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2014年11月21日 (金曜日)

ルーさんは歌心満点のアルト奏者

ここ2〜3日、ジャズの歴史の中での「歌心満点のミュージシャン」に想いを馳せている。昨日まではテナー奏者。今日は、アルト奏者に想いを馳せる。歌心満点のアルト奏者かあ。実はこれって結構、難しい。

ジャズのアルト奏者の筆頭と言えば、伝説の「チャーリー・パーカー」。ジャズ・アルトと言えば「パーカー」で決まりである。チャーリー・パーカーを凌駕するアルト奏者はいない。パーカー以降のアルト奏者は皆「パーカー派」と呼ばれる。パーカーのアルトのテクニックはかなり高いものがあり、このテクニックを超えるアルト奏者はほとんどいない。よって、皆「パーカー派」と呼ばれる。

しかし、パーカー派のアルトって、テクニック優先の高テンションのブロウが主。歌心は二の次である。パーカーの最高のテクニックに如何に近づけるか近づくか、がパーカー以降のアルト奏者の使命であり、目標となった。確かに、パーカー以降のアルト奏者のリーダー作って、意外と楽しんで気楽に耳を傾ける事が出来るものが少ない。

ジャズ者初心者の頃、僕はチャーリー・パーカーが苦手だった。テクニック優先の高テンションのブロウがどうにもいけない。心から楽しんでリラックスして聴けないのだ。我慢して聴き続けるのは苦行に近い。大学時代、あの「秘密の喫茶店」のママさんにそう言って愚痴っていたら、このアルバムを聴かせてくれた。

Lou Donaldson『Blues Walk』(写真左)。1958年7月の録音。ブルーノートの1593番。ちなみにパーソネルは、Lou Donaldson (as), Herman Foster (p), Peck Morrison (b), Dave Bailey (ds), Ray Barretto (conga)。アルトのワンホーンのカルテットにコンガが付く。

改めて、Lou Donaldson=ルー・ドナルドソンと読む。「ドナルドソン」って舌を噛みそうなくらいなので以降は「ルーさん」と呼ぶ。この『Blues Walk』は、ルーさんの6枚目のリーダー作。カルテット構成で、バックを固めるメンバーは、ルーさんの馴染みのメンバー。ジャズの歴史の中で有名なメンバーでは無い。そして、コンガにレイ・バレット。
 

Blues_walk

 
冒頭のタイトル曲「Blues Walk」を聴けば良く判る。ルーさんの歌心満点のアルトがよく判る。爽やかな歌を唄うが如く、ルーさんは軽やかにアルトを吹き上げて行く。バレットのコンガが効いている。アルトの切れ味が抜群でテンションが張る分、このバレットのコンガがテンション張った雰囲気を和らげてくれる。ポップな雰囲気を醸し出してくれる。

歌心満点だからってテクニックに難がある訳では無い。それは2曲目の「Move」を聴けば良く判る。速いパッセージをいとも軽やかに吹ききってしまうルーさんのハイ・テクニック。パーカーに及ばないまでも、パーカーに肉薄するハイ・テクニックに目を見張る。

以降、ラストの「Callin' All Cats」まで、歌心満点のルーさんのアルトを心ゆくまで堪能することが出来る。歌心という点では、このルーさんのプレイは、パーカーの上を行くレベルだと僕は思う。それほどまでに聴いていて心地良く、心から楽しめるルーさんのアルト。

ルーさんは、一派一絡げに「パーカー派」のアルト奏者とされるが、このアルバムのブロウを聴くと、そうではないと思う。テクニック優先の高テンションのブロウはほとんど聴かれない。歌を唄うが如く、歌心満載のブロウがアルバム全体を占める。アドリブ・フレーズも聴きやすいシンプルなもの。パーカーの複雑なアドリブ・フレーズとは全く正反対のもの。
  
僕にとっては、ルーさんのアルトの方が感覚的に好み。頑ななジャズ者ベテランの方々からは「松和のマスターって俗っぽいねえ」と苦笑いされたりすることもありますが気にしない。歌心満点で、楽しんで気楽に耳を傾けることの出来るアルトが僕にとっては一番です。

良いアルバムです。「秘密の喫茶店」のママさんに感謝。このルーさんに出会うことで、逆に、チャーリー・パーカーに対する苦手意識が無くなりました。

 
 

震災から3年8ヶ月。決して忘れない。まだ3年8ヶ月。常に関与し続ける。がんばろう東北、がんばろう関東。自分の出来ることから復興に協力し続ける。 

Never_giveup_4

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初めまして、
私、秋田県横手市でTEMPOと言うジャズ喫茶をやってます。
私も自身のブログでレコードなどを紹介してますが
自分のブログ内容に最近自信を無くしてたので
なんか参考になる様なブログが無いかと、検索してた所
このブログにお会いしました。
ホントに、的確で判りやすい内容なので
逆に、私の無知さ加減と文章力の無さを改めて認識してます。
大病をされたそうですので、お体に気を付けて
これからも、その文章力で今まで通りに
魅力あるレコード紹介をして下さい。
そして、私のブログの参考にさせて下さい。


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