャズ。演奏するフレーズの雰囲気だけがフュージョン・ジャズの「ええとこ取り」をしている。

ロリンズの個性が全開、ジャズのトレンドを超越した、ロリンズ節の世界がこのアルバムに満載です。ロリンズの自然体のジャズ。ロリンズの自然体のフュージョン・ジャズでしょう。とてもポップな演奏で、ジャズ者の方々以外にも、十分にアピールする演奏集だと思います。

 
 

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2014年12月18日 (木曜日)

こんなアルバムあったんや・39

ジャズは、かなりの面で「何でもあり」の音楽ジャンルで、どう考えても相性が良くないでしょう、という楽器同士が共演したりして、しかも、それがなんと、成功を収めることがしばしばある。

例えば、このアルバムなどがその好例。Gary Burton & Stéphane Grappelli『Paris Encounter』(写真)。1969年11月のフランスはパリでの録音。ちなみにパーソネルは、Gary Burton (vib), Stéphane Grappelli (vl), Steve Swallow (el-b), Bill Goodwin (ds) 。

ジャズ・ヴァイブ奏者のゲイリー・バートンとジャズ・バイオリン奏者のステファン・グラッペリという異色の組みあわせによるアルバムである。バートンが欧州ツアー中に実現したセッションで、バートンのバンドにグラッペリがゲスト参加したという形で録音されたセッションの記録。

和音でバッキングを司るピアノが無く、ヴァイブとバイオリンという高音域&旋律楽器同士がフロントを張るという、全く異色の編成。どちらかのテクニックが劣っていたり、どちらかの楽器に協調性が欠落していたりすると、まともに聴けたもんじゃなくなる危険性を孕んだ編成である。

しかし、このアルバムでの、ヴァイブのバートンとバイオリンのグラッペリは大変優れた演奏家であることがよく判る。テクニックは二人とも飛び抜けて優秀、演奏の中での協調性は抜群。お互いの楽器を損ねることなく、お互いの楽器をたてることで、一期一会の相乗効果を生み出している。
 

Paris_encounter

 
冒頭の「Daphné」を聴くと、二人の優秀性がよく判る。ヴァイブとバイオリン、速弾きは出来ないんじゃないか、と揶揄されやすい楽器なんだが、どうしてどうして、高速パッセージをユニゾン&ハーモニーで繰り出す繰り出す。雰囲気はビ・バップ。一糸乱れぬユニゾン&ハーモニー。

2曲目は打って変わって、モード・ジャズの難曲「Blue in Green」。ヴァイブとバイオリンのモード演奏は聴いていて味わい深い。録音年1969年。ジャズはクロスオーバー・ジャズに差し掛かる頃。そんな時代に、このアーティスティックな演奏には目を見張る。

この冒頭からの2曲を聴いて判る様に、このアルバムは、単にバートンのバンドにグラッペリがゲスト参加したという、おざなりの邂逅セッションでは無い。バートンとグラッペリの思惑が一致した、実に野心的なセッションの記録である。

バックのリズム・セクションを務めるベースのスワローとドラムのグッドウインは、バートン・バンドのメンバー。このリズム・セクションの感覚は「新しい」。バートンはともかく、グラッペリがこの「新しい」感覚のリズム・セクションをバックに、新しい感覚のジャズ・バイオリンを弾きまくる。圧巻である。

このアルバム、『パリのめぐり逢い』などと甘ったるい邦題がついているが、内容は決して甘くない。逆に内容は硬派でアーティスティックである。録音当時としては、かなり「先進的な」内容。もとより、映画の「パリのめぐり逢い」のサントラとは全く関係が無い。ややこしい邦題を付けたもんだ(笑)。

 
 

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2014年12月17日 (水曜日)

フュージョン・ジャズは進化する

このアルバムを聴いて、僕は「うへ〜」と唸った。良い意味で心から感心したのだ。フォーマットはフュージョン・ジャズである。しかし、1970年代後半から1980年代前半、フュージョン・ジャズ全盛時代の音では無い。確実に進化している。

そのアルバムとは『FourPlay』(写真左)。フュージョン・ジャズの重鎮、ベテランの4人で結成された、大人のフュージョン・ジャズ・グループ。その名も「FourPlay(フォープレイ)」。そのフォープレイのデビュー盤である。1991年のリリースになる。

そのフォープレイのオリジナル・メンバーは、Bob James (key), Nathan East (b), Harvey Mason (ds), Lee Ritenour (g) の4人。いずれも、フュージョン・ジャズの重鎮であり、人気ミュージシャンであり、キーマンである。

しかし、この4人のメンバーの名前を見ていると、ありきたりな、大物ミュージシャン同士の「やっつけ感」満載の企画型セッションでは無いのか、と警戒してしまう。耳当たりの良い、差し障りの無いフュージョン・ジャズを「昔の名前で出ています」状態でピロピロやって終わってしまうような、内容の薄い企画盤では無いかと思ってしまう。
 

Fourplay_album

 
しかし、このデビュー盤『FourPlay』は違った。フュージョン・ジャズの重鎮、ベテラン4人の入魂のフュージョン・ジャズである。とにかく、演奏のレベル、テクニックが異常に高い。そして、フレーズの洗練度合いが高い。リズム&ビートも当時として新しい響き。いずれも1970年代後半から1980年代前半のフュージョン・ジャズのレベルは軽く凌駕している。

1991年のリリースなので、スムース・ジャズの範疇では無いのか、という声が聞こえるが、このアルバムの演奏を聴いてみると判るのだが、音と展開は、フュージョン・ジャズ独特のもの。決して、後のフュージョン・ジャズの発展形であるスムース・ジャズとは一線を画する。

このデビュー盤『FourPlay』を聴いて、フュージョン・ジャズは進化しているんやなあ、と感慨深く思った。フュージョン・ブームを学生時代、リアルタイムで体験した自分にとって、フュージョン・ジャズは過去のものだとばかり思っていた。スムース・ジャズに変化し、フュージョン・ジャズは過去のものになったと思い込んでいた。

しかし、この『FourPlay』の音を聴いてビックリ。僕は「うへ〜」と唸った。フュージョン・ジャズの音ではあるが、1970年代後半から1980年代前半のフュージョン・ジャズ全盛時代の音では無い。確実に、そして大胆に進化していたのだ。

 
 

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2014年12月16日 (火曜日)

聴いて楽しいルーさんのアルト

このアルバムは良い。スローなバラードから、歌心満点のミッドテンポの曲まで、ポジティブで明快なアルトが唄っている。実に聴いていて楽しい、聴いていて明るくなる。

そのアルバムとは、Lou Donaldson『Swing and Soul』(写真左)。ブルーノートの1566番。1957年6月の録音。ちなみにパーソネルは、Lou Donaldson (as), Herman Foster (p), Peck Morrison (b), Dave Bailey (ds), Ray Barretto (cong)。コンガ入りのカルテット。ルーさんのワンホーン・アルバムである。

まず、冒頭の「Dorothy」が絶品。このバラード曲が凄く良い。もともと歌心満点のルーさんのアルトである。その歌心満点なアルトが、バラードを吹き上げていく。悪かろうはずがない。バックのリズム・セクションは、1957年当時の有名どころでは無い。恐らく、ルーさんの馴染みのジャズメンなのだろう。このリズム・セクションも良い雰囲気でバッキングする。

もともとルーさんのアルトは、日本ではあまり人気が無い。ルーさんのアルトは、一派一絡げで「パーカー派」で括られる。違うんやけどなあ。良く聴けば判るんだが、ビ・バップの祖、アルトの神様、チャーリー・パーカーのアルトとルーさんのアルトとは全く「似て非なるもの」。

パーカーのアルトは神懸かったハイテクニックとスピードが命。フレーズは愁いを帯びたマイナー調が主。ルーさんのアルトは歌心満点。当然、高いテクニックもあるが、それよりも明るくポジティブなマイナーなフレーズが堪らない。パーカーは如何に難しいフレーズを如何に軽やかに吹くか、だが、ルーさんは聴くこと、聴かれることを前提に、判り易く明快なフレーズを吹き上げていく。
 

Lou_donaldson_swing_and_soul

 
ルーさんのアルトは、チャーリー・パーカーのアルトとは「似て非なるもの」。それがこのアルバム『Swing and Soul』を聴けばよく判る。ブルーノートの総帥、プロデューサーのアルフレッド・ライオンは、ルーさんをスカウトする時、「パーカーの様に吹けるか」と訊いたそうだ。ルーさんは「もちろん」と応えた。

ルーさんのアルトは、パーカーの様な音色ではあるが、パーカーの個性をコピーした様には吹かない。パーカーの様な音色ではあるが、テクニックも優秀ではあるが、ルーさんはルーさんならではの個性でアルトを吹く。この辺を理解しないと、ルーさんのアルトはパーカー派のそれであり、それならば、パーカー本人の演奏を聴いた方が良い、となる。困ったもんだ(笑)。

ルーさんのアルトは「パーカー派」のアルトでは無い。パーカーのアルトとは一線を画している。バラードの「Dorothy」を聴けば良く判る。2曲目の「I Won't Cry Any More」の速いアドリブ・フレーズを聴いても、パーカーのそれとは全く異なる。パーカーはテクニックが優先であるが、ルーさんは歌心が優先なのだ。

最後に、実はレイ・バレットのコンガが良く効いている。このコンガの存在が、ジャズの演奏をポップにし、ラテンチックな雰囲気を醸し出したりして、聴く者に程良くアピールする。このコンガの存在が、日本の硬派なジャズ者の方々には許せないらしい。なんだか「めんどくさい」なあ(笑)。

良いアルバムです。いつ聴いても、このアルバムのポジティブで明快なアルトが実に良い。スローなバラードから、歌心満点のミッドテンポの曲まで、とにかく楽しく聴けます。「聴いていて楽しいジャズ」。こういうジャズも良いものです。

 
 

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2014年12月15日 (月曜日)

Shogunの2nd.盤『Rotation』

さて、昨日に引き続き、今日の話題も「ジャズの合間の耳休め」の70年代Jポップ。今日は日本のロックバンド、Shogun(ショーグン)のアルバムを選択。

Shogun(ショーグン)と言えば、1978年、ギタリスト芳野藤丸を中心に腕利きスタジオ・ミュージシャンで編成されたロックバンド。デビュー当時の第1期のメンバーが、芳野藤丸 (g,vo), 大谷和夫 (p), ミッチー長岡 (b,vo), 山木秀夫 (ds), 中島御 (per), ケーシー・ランキン (g,vo)。

当時のShogunのサウンドは新鮮だった。しかし、僕の感覚が幼かったのか、どう形容して良いか判らなくて、単純にロックと呼ぶにはお洒落でクール、インストナンバーはフュージョン・テイストなんだが、ボーカルが入ると決してフュージョンな雰囲気では無い。

当時、流行っていたニューミュージックな音楽とは一線を画する。といって、甲斐バンドや柳ジョージ&レイニーウッド、矢沢永吉の様な歌謡ロックでは無い。

思いっきりヘビロテだったShogunのセカンドアルバム『Rotation』(写真左)を聴きながら、はてさて、どう形容したら良いのか、と悩んで聴いていた時代が1979年。実は、この『Rotation』というアルバムが絶品なのだ。むっちゃ格好良いアルバムなのだ。

内容的には、テレビドラマ『探偵物語』のオープニングテーマの「Bad City」、エンディングテーマ「Lonely Man」を収録したアルバムで、後に、他の収録曲もドラマの中盤から挿入歌として使われるようになり、最後には、テレビドラマ『探偵物語』のサウンド・トラック盤化してしまった、Shogunの傑作アルバム。 

収録曲は以下の通り。どの曲も、洗練されたアレンジ、ハイテクニックで味のある演奏、格好良い英語中心の歌詞、と揃いも揃った3拍子。疾走感のあるハイテンポの曲も格好良く、バラード曲も日本人離れした展開で一目置ける。1〜4曲目がLP時代のA面。5〜9曲目がLP時代のB面。
 

Shogun_rotation

 
1. As Easy As You Make It
2. Imagination
3. Sailor-Sailor
4. Yesterday, Today And Tomorrow
5. Margarita
6. Bad City
7. The Tourist
8. I Should Have Known Better
9. Lonely Man

 
どの曲も本当に出来が良くて、今の耳で聴き返してみると、これって「AOR」やん。先入観って恐ろしいもので、日本人にAORは無理、と思っていた1970年代後半。今の耳で聴き返してみると、このShogunの音って、どこをどう取っても「AOR」なテイストが満載。日本産のAORである。そうか、AORか。

ハイテクニックで切れ味の良いハイテンポの曲や、ソフト&メロウなテイスト満載のミッドテンポの曲、味わい深い日本人ばなれしたバラードチックなスローな曲、そんな内容のある曲がギッシリ詰まっていて、1979年当時、この『Rotation』というアルバムは、ハイソでマニアックでお洒落なアルバムだった。

やっぱ、『探偵物語』のオープニングテーマの「Bad City」、エンディングテーマ「Lonely Man」が味わい深い。松田優作の名演技が目に浮かぶ。松田優作、格好良かったなあ。Vespaのスクーターは今でも欲しいアイテムである。

 
 

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2014年12月14日 (日曜日)

甲斐バンド『at NHKホール』

学生時代に聴き込んだ音源の中で、FM放送のエアチェックでカセットに録音した音源がある。社会人になっても、暫くは大事に持って、時たま聴いていたんだが、さすがに20年ほど経って、カセットのテープ自体が劣化し始めて、聴けなくなるカセットが出始めた。その時、全部捨ててしまったんですよね〜。

その時は、そのうち、CDとなってリイシューされるかな、なんて思っていたのですが、そんなこと殆ど無い(笑)。FM放送のエアチェックの音源は、その番組特別のライブ音源であったり、スタジオ録音だったりする訳で、まず音源のマスターテープが残っていないことが殆どである。マスターテープが残っていなければ、リイシューされることは無い。

そんな「FM放送のエアチェックでカセットに録音した音源」の中で、どうしてももう一度聴いてみたい音源が幾つかある。3年前に、甲斐バンドのライブ盤『100万$ナイト』をダウンロードで入手した。そして聴き直した訳だが、どうもしっくりこない。そう言えば、同時期のライブ音源を「FM放送のエアチェックでカセットに録音した音源」として愛聴していたことを思い出した。

もともと、この甲斐バンドのライブ盤『100万$ナイト』は、しぶしぶ入手した訳で、本当は『1979.09.02 甲斐バンド ライブ at NHKホール』が聴きたかったのだ。「FM放送のエアチェックでカセットに録音した音源」として、大事に大事に聴き返していたのだが、いつの頃か捨ててしまった。

甲斐バンドの1979年9月2日、NHKホールでのライブ公演。当時、ロックバンドがNHKホールでライブを行うのは史上初。古い感覚の評論家を中心に物議を醸したしていたなあ。そのライブ公演の様子を9月15日にNHK-FMにてオンエア。バッチリ録音したが、頼りないナレーションが入っている。このナレーションを排除するべく、1980年1月15日の再放送にて、再度エアチェックした。

この音源が聴き直したいのだが、ネットでググっても無い。ただ、思い出す度にググってはいた。そして、先日、この音源をYouTubeで遂に発見した。最初は半信半疑だった。音が悪かったり、途中で終わっていたり、コンプリートな形でアップされてはいないだろうとあまり期待せずに聴き始めたのですが、これが「コンプリート」。頼りないナレーションから始まるあの時の放送である。
 

Kai_band_1979_nhk

 
ライブの内容もあの時のライブの内容である。何度も聴き直したライブ音源である。その内容はしっかりと記憶にある。とにかく、ライブ演奏としてのノリが抜群。ちょうど「HERO 〜ヒーローになる時、それは今」が大ヒットした後のライブなので、とにかくバンドとしての勢いが違う。しかも、このNHKホールでのライブは、演奏の精度も抜群なのだ。甲斐さんのボーカルも良い出来で、選曲、曲の並びも含めて、つまりは何から何まで良く出来たライブ音源なのだ。

セットリストは以下の通り。冒頭の「きんぽうげ〜テレフォン・ノイローゼ〜シネマ・クラブ〜裏切りの街角」の流れとノリが凄い。タイトで隙の無いライブ演奏。4曲目に「シネマ・クラブ」の存在が素晴らしい。このロック・バラードが良い。「裏切りの街角」が入っているのも良い。この辺がライブ盤『100万$ナイト』との違い。『100万$ナイト』の甲斐バンドは、このNHKホールのライブと比べると、少し散漫で緩い。

1. きんぽうげ
2. 感触(タッチ)
3. テレフォン・ノイローゼ
4. シネマ・クラブ
5. 裏切りの街角
6. らせん階段
7. 港からやってきた女
8. 三つ数えろ
9. 安奈
10. 噂
11. 嵐の季節
12. カーテン
13. 氷のくちびる
14. ポップコーンをほおばって
15. LADY
16. HERO(ヒーローになる時それは今)
17. 翼あるもの
18. 最後の夜汽車
19. 感触(タッチ)

いや〜豪気な人がいたもんだ。YouTubeにアップしてくれた方に感謝したい。まさか、この2014年の暮れになって、この『1979.09.02 甲斐バンドライブ at NHKホール』の音源にコンプリートな形で再会できるとは思わなかった。音もまずまず、十分に鑑賞に耐える。これで、やっと長年の懸案の一つが解決した。

 
 

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2014年12月13日 (土曜日)

ジョンスコの純ジャズなアルバム

エレ・マイルスから現れ出でて、自由度の高い、ハイテクニックでジャズ・ロックなエレギ。ヨーロピアンな、ややフリー気味のジャズロックの響きを湛え、相当に捻れたフレーズとコードワークが特徴のギタリストが、ジョン・スコフィールド(John Scofield・以下略して「ジョンスコ」)。

ジョン・マクラフリンはアブストラクトでフリーキーなフレーズが個性だが、このジョンスコは、捻れたフレーズでくねりながらのフリーキーさが個性。一回聴いたら忘れられない、一回聴いたら直ぐ判る、独特の「捻れの個性」がジョンスコである。

ジョンスコはフュージョン・ジャズには走らなかった。ジョンスコの「捻れた個性」のエレギは、フュージョン・ジャズの特徴のひとつである「ソフト&メロウ」にはそぐわない。どちらかと言えば、純ジャズ寄りの個テンポラリーなジャズのフィールドで活躍している。

そんなジョンスコがメインストリーム・ジャズの範疇で演奏した佳作がある。そのアルバムとは、John Scofield『Time on My Hands』(写真左)。1989年11月の録音。ちなみにパーソネルは、John Scofield (g), Joe Lovano (sax), Charlie Haden (b), Jack DeJohnette (ds)。

まず、パーソネルを見て欲しい。ベースとドラムのリズム・セクションが、ジャズ・ベースの哲人、チャーリー・ヘイデンとポリリズムの達人、ジャック・デジョネットである。バリバリ硬派で純ジャズ的なリズム・セクションをバックに座らせて、ジョンスコは、真面目実直に、純ジャズ的なフレーズを「捻れた個性」で弾き上げていく。
 

John_scofield_time_on_my_hands

 
とにかく、ストイックで硬派なメインストリーム・ジャズである。ジョンスコは「捻れた個性」のエレギを、ややフリーキーな面にシフトしつつ、しっかりと硬派で純ジャズ的なリズム・セクションを立てながら、メインストリーム・ジャズ的なフレーズを真摯に弾きまくる。

ジョー・ロバーノのサックスの存在もキーポイント。ジョー・ロバーノは、当時、個性のあるフリー・ジャズなサックス奏者として売り出し中。アブストラクトさを控えめに、ややフリーに傾きながら、堅実なフレーズを吹き上げる。ストレートで限りなくフリーに近いフレーズを吹き上げつつ、ジョンスコの「捻れた個性」のエレギが相性良く絡む。

このアルバムは、メインストリーム・ジャズの範疇で演奏したアルバムとは言え、収録された曲は全てジョンスコのオリジナル。常套手段であるスタンダード曲の選択は無い。この辺がジョンスコの矜持を感じるところで、当時の新伝承派と一線を画するところ。メンストリーム・ジャズな演奏に手を染めるとは言え、安易にスタンダード曲に頼ることはしない。

ジョンスコの「捻れた個性」のエレギを感じる入門盤としても適したアルバムです。さすがにマイルスに見そめられたエレギである。メインストリームなジャズを演奏する場面でも、安易なアプローチに走ることは無い。真摯で爽やかな緊張感が清々しい佳作です。

 
 

震災から3年9ヶ月。決して忘れない。まだ3年9ヶ月。常に関与し続ける。がんばろう東北、がんばろう関東。自分の出来ることから復興に協力し続ける。 

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2014年12月12日 (金曜日)

アキコ・グレースの「今」の原点

最近、久々に聴き直して「これは良いなあ」。Akiko Grace『東京』(写真左)。テーマは「和」。

女性ジャズ・ミュージシャンの人気者アキコ・グレース(Akiko Grace)の「フロム・ニューヨーク」「マンハッタン・ストーリー」「ニューヨーク・スタイル」のニューヨーク三部作を完成させたアキコ・グレースの新境地。メンバーも純国産ミュージシャンで固め、ベースは藤原清登、ドラムスは岩瀬立飛という布陣、曲によっては、藤原道山の尺八や中西俊博のヴァイオリンも加わる。

収録曲を眺めてみると、オリジナルが7曲、童謡あり、また、変わったところでは、矢野顕子の「春咲小紅」、The Boomの「島唄」をカバーしている。そんな中で、テーマは「和」としながら「Donna Lee」と「Giant Steps」が入っているのは不思議。レコード会社とミュージシャンの意向のせめぎ合いが見て取れるようだ。

オリジナルはどれも充実しており、演奏も申し分ない。やはり、興味は、ニューミュージックの名曲や童謡のカバーだろう。「春咲小紅」は、ジャズにしにくい旋律を持つ曲なのだが、ファンキー&ゴスペルなタッチでうまく聴かせる。「春咲小紅」を知らない人は、一風変わった旋律を持ったエキゾチックな曲だなあ、と思うだろう。そういう意味で「春咲小紅」を知らない人こそ、純粋に楽しめる演奏だ。

逆に「島唄」は、しっかりとジャズにはまっている。やはり、グレースは、ファンキー&ゴスペルなタッチで歌い上げていくが、この曲はジャズにピッタリ。沖縄民謡の旋律がジャズのフィーリングにマッチするのかもしれない。童謡のカバーは、やはり違和感がある。
 

Akiko_grace_tokyo

 
「かごめかごめ」や「おぼろ月夜」は、幼少の頃より親しみすぎてるがゆえに、なんだか聴いていて、なんとなく「気恥ずかしさ」が先にたってしまう。童謡や文部省唱歌のカバーについては、有名な曲はキワモノっぽくて危険だ。隠れた童謡や文部省唱歌を再評価する的なアプローチでのカバーの方が、日本的な旋律をうまく活かせてアレンジしやすいし、聴きやすいのではないか。

でも、グレースのピアノは、女性ならではの特性を旨く活かす奏法に変わりつつあり、実に好ましい個性に進化しつつある、と感じる。力で劣る女性ミュージシャンが、男性同様の「ガコーン・ズカーン」的な、力強いダイナミックな奏法に追従して、男性ミュージシャンと張り合う必要はない。アキコ・グレースのリリカルなピアノに「Donna Lee」と「Giant Steps」は必要無い。

グレースもその辺の機微を心得つつある様で、今回のアルバムは実に楽しく聴ける。結局、このアルバムの後、グレースはこのアルバムの「女性ならではの特性を旨く活かす奏法」に路線を固定した。男性同様の「ガコーン・ズカーン」的な、力強いダイナミックな奏法に戻ることは無かった。それで良いと僕は思う。

最後になったが、アルバムジャケットはいただけないなあ(笑)。ちょっとやりすぎ。これがジャズのアルバムのジャケットとは、ちょっとねえ。レコード会社の売らんが為の変な意向が垣間見える。なんだか、アキコ・グレースが気の毒になった。

 
 

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2014年12月11日 (木曜日)

1970年代マクラフリンの総決算

エレ・マイルスから現れ出でた、自由度の高い、ハイテクニックでジャズ・ロックなエレギ。ジョン・マクラフリンである。この人のエレギは凄い。とにかくテクニックがもの凄い。そして、音色のバリエーションが凄い。そして、出てくるフレーズの自由度が相当に高い。アル・ディ・メオラと並んで、ジャズ・ロックなエレギの最高峰。

そんなマクラフリンの1970年代の演奏活動の総決算的なアルバムがある。John Mclaughlin『Electric Guitarist』(写真)である。1978年のリリース。前半3曲はマクラフリンともう一人のソロイストを中心としたセッション。後半4曲はクァルテット、トリオ、デュオと1曲ごとにメンバーが減っていき、最後にマクラフリンのソロで締めるという構成。

この構成を見ても、このアルバムは、1970年代のマクラフリンの総決算的な位置づけのアルバムということが言える。様々な表現を駆使するマクラフリンを聴くことが出来て、とにかく、マクラフリンの凄さが思いっきり体感できる。

参加ミュージシャンが凄い。冒頭の「New York On My Mind」は、マクラフリン的にハードで捻くれてはいるが、意外とソフト&メロウなフュージョン・テイストのミディアム・テンポが心地良い演奏。Stu Goldbergのキーボード、Billy Cobhamのドラム、Fernando Saundersのベースが効いている。新旧マハビシュヌ・オーケストラが合体したような布陣が凄い。

2曲目は「Friendship」は、サンタナ・バンドと後期マハビシュヌ・オーケストラが合体した様な演奏が凄い。サンタナ・バンドのTom Costerのオルガンが鍵。サンタナのロックなエレギとマクラフリンのジャズ・ロックなエレギは相性が良い。
 

Electric_guitalist

 
3曲目は「Every Tear From Every Eye」。これはズバリ、フュージョンな演奏。アルトのDavid Sanbornの参加が効いている。フュージョンの雄、サンボーンに触発されたマクラフリンのフュージョン。この音が1980年代のマクラフリンの音のベースになる。

4曲目の「Do You Hear The Voices You Left Behind?」。これが凄い布陣。Chick Coreaのキーボード、Stanley Clarkeのベース、Jack DeJohnetteのドラム。そこにマクラフリンのエレギ。なんじゃ〜、この豪華で一期一会な布陣は。デジョネット、クラークが叩き出すトロピカルなリズムに乗って、マクラフリン全開。後半、コリアが乱入。凄いなあ。

5曲目の「Are You The One? Are You The One?」は、ドラムにTony Williams、ベースにJack Bruce。初期のライフタイムを再現した布陣。エレ・マイルスに参入していた頃の、マクラフリンのアブストラクトなフレーズが懐かしい。 

そして、6曲目の「Phenomenon: Compulsion」が良い。マクラフリンとBilly Cobhamのドラムとのデュオなんだが、これが素晴らしい。このデュオの演奏でのマクラフリンが、このアルバムの中で一番テンションが高い。さすが、マハビシュヌの推進エンジンの二人。凄まじい凄まじい。

そしてそして、ラストのジャズ・スタンダード曲「My Foolish Heart」は、マクラフリンのソロ。これがまあ、やっぱりマクラフリンって、ジャズ・ギタリストなんやなあ、と心から思わせてくれる。マクラフリンの個性を最大限に振りまきながら、唄うようにエレギを弾き上げていく。

当時、マイルスはマクラフリンのプレイを「far in(奥深い)」と表現した。彼のエレギを高く評価していたのだ。そのエピソードが良く理解出来る、1970年代のマクラフリンの総決算的アルバムである。

 
 

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2014年12月10日 (水曜日)

World Music系のXmasジャズ

12月も10日になる。今年は寒い。既に真冬の寒さがやって来ている。昨年も実感したんだが、マスコミもお店も、あまりクリスマス、クリスマスと騒がなくなった。良いことだ。でも、華やいだところが無くなって、ちょっと寂しくなったか。

さて、ジャズのXmas盤の特集である。今日はこれ。Al Di Meola『Winter Nights』(写真左)。1999年10月のリリース。アル・ディ・メオラの初のクリスマス・アルバム。このアルバムのメンバー構成は通常の構成とは違っている。

基本構成がギター+バンドゥーラ+パーカッション。普通のジャズの様に、ドラムとベースのリズム・セクションがバックにあって、という感じではないので、ちょっと肩すかしをくらいますが、これはこれで、優しい響きが素敵で良い。

ちなみにパーソネルは、Al Di Meola (cajon, dumbek, ac-g, harp, key, mixing, perc, tambur), Roman Hrynkiv (bandura), Hernan Romero (ac-g, mixing, perc, shaker)。このローマン・フリンキフの弾くバンドゥーラという楽器の存在がユニーク。

この楽器バンドゥーラについて、その由来がややこしい。シュメールで「パントゥーラ(pantura)」、ギリシアで「パンドゥーラ(pandura)」と呼ばれた。後に1502年、イギリスで考案された金属弦の低音用弦楽器も「パンドーラ(pandora)」と名付けられた。この楽器は18世紀にはすたれたが、ウクライナでは東方の楽器と結びつき、民族楽器「バンドゥーラ(bandura)」として今日まで残っている。
 

Winter_night

 
このバンドゥーラの多弦ギターというか、ハープというか、硬質な弦の和音の響き。ちょっとオリエンタルな心地よい響きをバックに、アル・ディ・メオラがアコースティック・ギターで、その卓越したテクニックを駆使して、クリスマスにまつわる楽曲を弾きまくる。弾きまくるといっても、ホットに弾きまくるのでは無い。あくまで、クリスマスよろしく、厳かに敬虔なタッチで弾きまくる。

まあ、モダン・ジャズって感じの演奏では無いし、聴き応えのあるフュージョンって感じでもないです。敢えて言うなら、アコースティック・ジャズ・ギターをフューチャーしたワールド・ミュージックって雰囲気です。少なくとも、メインストリームなジャズでは無い。

サイモン&ガーファンクルの名曲「Scarborough Fair」や「Have Yourself a Merry Little Christmas」などのXmasの定番ナンバーなどがフィーチャーされていて、聴いていて楽しい。
 
このXmasシーズンにずっと部屋に流しておくと、なかなかに心地良いアルバムです。ポピュラーな名曲を織り交ぜている割に甘きに流されず、硬派で適度なテンションを保っている所はさすがです。

時には、ベース+ドラムという従来のリズム・セクションを離れて、ワールド・ミュージック系の雰囲気に身を委ねるのも良いものですね。

 
 

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2014年12月 9日 (火曜日)

この盤でのモブレーも無敵である

ハンク・モブレーというテナー奏者は出来不出来の差が激しい。そんなモブレーが、ブルーノート・レーベルで絶好調に吹きまくるアルバムを3つ選択して、誰が呼んだか「ハンクモブレー3部作」。

その3枚とは『Soul Station(BLP 4031)』『Roll Call(BLP 4058)』『Workout(BLP 4080)』の3枚。『Soul Station』は、2014年11月20日のブログ(左をクリック)で、『Workout』は、2014年12月3日のブログ(左をクリック)でご紹介した。今日は3部作のラストの『Roll Call』である。

さて、Hank Mobley『Roll Call』(写真左)。ブルーノートの4058番。1960年11月の録音。ちなみにパーソネルは、Freddie Hubbard (tp), Hank Mobley (ts), Wynton Kelly (p), Paul Chambers (b), Art Blakey (ds)。

当時ジャズ・メッセンジャーズを率いて人気のドラマー、アート・ブレイキーの参加が目を惹く。このアート・ブレイキー、キャリア的にはブルーノート・レーベルのハウス・ドラマー的存在で、ブルーノート・レーベルのアルバムにかなりの頻度で参加している。

そんなリーダー格として申し分ないブレイキーが参加して、演奏全体の統率はブレイキーにお願いして、モブレーは自らのテナーを吹きまくることに専念している様なこの『Roll Call』。ベースはチェンバース、ピアノはケリーと気心知れた仲間で、モブレーとしては申し分の無い録音環境である。

冒頭のタイトル曲「Roll Call」を聴けば、そんな「良い雰囲気」が良くわかる。出だしは、ブレイキーの「ナイアガラ瀑布」と形容されるドラム・ロールから始まる。なんだかジャズ・メッセンジャーズの演奏が始まるようだが、モブレーのテナーが出てくると、ちょっと違うな、という感じになる。
 

Roll_call

 
モブレーのテナーは、ファンクネスが軽い。ジャズ・メッセンジャーズの音はファンクネスが濃厚なので、モブレーのテナーが出てくると、ブレイキーのドラムが出てきても、決して、ジャズ・メッセンジャーズの音にならないのが面白い。

この『Roll Call』でのモブレーは元気一杯、テクニックも優秀、速い曲もスローなバラードも、ガッチリとポジティブに吹き上げていく。このアルバムでのモブレーは絶好調。ワンホーンでも良かったのではないか、と思われる位の好調さ。

逆に、トランペットのハバードはちょっと吹き過ぎ。当時22歳。若さ故ということだろうが、とにかく大きな音で、過剰なテクニックで吹き過ぎ。このアルバムって、モブレーのリーダー作なんだから、モブレーより大きな音で吹いたらあかんやろう、と思うんだが、とにかくそんなこと関係無く、吹きまくる吹きまくる。

このハバードの存在がマイナス点だが、そんな傍若無人なハバードのブロウにも動じずに、モブレーは吹きまくる。神経質なモブレーにしては意外だが、録音当時、モブレーは30歳。年長の功で吹き過ぎのハバードをスルーしたんだろう。ブレイキーに「気にするな」とアドバイスされたのかもしれない。

誰が呼んだか「ハンク・モブレー3部作」。『Soul Station』『Roll Call』『Workout』の3枚でのモブレーは絶好調。「ハンク・モブレー3部作」でのモブレーは、いずれも「無敵」である。

 
 

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2014年12月 8日 (月曜日)

今年もジョン・レノンの命日に想う

1980年12月8日。ジョン・レノンの命日である。実際にジョンの死亡が確認されたのは、ニューヨークで、1980年12月8日23時07分。日本と14時間の時差があるから、正確には、日本では1980年12月9日の13時07分となる。

当時、僕は大学3回生。日本時間の12月9日、大学生協の電気屋で「ジョンが撃たれた」という報に接し、何が起きたのか、上手く理解出来なかった。まあ、ジョンが死ぬはずが無いよ、と軽く思い直して、午後からの授業に出た。そして、授業が終わって、カセットテープを買って帰ろうと、大学生協の電気屋に戻った。そして、FM放送の緊急ニュースにて「ジョンが死んだ」ということを知った。

世の中には思いもよらぬ不条理な出来事が起こるのだ、ということを痛感した。34年経った今でも、あの時の強烈な「喪失感」は忘れられない。56年間の我が人生の中で、今でも生涯最大の「喪失感」である。今でも、大事な何かを失ってしまった感覚は、胸の中に強く残っている。

さすがに50歳を過ぎて、生前はいろいろとあったが、そのジョンの生き様や音楽的成果を丸ごと受け入れている。振り返ってみて、彼が、歴史上、偉大なミュージシャンの一人だったことは疑う余地は無く、その生き様はとても「人として誠実」だったと感じている。

ビートルズの4人のうち、二人が鬼籍に入り、二人は俗世に生きている。

ジョンは生粋のロックンローラーだったと思う。自分の音楽が世の中に受けようが受けまいが、最終的には気にしていなかったのではないか。自分の感性のまま、自分の思いを入れ込んで、曲を作り歌を唄う。自分の気に入った曲が名曲であり、世の中に受け入れられた曲は必ずしも名曲では無かった。

ポールはどうやって自分の曲が世の中に受け入れられるのかを常に考えた。その為には、自分の感性をねじ曲げ、自分の思いを入れ替えてまで、世の中に受け入れられる曲を追求した。つまりは、演奏して唄える「職業作曲家」であった。ジョンのやらないことやり、成功することで心の平穏を得ている様な活動の数々。
 

John_lennon_glasses

 
ジョージは「普通に優れた音楽家」だった。悪い意味では無い。時に良い曲を書き、時に良い詩を書き、時に良い内容のアルバムを残した。ポールの様に、世の中に受け入れられる曲を追求した時代もあるし、ジョンの様に、自分の感性のまま、自分の思いを入れ込んで、曲を作り歌を唄う時代もあった。ジョージのあこがれの存在は、ジョンであり、ポールであった。

リンゴはエンタテイナーである。いかに皆を楽しませるかに気を配る。ドラマーとして超一流の腕を持ちながら、ドラマーとしての道を選ばなかった。リンゴのドラムの優秀性を誰よりも理解していたのはジョンであった。ジョン以上にリンゴのドラムを理解しているミュージシャンはいない。ジョンの亡きこの世にて、リンゴはドラマーとしての道を歩もうとはしない。皆を楽しませる為だけにドラムを叩く。

ジョンはあの世でジョージと共に、この俗世の状況をどう見ているんだろう。今でも、リアルタイムで体験したジョンの命日を思い出す。あの時のやるせない気持ちは今も忘れない。決して忘れることは無い。今までもこれからも。そして、あと2週間もすれば、クリスマスがやってくる。

So this is Christmas
And what have you done
Another year over
a new one just begun
And so this is Christmas
I hope you have fun
The near and the dear ones
The old and the young

A Very Merry Christmas
And a Happy New Year
Let's hope it's a good one
Without any fear

「Happy Xmas (War Is Over)」
Christmas song by John Lennon, Yoko Ono.

 
 

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2014年12月 7日 (日曜日)

ミスマッチな組合せが妙のXmas盤

ジャズって面白いもので、パーソネルを見て、その参加したそれぞれのジャズメンの演奏スタイルを鑑みて、どう考えてもミスマッチで「こんな組み合わせは聴きたくは無いな、聴いたってロクなことは無い」と思うことがたまにある。

しかし、実はそんなミスマッチ風の組合せにこそ「組合せの妙」的な名盤が生まれることが良くある。ジャズを聴く時、理屈や先入観って危険。こんな時、ジャズって本当に柔軟な音楽だなって、改めて感心したりする。

今回、ご紹介するケニー・バレルのクリスマス・アルバムも、その「組合せの妙」のひとつだろう。ブルージーで黒くて骨のあるバレルのギターが、どうしたらクリスマス・ソングと合うのか。クリスマス・ソングを弾くケニー・バレルが想像出来ない(笑)。

その問題のアルバム(笑)が、Kenny Burrell『Have Yourself a Soulful Little Christmas』(写真左)。ちなみにパーソネルは、Kenny Burrell (g), と、Richard Evansのアレンジ&指揮のオーケストラ。オーケストラをバックに、ケニー・バレルがギターでクリスマス・ソングを弾きまくる、といった趣向。

誰だって最初はそう思うだろう。ブルージーな深夜のイメージがピッタリのバレルのギターが、厳かでポピュラーなクリスマス・ソングに合うわけが無い。それが、どうしてどうして。聴いてみると、これが結構、ピッタリなんですよ。
 

Have_yourself_a_soulful_little_chri

 
確かにお日様の光を感じながら聴くと健康的すぎて、ちょっと違和感があるけど、冬の夜、それも深夜に近い「夜の静寂の時間帯」になると、これが周りの雰囲気にピッタリなのだ。夜のクリスマスの雰囲気にピッタリって感じで、実に良い感じなのだ。

アレンジが良い。バレルのブルージーなギターが、クリスマス・ソングを演奏する上での長所を引き立てつつ、短所をカバーするという、なかなか考えたアレンジである。特に、ブラスのバッキングの使い方が良くて、要所要所でブラスのアクセントが効いて、全編、飽きが来ない仕掛けとなっている。

アルバムのトータル時間も約37分と適当な長さ。長々と垂れ流されるクリスマス・ソングには辟易する。全12曲、トータル時間37分は適当。良い雰囲気やねえ、良い感じやねえ、と感心したところで終わり。もうちょっと聴きたいなあ、と思わせる所で終わる。これくらいの長さがちょうど良い。

ブルージーで黒くて骨のあるギターが個性のケニー・バレルのクリスマス・アルバム。どうにも合わない組合せに感じるのですが、意外と結構良いのですよ、これが。是非、ご一聴を・・・。

でも、このジャケット・デザインは絶対に「引く」なあ(笑)。このジャケット・デザインだけはいかんなあ。

 
 

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2014年12月 6日 (土曜日)

こんなアルバムあったんや・38

ジャズのスタイルの変遷については、知れば知るほど面白い。1910年代はディキシーランド・ジャズ、1930年代はスウィング・ジャズ、1940年代はビ・バップ、1950年代はハードバップ、と簡単に書けばこんな感じなんだが、それぞれのスタイルの変化の仕方は、そんなに単純ではない。

ここに、含蓄溢れる内容のボックス盤がある。『The Complete Norman Granz Jam Sessions』(写真左)。チャーリー・パーカーからオスカー・ピーターソンまで1952年から1954年当時の第一線で活躍していたジャズメンが一堂に会して行なわれた超豪華なジャム・セッションの記録。LP時代には9枚のLPに分けてリリースされた音源をCD5枚に収録した優れもの。

それまでは、コンサートなどで、第一線で活躍していたジャズメンが一堂に会して、ジャム・セッション風に聴衆の前で演奏したということはあったが、このノーマン・グランツが主宰した、スタジオに才能あるミュージシャンを集めて、スタンダードやブルースを思う存分ジャムらせてレコーディングするという方法は無かった。

このスタジオでのジャム・セッション風というレコーディング方法は後に主流となる。ヴァーブ・レーベルの総帥、ノーマン・グランツの功績の一つである。その功績の記録が、この『The Complete Norman Granz Jam Sessions』である。

さて、このスタジオでのジャム・セッションの記録を聴いてみると、これがなかなか面白い。1952年から1954年の録音なので、当時のジャズの最新スタイルは「ハードバップ」。ビ・バップがピークを越え、ハードバップの萌芽があちらこちらの録音に聴かれた時代である。

しかし、このスタジオでのジャム・セッションの記録を聴いてみると、これがどう聴いても「ハードバップ」な音では無い。音の雰囲気はスイング・ジャズに近い。多くのジャズメンを一堂に集めてのジャム・セッションなので、楽器による音の厚みが十分にあって、ユニゾン&ハーモニーの部分などはビッグバンド・ジャズの様な音である。
 

The_complete_norman_garanz_jam_sess

 
確かに、このジャム・セッション集のパーソネルを見渡すと、スイング時代から活躍してきたジャズメン、ビッグバンドで活躍してきたジャズメンが多くみられる。管のブロウのテクニックなどは、うっすらとビブラートを加えるオールド・スタイル。リズム&ビートも、スイングからビ・バップのリズム&ビートに留まる。

が、演奏時間は長い。1曲10数分から長いものでは20分を超える。この演奏時間の長さが、それまでのジャズのスタイル、スイング・ジャズ、ビ・バップと全く異なるところ。この収録時間の長さが、それぞれの第一線で活躍していたジャズメンの個性と特徴を最大限に引き出している。

そして、この時代にLPという長時間の演奏を記録し再生出来る「記録媒体」が出現した。このLPの登場が、この時代のジャズのスタイルの変遷に大きな影響を与えたと言って良い。このLPの登場が、このノーマン・グランツが主宰したジャム・セッションの記録と再生を可能にした。

この『The Complete Norman Granz Jam Sessions』には、後のジャズの著名なスタイルの一つである「ハードバップ」な音は聴くことは出来ない。しかし、後に当たり前となる「長時間演奏・長時間録音・長時間再生」の可能性の高さを、このジャム・セッション集では強く感じることが出来る。

「長時間演奏・長時間録音・長時間再生」のジャズは楽しい。ジャズメンそれぞれの個性や特徴を十分に愛でることが出来て楽しい。この『The Complete Norman Granz Jam Sessions』は、そんなジャズの楽しさを十二分に教えてくれる。

 
 

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2014年12月 5日 (金曜日)

全体を覆う「リリカルな音世界」

初冬の凛とした空気の冷たさと、しんしんと静かな夜の雰囲気にピッタリの「ECMレーベルのソロ・ピアノ」。ジャズのフォーマットを踏襲しつつも、現代音楽の雰囲気、現代クラシックの響きを取り込んだ音世界は独特の個性を放っている。

そんな「ECMレーベルのソロ・ピアノ」の中の一枚、おおよそジャズとは異なる、どちらかといえば現代音楽の雰囲気が強い「凛とした」静謐感溢れるソロ・ピアノ盤。Paul Bley『Open, to Love』(写真左)。ECMレーベルの1023番。1972年9月11日、ノルウェーはオスロのスタジオでの録音。

ECMレーベルの総帥、プロデューサーのManfred Eicher(マンフレッド・アイヒャー)の美意識が反映された、豊かなエコーと切れ味の良いピアノ音。静謐感、透明感豊かな独特の音世界の中で、ポール・ブレイのソロ・ピアノが映える。

もはやこの音はジャズの類の音では無い。どう聴いても、これは、現代音楽、現代クラシックの類の演奏である。ジャジーなリズム&ビートは皆無。ちょっと聴くだけでは、フリー・ジャズというよりは、現代音楽と形容した方がピッタリの即興演奏。
 

Open_to_love  

 
がしかし、よくよく聴き進めてみると、その演奏の即興性は、明らかにジャズから派生した、柔軟でイマージネーション豊かなもの。即興の展開はジャズ。しかし、リズム&ビートは皆無で、ジャジーなリズム&ビートはかけらも無い。このソロ・ピアノの音世界こそがECMレーベルの音世界の最たるものであるとも言える。

このポール・ブレイのソロ・ピアノの音世界は、一言で言い表すと「リリカル」。アルバム全体を覆う徹頭徹尾「リリカル」な世界。静謐な空間の中で、音数を厳選した、鋭敏なソロ・ピアノ。日本的に言うと「侘び寂び」の世界に通ずる、水墨画な様な、幽玄な淡い陰影、濃淡のあるソロ・ピアノの世界。

とても、普通のジャズ的なソロ・ピアノとは言い難いので、好き嫌いがハッキリするソロ・ピアノだと思います。ジャズ者初心者の方々には、ちょっと取っ付き難いでしょう。ジャズを聴き進めて、ジャズ者中堅レベルに到達した頃に、じっくり聴き耳を立てて丁度良いアルバムかと思います。

この初冬の季節、静謐な古い石庭を愛でながら聴くに相応しい、豊かなエコーと切れ味の良いピアノ音。「侘び寂び」の世界に通ずる水墨画の様な雰囲気を持つ、芸術的なソロ・ピアノ盤です。

 
 

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2014年12月 4日 (木曜日)

初期の傑作、グリフィン入門盤です

歌心満点のテナーマン、Johnny Griffin(ジョニー・グリフィン)。彼は1928年4月の生まれで、2008年7月に鬼籍に入っているので、満80歳の生涯を過ごしたことになる。ハードバップ全盛の1950年代後半は、グリフィンは20歳台後半のジャズメンとして、若さ溢れるバリバリの頃。確かに良い演奏が多々残っている。

そんなハードバップ全盛時代のジョニー・グリフィンの数あるリーダー作の中で、このアルバムはピカイチの内容である。そのアルバムとは、Johnny Griffin『The Congregation』(写真左)。「ザ・コングリゲーション」と読む。意味は「教会に集まった人々、信徒」。Andy Warhol(アンディ・ウォーホル)のイラストの洒落たジャケットが粋な、グリフィンの初期の名盤である。

ブルーノートの1580番。1957年10月の録音になる。グリフィンは29歳。ジャズメンとして若さ溢れるバリバリの頃。ちなみにパーソネルは、Johnny Griffin (ts), Sonny Clark (p), Paul Chambers (b), Kenny Dennis (ds)。活きの良いリズム・セクションを従えた、グリフィンのワンホーン作品である。

冒頭のタイトル曲「The Congregation」を聴けば、このアルバムは良い、と直ぐに感じる。グリフィンの歌心満点のテナーが、小唄を悠然と唄うように、豪快でテクニック溢れる、説得力のあるテナーを吹き上げて行く。余裕綽々のテナー、ユーモアを隠し味の様に漂わせながら、ポジティブなブロウが繰り広げられる。
 

Johnny_griffin_the_congregation

 
トータルの収録時間が約30分程度とちょっと短めだが、アルバムに収録された6つの曲はそれぞれ、充実した内容で全く飽きない。延々と繰り返し聴いても全く飽きない、「リトル・ジャイアント」とあだ名された、グリフィンの説得力のある、しっかりとした端正で歌心あるブロウが印象深い。

自作曲も、ミュージシャンズ・チューンの曲も、スタンダード曲もいずれも、とにかく出来が良い。上質のハードバップを聴く事が出来る。ピアノのソニー・クラークが効いている。グリフィンの唄うテナーのバックに回っている時も、前面に出てソロをとる時も、クラークのピアノ音がファンクネスを漂わせつつ、跳ねるように展開する。これが効いている。

チェンバースのベース、デニスのドラムが堅実で、グリフィンのブロウをしっかりとサポートする。安心感溢れる、信頼のリズム・セクション。五月蠅く耳につくこと無く、しっかりとサポートに徹するリズム・セクションは「名盤の基本条件」。安定感のあるリズム&ビートは、フロントのグリフィンを穏やかに鼓舞する。

2014年11月18日のブログ(左をクリック)でご紹介した『The Kerry Dancers(ザ・ケリー・ダンサーズ)』と併せて、この『The Congregation』は、グリフィン入門盤として最適。ジョニー・グリフィンのテナーとは如何なるものか、がバッチリと判ります。とにかく、ジャズ・テナーの良いところが、楽しく体験できます。

 
 

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2014年12月 3日 (水曜日)

この盤でのモブレーは無敵である

誰が呼んだか「ハンク・モブレー3部作」。ハンク・モブレー(Hank Mobley)のブルーノート4000番台の3枚のアルバム。『Soul Station(BLP 4031)』『Roll Call(BLP 4058)』『Workout(BLP 4080)』の3枚。これを人は「ハンク・モブレー3部作」と呼ぶ。

ブルーノートの4031番『Soul Station』は、2014年11月20日のブログ(左をクリック)でご紹介した。今日はブルーノートの4080番『Workout』をご紹介したい。『Workout』は1961年3月の録音。ちなみにパーソネルは、Hank Mobley (ts), Wynton Kelly (p), Grant Green (g), Paul Chambers (b), Philly Joe Jones (ds)。

主役のモブレーは、人見知りであり、緊張するタイプであったそうだ。演奏する環境が本人の気持ちにピッタリ合えば、素晴らしいブロウを披露するが、演奏する環境が本人の気持ちに合わなければ、萎縮し弱々しいブロウに早変わり。彼のブロウを記録する側のプロデューサーからすれば、とにかく扱いに難しいジャズメンであった。

ブルーノートの総帥、プロデューサーのアルフレッド・ライオンは考えた。モブレーの気持ちをリラックスさせ、ポジティブにさせる環境とは何か。その答えのひとつが、この『Workout』のパーソネルにある。

ベースのチェンバースとドラムのフィリージョーは旧知の仲。様々なセッションで一緒に演奏し、気心も知れている。恐らく、モブレーにとって一番のリズム・セクションであろう。そして、ピアノのウィントン・ケリーも旧知の仲。特に、モブレーがマイルス楽団で苦労している時、ケリーは影になり陽向になり、モブレーをサポートした。
 

Hank_mobley_workout

 
加えて、同じフロント楽器として、ギターのグラント・グリーンを選んだ。同じフロント楽器でも、優しく柔らかなブロウが個性のモブレーのテナーを凌駕する、溌剌とした音の大きいトラペットや同じ系統の楽器、テナー・サックス、アルト・サックスは、モブレーとは相性が悪い。しかし、ギターは良い。モブレーのテナーと音の個性がぶつからない。

このプロデューサーのライオンの思惑は当たった。この『Workout』を聴けば良く判る。モブレーは溌剌とプレイしている。特に、ワンホーンの傑作と言われ、ワンホーンだからこそ、モブレーは溌剌とプレイしていると評価されている『Soul Station』よりも、もブレーは溌剌とシッカリとした音で、テクニック豊かにブロウしている。

これだけ溌剌としてポジティブなブロウを披露するモブレーは無敵である。無敵のモブレーは、優れた自作曲でまず素晴らしい個性を発揮する。この『Workout』に収録された4曲の自作曲はいずれも優れた出来であり、モブレーのブロウは申し分無い。加えて、硬質のパキパキなシングルトーンが個性のグリーンのギターも実に良い味を出している。

そして、その自作曲に輪をかけて素晴らしいブロウを披露してくれるのが「The Best Things in Life Are Free」と「Three Coins in the Fountain」の2曲のスタンダード曲。これが実に良い出来だ。歌心豊かにモブレーがテナーを吹き上げ、パキパキな硬質ギターのグリーンが、そんなモブレーをしっかりとサポートするように弾き上げていく。

「ハンク・モブレー3部作」中の一枚、ギターとの双頭フロントの『Workout』。プロデューサーのライオンの思惑どおり、モブレーは素晴らしいブロウを披露した。この『Workout』でのモブレーのテナーは無敵である。

 
 

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2014年12月 2日 (火曜日)

新生・四人囃子のポップなプログレ

昨日は、四人囃子から離れた森園勝敏が参加した新フュージョン・ジャズ・バンド「プリズム」のファーストアルバムをご紹介した。さて、それでは、森園勝敏が抜けた後の四人囃子はどうなったのか。

森園勝敏の抜けた後、新たなギタリストとして佐藤ミツルを招いて、新生・四人囃子を立ち上げる。そして1977年に『PRINTED JELLY』(写真)をリリースする。ちなみにメンバーは、佐藤ミツル (g,vo), 佐久間正英 (b), 坂下秀実 (key), 岡井大二 (ds,per)の4人。

ギターが森園から佐藤に変わっただけで、これだけサウンドの雰囲気が変わるものか。僕は、この『PRINTED JELLY』をリリース一年後、大学に入ってから聴いた。そして、この四人囃子のサウンドの変わりようにビックリした。

森園の在籍した頃の四人囃子のサウンドは、神秘性、幻想性溢れる、ちょっと捻れたところもあり、トリッキーなアレンジも散りばめられた、1970年代前半、プログレッシブ・ロック全盛期のサウンドである。しかし、この佐藤のエレギ中心の新生・四人囃子のサウンドは根本的に異なるサウンド。

神秘性、幻想性は全く排除され、ストレートでポップなサウンドに変わった。そして、アレンジもシンプルになり、プログレッシブ・ロック特有のトリッキーなアレンジは影を潜めた。リズム&ビートも変則拍子が無くなり、シンプルなものとなった。晴れ晴れとした見通しの良いサウンドが、新生・四人囃子の個性。
 

Printed_jelly

 
なんて表現したら良いのか。そう、プログレの雄、イエスが『リレイヤー』というプログレ名盤の後、いきなりメンバーを元に戻してリリースした『究極』というアルバムがある。このイエスの『究極』を初めて聴いた時の違和感と驚きに似ている。コッテコテのプログレ・サウンドがいきなり、ストレートでポップなサウンドに変身した。そう、あの時の感覚に似ている。

時代は1977年。海外ではパンク・ロックがはやり始め、プログレッシブ・ロックは衰退した。そんな時代の環境の中で、コッテコテのプログレ・サウンドはもはや古い感覚だったのかもしれない。この『PRINTED JELLY』のサウンドは、そんなことを思い出させてくれる。

とにかく、それまでの作品の様に、複雑な構成や変拍子は目立たなくなり、ストレートで分かりやすい曲が多く、これはこれで「アリ」かなあ、と当時感じましたが、その感じ方は今の耳でも変わりません。聴く度に、その新しい不思議な感覚が感じられて、面白いですね。

プログレッシブ・ロックとしては、神秘性、幻想性、トリッキーなアレンジ、変則拍子が不足しているし、フュージョン・ジャズとしては、リズム&ビートにファンクネスが感じられず、ボーカルも素直。ラストの9分の大曲「ヴァイオレット・ストーム」を聴くにつけ、これはジャズやないな、と思います。

以降の変化が楽しみな、過渡期のストレートでポップなプログレ・サウンドですね。次のアルバムでの変化が楽しみな『PRINTED JELLY』の音世界です。

 
 

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2014年12月 1日 (月曜日)

ロック寄りのアプローチが特徴

こうやって振り返って、1970年代の日本のジャズ・フュージョンの佳作を聴くにつけ、日本も英国と同様にロックとフュージョンの境界が曖昧なんだなあ、と改めて感心した。

1977年のセルフタイトルのアルバム『PRISM』(写真左)を聴いていて、こりゃ〜ロックからフュージョンへのアプローチやなあと感心。これはフロントに立つエレギの個性がそうさせているのだ。このPRISM(プリズム)というバンドは、1975年、和田アキラ、渡辺建、久米大作、伊藤幸毅、鈴木リカ、そして、四人囃子を脱退した森園勝敏(写真左)の6人で結成されたインスト・バンド。

このプリズムの音が今の耳で聴くと面白い。リズム&ビートの雰囲気を聴くとフュージョン・ジャズなんだが、フロントのエレギの音はロック・テイスト。バックの演奏の雰囲気がイニシアチブを取ると演奏全体の雰囲気はフュージョンになるが、フロントの森園と和田のエレギがリーダーシップを取り出すと、途端に演奏全体の雰囲気はロックになる。

そういう意味では、このセルフタイトルのアルバム『PRISM』の音世界は、かなりロック寄りのクロスオーバー・ジャズと言えるのではないか。後のソフト&メロウ、そしてスムースなフュージョン・ジャズには繋がらない、フロントの森園と和田のエレギ一発で、フュージョンなロック・テイストが蔓延する、そんなロック寄りのクロスオーバー・ジャズ。
 

Prism_album

 
そして、このプリズムの音のユニークなポイントは、ロック寄りのクロスオーバー・ジャズでありながら、オフ・ビートにファンクネスが全く感じられない。スンナリとしたオフ・ビートが特徴。

スンナリとしたオフ・ビートな、このプリズムの演奏を聴くと、明らかにこのクロスオーバー・ジャズは、米国のものでは無いと直感する。テクニックに優れ、スンナリとしたオフ・ビートというところで、もしかしたら我が国のクロスオーバー・ジャズか、と思い立つ。

今の耳で聴くと、このアルバムの演奏はまずまずのテクニックやなあ、なんて思ってしまうが、1977年当時、これだけハイテクニックなバンドはほとんど無かった。特に、ロック寄りのアプローチを擁したフュージョン・バンドとしては、このプリズムが唯一無二。

このプリズムの圧倒的な演奏テクニックと整然としたバンド・アンサンブルは、明らかに日本のフュージョン・バンドの個性。ロックなのかジャズなのか、その境界線が曖昧な、日本でしか生まれ得ないフュージョン・バンドの音がこのアルバムにギッシリ詰まっている。

 
 

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