こんなアルバムあったんや・39
ジャズは、かなりの面で「何でもあり」の音楽ジャンルで、どう考えても相性が良くないでしょう、という楽器同士が共演したりして、しかも、それがなんと、成功を収めることがしばしばある。
例えば、このアルバムなどがその好例。Gary Burton & Stéphane Grappelli『Paris Encounter』(写真)。1969年11月のフランスはパリでの録音。ちなみにパーソネルは、Gary Burton (vib), Stéphane Grappelli (vl), Steve Swallow (el-b), Bill Goodwin (ds) 。
ジャズ・ヴァイブ奏者のゲイリー・バートンとジャズ・バイオリン奏者のステファン・グラッペリという異色の組みあわせによるアルバムである。バートンが欧州ツアー中に実現したセッションで、バートンのバンドにグラッペリがゲスト参加したという形で録音されたセッションの記録。
和音でバッキングを司るピアノが無く、ヴァイブとバイオリンという高音域&旋律楽器同士がフロントを張るという、全く異色の編成。どちらかのテクニックが劣っていたり、どちらかの楽器に協調性が欠落していたりすると、まともに聴けたもんじゃなくなる危険性を孕んだ編成である。
しかし、このアルバムでの、ヴァイブのバートンとバイオリンのグラッペリは大変優れた演奏家であることがよく判る。テクニックは二人とも飛び抜けて優秀、演奏の中での協調性は抜群。お互いの楽器を損ねることなく、お互いの楽器をたてることで、一期一会の相乗効果を生み出している。
冒頭の「Daphné」を聴くと、二人の優秀性がよく判る。ヴァイブとバイオリン、速弾きは出来ないんじゃないか、と揶揄されやすい楽器なんだが、どうしてどうして、高速パッセージをユニゾン&ハーモニーで繰り出す繰り出す。雰囲気はビ・バップ。一糸乱れぬユニゾン&ハーモニー。
2曲目は打って変わって、モード・ジャズの難曲「Blue in Green」。ヴァイブとバイオリンのモード演奏は聴いていて味わい深い。録音年1969年。ジャズはクロスオーバー・ジャズに差し掛かる頃。そんな時代に、このアーティスティックな演奏には目を見張る。
この冒頭からの2曲を聴いて判る様に、このアルバムは、単にバートンのバンドにグラッペリがゲスト参加したという、おざなりの邂逅セッションでは無い。バートンとグラッペリの思惑が一致した、実に野心的なセッションの記録である。
バックのリズム・セクションを務めるベースのスワローとドラムのグッドウインは、バートン・バンドのメンバー。このリズム・セクションの感覚は「新しい」。バートンはともかく、グラッペリがこの「新しい」感覚のリズム・セクションをバックに、新しい感覚のジャズ・バイオリンを弾きまくる。圧巻である。
このアルバム、『パリのめぐり逢い』などと甘ったるい邦題がついているが、内容は決して甘くない。逆に内容は硬派でアーティスティックである。録音当時としては、かなり「先進的な」内容。もとより、映画の「パリのめぐり逢い」のサントラとは全く関係が無い。ややこしい邦題を付けたもんだ(笑)。
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